第捨肆話「VS小夜」(中編2)
シミュレーションボックスに入ると俺はヘッドギアを装着しグリップを握った。
画面が起動し、モード選択から対人戦のPVP(プレイヤー対プレイヤー)を選ぶ。
その後、エリア選択になるがランダムで決定される。
エリアはビルがずらっと成り立つ市街地だった。
そして機体選択。
当然今現在は幻月しか実装されていない。
次に武装選択に入ると俺は少し考える。
銃で挑むにはエイムやリコイル制御、偏差読みなどは圧倒的に相手が上。
だとするならば近距離戦に持っていくしかない。
俺はそう思いメインにソニックブレードを選ぶ。
サブウェポンとして自動小銃K48を使うか。
威嚇射撃程度にしかならないがないよりはマシだろう。
おそらく相手は得意武器の7.62mm機関銃フォルテの二刀流だろうな。
弾幕を張って時間を稼いで隙を狙うしかない。
隙と言えば小夜が弾切れを起こした瞬間しかないけどな。
俺は武装選択を終えて出撃準備に出る。
同時にカウントダウンが始まった。
_5
_4
_3
_2
_1
格納庫のハッチが開き、俺はブースターを起動させ外に出る。
地面に降り立つと、まず始めに小夜の機体が近くにいるかどうかレーダーを確認しながら前方へと足を進める。
「くそ......ここにはいないか。小夜のやつめ一体どこに隠れてるんだ......?」
俺は独り言を漏らしながら左右を確認する。
ピピピピピッ
急にレーダーに反応が映り、警告音がする。
通常はピーッだが敵が急接近したときにこの音が鳴るのだ。
右にも左にもいない、もちろん前にも後ろにも。
だとすると__上か!?
俺は上空を見上げる。
そこには一つの機体が銃口をこちらに向けて急接近していた。
「くっ......!」
俺はブーストをかけ左にかわす。
その直後に弾が地面に着弾した。
相手のアーマードはすぐに距離をとって地面に降り立った。
すかさず相手の武装を確認する。
そうすることで自分がどう立ち回ればいいのか把握できるのだ。
俺は視線を武器を持っている相手の右手にずらした。
どれどれ__スナイパーライフルM42と__
......あれ?
俺はこのときおかしいと気がついた。
小夜、スナイパーライフルしか持ってねえ......!?
つまりさっき銃口を向けたのは機関銃フォルテでもK48でも9mm短機関銃MP67でもない、スナイパーライフルなのだ。
凸砂だと......!?
ここで説明しよう。
突撃するスナイパー、略して凸砂とは。
その名のとおりスナイパーライフルを使い敵に突撃する戦法のことである。
しかし、スナイパーライフルは長距離用のゼロイン(照準と弾着が一致するように照準装置を調整すること)が施されている為、近距離で撃つと着弾位置が大幅にズレてしまい当たらないのが当たり前だ。
それはあくまでも普通の人間ならという話。
だが小夜の場合となると話が違う。
弾速、着弾位置を共に正確に読んでおり凸砂を完璧に再現できることが可能なのだ。
「お得意のフォルテ二丁持ちじゃない、そして武装は一つ。おまけにその武装はスナイパーライフル......か」
高い火力のスナイパーライフルであるがゆえ、一発でも外すと次の攻撃にも時間がかかる。
かわすことを意識しながらK48で戦えばソニックブレードを使わなくてもいけるだろう。
なんだ、俺も舐められたものだ。
なら痛い目に遭わせてやる。
俺は即座にK48を構える。
同時に小夜もスナイパーライフルを構えた。
両者どちらも引き金は引かない。
残り制限時間が一秒刻みで減っていくのが分かる。
冷酷な戦いが幕を開けるのだった。




