第捨肆話「VS小夜」(中編1)
「馬鹿者ッ! なぜ生身でレヴナントに立ち向かうのだ!?」
「......その声は! 東雲教官!?」
「もちろんだ。それよりなぜ貴様がここにいる?」
俺は今まであったことを全て話した。
ゲートを通ってしまったところからレヴナントに致命傷をあたえたところまで。
「__なるほど。大体分かった。だが三木」
「はい、なんでしょうか?」
「まともな武装無しでレヴナントを倒したのは貴様が初めてだ。そして、仲間を庇い勇敢に立ち向かったその姿、見事であった」
「......! ありがとうございます!」
俺はアーマードを見にまとった東雲教官に向けて敬礼する。
こうしてポチ&琴失踪事件?は幕を閉じた。
帰りは東雲教官が手配し迎えに来てくれた輸送車に乗っていった。
輸送車にて俺は琴に話しかける。
「なあ、琴。ポチっていっつもあんなかんじで外に出ようとするのか?」
「うーん、たまに外に出ようと走るときはあるね。でも大体そういう時は小夜ちゃんがポチを捕まえてくれるんだ」
「え?」
小夜がポチを捕まえる......?
「あ、言ってなかったね。小夜ちゃん凄いんだよ! 100m走10秒なんだよ!」
ふぁ!?
世界記録は9秒58だぜ!?!?
「あれ? 三木さーん? なんで固まってるんですか?」
琴はこんこんと俺をたたく。
あいつ......勉強も戦闘技術も実際の体力も全部全部パーフェクトな天才なのか......!?
俺は絶望を実感すると共に悔しいという気持ちが湧いてきた。
「いや、せめて戦闘だけは越してやるッ!」
いきなりの独り言に琴は唖然とする。
「えーっと、よく分からないけど頑張れ! ですね!」
「おぅ!」
俺の決意した。
今日、小夜、お前を倒す!
思い立ったが吉日、俺は支部に着いた途端真っ直ぐ小夜を探した。
小夜は教室に向かって廊下を歩いていた。
俺は小夜を捕まえようと肩に手で触れようとしたとき。
「!?」
すっと避けられた。
「あれ? 今ちゃんと触れたと思ったのだが......」
「ばかめそれは残像だ、です」
小夜はこちらを振り向く。
なんちゅー昔のAAネタだよ。
「それで用事とは」
ん? 今こいつ俺の言いたいことを読んだのか?
用事があるだなんて一言も言ってないぞ。
「いえ、私に触れるということは何か用事があるのだと認識しました」
絶対読んでるなこいつ。
まあそんなわけないか、頭がいいからある程度予測できるのだろう。
やっぱ天才ってすげーよ。
いや、そんなことに感心してる場合じゃないんだったな。
「次の授業、シミュレーションルームで明日の模擬戦に向けての1対1をやるんだろう? その時俺と戦ってくれないか?」
「......」
小夜は無言のままだ。
「くっ......ダメか......」
ダメ元で俺は頭を下げた。
ぎゅるぎゅるぎゅるーー
......ん?
腹の虫が鳴ったところの正体は小夜だった。
「あれ? お前あれから飯食ってないのか?」
小夜はフンフンと首を縦にふる。
授業まであと7分、着席は基本5分前にしないといけないからここから食堂行って昼食をとるのはムリがあるだろう。
いや、待てよ?
確か俺のポケットに__
俺はもしやと思いポケットに手を入れる。
ポケットから出てきたのはこの前透がくれたガムだった。
多少の腹ごなしにはなるだろう。
そう思って俺は小夜に渡そうとする。
が、直前でやめた。
このまま渡すわけにはいかない。
「欲しかったら次の授業、俺とバトルしろ!」
「......」
小夜はずっとこちらの持っているガムに釘付けになっている。
「ホレホレー」
俺はガムを小夜の目の前でプラプラと揺らす。
「......」
「ホレホレー」
「......承知しました。その戦い引き受けましょう」
「やったーーーー!!!」
俺は渾身のガッツポーズをする。
だがその隙にガムを取られた。
お前は泥棒か。
そうして教室で点呼をとったあとシミュレーションルームに移動するのであった。
天才との戦いが始まる。