第拾弍話「如月早苗という人物は」(中編1)
_あれからどのくらい経ったのだろう。
そういや、早苗を助けたんだよな。
良かった。
......でも、俺が代わりに死んだら結局またやり直しになるんじゃないか?
なんだよ、本末転倒じゃねえか。
「____ツギ」
次はどうするかな。
攻略法を探さないと。
「ミツ____」
......
「ミツギ」
その声につられてふと目を開ける。
そこには見たことのない天井。
窓から突き刺す強い夕陽の光。
カーテンに囲まれたベッド。
その上に俺はいた。
なにやら視線を感じた。
目を擦りながら起きてその方向を確認する。
そこには背が小さく白髪でちょこんと小動物のように椅子に座った女子_近衛小夜がいた。
「三木」
いきなり口を開いたと思ったら俺の名字を言ってきた。
......なんて返せばいいのだろうか。
「は、はい......なんでしょうか......?」
たじろぎながらも用件を聞いてみる。
「意識を確認しました」
そう小夜が言うとスッと立ち上がりカーテンを開けて出ようとした。
「ちょっ、ちょっと待ってよ。あれからどうなったんだ? ここはどこなんだ?」
俺は慌てて引き留める。
「あれから救援が入り貴方の機体ごと回収されました。傷は軽症で済んだようで一命をとりとめました。この場所は支部の中にある救急医療センターです。以上」
機械のように流れる説明が終わったあと、小夜はどこかへ言ってしまった。
少し気になって腹部を見てみる。
確かここを刺されたんだったな。
服を返すと包帯だらけのお腹があった。
触れてみたが穴が開いてる感触はなく、痛みは少しも感じなかった。
今までこれほどの怪我を負ったことがなかったが、こうしてみると現代の医療って凄いんだなと思った。
ドタドタドタ
ん?
何かが走ってくる音がする。
それも一人ではなく何人もの足音だ。
その足音はちょうど俺のいる部屋の前で止まる。
「三木ーッ! 無事なのかーッ!?」
「やめなよ、駆君。怪我人の三木君に対して大きな声を出しちゃ」
駆と美月の声がする。
その瞬間ガバッと勢いよくカーテンが開けられる。
「三木!!」
「三木君!!」
「三木さん!!」
「ヒロ君!!」
「三木殿!!」
他にも琴と透と今宵がいた。
「えっと......これは一体どういうことが_」
「三木ぃぃぃぃ!! 生きてたんやな!!」
言いかけた瞬間、駆に思いっきり抱き締められる。
「良かったね、駆君。あ、そういや三木君、駆君はずっと授業中泣いてたんだよ~、ね~」
「うっさいんじゃい!」
ハハハハハ_
室内は笑いに包まれる。
「そういえば如月はいないのか?」
ここには俺を含めて6人しかいない。
残りの早苗の姿がなかった。
「早苗ちゃんは顔を見たくないだとか言ってたね.....なんかごめんね」
美月が説明してくれた。
なるほど、早苗を生かせることができたのか。
「いや、いいんだ。とりあえず死人が出なくて良かったよ」
俺はホッと手を撫で下ろした。
「三木、それはお主が言うセリフではないだろう。でも、生きてて本当に良かった」
「そ、そうだよな。今宵さんありがとう」
「うむ」
_そうしてしばらく時は経ちなんとか授業には復帰できた。
授業では今日の戦いの記録と反省、今後の戦法について書かされた。
だがそこにも早苗の姿はなかった。
授業は書き終わった者から退出していった。
俺は最後まで残り、書き終わったと同時に東雲教官に声をかけた。
「すみません、茶色い封筒って貰えますか?」
「ああ、いいぞ」
そういって茶色い封筒を手渡される。
「ところで三木」
ドアを開きかけたところで呼び止められる
「はい、なんでしょうか?」
コツコツと東雲教官は近づいてくる。
俺の目の前で止まると衝撃の一言を放った。
「貴様、何か未来のことが分かるのか?」
「え?」
「結果としては貴様が死人を一人も出さずこの戦いに勝った。だがその動きがおかしかった。センサーカメラから見るとずっと早苗に対して意識をさせていた。これはどういうことだ」
「......」
「何か私に隠してないか」
どうしよう。何か嘘をつかないと。
長谷教授からは誰にも言わないようにされてるんだ。
「実は俺......」
「なんだ?」
「早苗のことが気になってたんです!」
どうだ。この嘘なら上手くやりとおせるだろう。
早苗には少々申し訳ないが。
「え、三木、それ......どういうこと......?」
後ろから早苗の声がした。
あぁ、
終わったな。




