第捨伍話「まだやるべきことがある」(中編2)
その後、作戦についての話し合いが始まる。
授業や演習での知識を元にみんながそれぞれ意見を出す。
俺はみんなの案をまとめようとするも中々決まりそうになかった。
ふと話し合いの途中でゲームをしてた時を思い出す。
そういやチュートリアルでこっちの世界で言う東雲教官が、10機の編隊を指揮していたな......
あの時は「く」の字で索敵し、発見したら指示を出して散らばっていた。
もしかしてこの作戦が使えるかもしれない。
そう思ってみんなにその案を出した。
思いの外、みんなからの反応は良く最終的にこれに決めた。
「__じゃああとは当日を待つだけだな。東雲教官、あとは解散でいいですか?」
「いいぞ、今日は早く終わるが明日のためにだ。貴様ら、これにて解散ッ!」
解散後、俺は自室へと戻った。
「ん?」
部屋に入ったその時、なにやら計算づくめの用紙の束を床で見つける。
「あ......」
それは以前長谷教授から手渡された、元の世界に届けてほしいと頼まれたものだった。
すっかり忘れていた。
「困ったな、確かあの時これ全部覚えろとか言ってたよな......」
俺は大きなため息をついてベッドに寝っ転がった。
レヴナントとの初陣もあったし追試もあったし、なんなら明日からアーマード同士の模擬戦もあるし......
当たり前かもしれないがこの世界に来てずっと忙しいことばっかだ。
コンコン。
ノックする音が聞こえる。
こんな時間に誰だろうか。
「あ、三木君こんな時間にごめんね。ちょっと話したいことがあってさ」
ドアを開けるとそこには美月が立っていた。
なんだか重要なかんじがしたため中に入れて話そうかと思ったが、目をつぶってと言われた。
言われるがままに目をつぶると今度は手を引っ張られどこかへと連れ去られた。
俺はこの時リーダー任命おめでとう的な何かと思い特に抵抗はしなかった。
「__二人とも、目、開けてもいいよ」
俺は目を開ける。
目の前には何故か早苗がいた。
俺と早苗は驚く。
「よし! 今だ!」
扉の方から声がしたかと思うとピシャんと閉められ、何やらロックをかけられる音がした。
「成功だね! 琴ちゃん! 名付けて仲良し大作戦!」
「え、えぇ......私は反対だよぉ......」
どういうことかと思えばそういうことか。
俺と早苗は仲良くない。
仲良くないと作戦が上手くいかない。
だからこうして二人きりにして閉じ込めることで仲良くさせようということだ。
そういや結構前になんか悪巧みしてたようだったな。
なるほどな。
って、そんなの理解してどうする!
「えっとあの、早苗さん。なんかそういう雰囲気にしないと出れなそうなので、ここは芝居でも打ちませn__」
「嫌よ」
きっぱり断られた。
えぇ......
じゃないとお前も出れないんだぞ??
仕方ない。ここは俺から芝居を打たせてもらうぜ。
「う......うぅ......く、苦しい......」
俺はもがきながらそう言うとバタンと倒れこんだ。
立っていた状態から倒れたものだから少し痛い。
が、そんなの気にしちゃいられん。
「何よ、そんなおままごとなんてしてれないから」
「......」
「三木、変なことしないで」
「......」
「聞いてんの?」
倒れている俺に早苗は一発蹴りをいれる。
だが俺は一切動かない。
痛かったけどここは我慢だ。
「生きてんの......?」
早苗の表情が変わる。
そして早苗は俺の口元に耳をたてた。
「......!? 息してない......」
そう、俺の特技は死んだフリ。
友人に熊には死んだフリが有効だぞと5年間騙され身につけた奥義だ。
呼吸音を一切出させない、完璧な死んだフリだ。
早苗がパニックになってるのを薄目で確認できた。
しめしめ、これは大成功だ。
これであとは美月と琴が俺が死んだと思い込ませればここから出られるぞ......!
「どうしよう、どうしよう、どうしよう......」
うんうん、分かるぞ。
目の前で人がこうなったら焦るよな。
って、ん.......?
なんだか知らないが早苗が俺の閉じてる口を手で開けた。
そして目をぎゅっと閉じこちらにキスをしようと迫ってきた。
こいつ!? まさか人口呼吸でもする気か!?
まてまてまて、聞いてないぞ。
てか美月と琴はどうした!?
早く気づいてくれーー!!
「り、りんご」
「ご、んー、ごりら」
「ら、らっぱ!!」
ってしりとり楽しんでるーーーー!?
しかたねえ、ここは.......!
「やめろおおおおおおおおおお!!!!」
「きゃあああああああああああ!?!?!?」
それからというもの。
いきなり目を開けて叫びだした俺は早苗にボコボコにされた。
それを止めようと美月によってドアが開けられ、そこから逃げるようにして俺は出ていった。




