第拾弍話「如月早苗という人物は」(前編)
暗い_暗い_海の中のような空間。
星のない宇宙とでも言えるだろうか。
やがて一つの光が現れ、自分を覆い被さる。
だんだんと視界が明けていった。
......ここは?
「三木、どうかしたのか」
ボーッとする意識の中聞き覚えのある声がした。
如月早苗だ。
辺りを見渡すとそこにはあの時と同じ景色があった。
「戻ってきたのか......」
「は?」
「いや、なんでもない」
「そう、戦闘中なんだから戦うことに集中してよね」
早苗に口酸っぱく言われる。
だが俺は返事ができなかった。
俺は泣いていた。
「......三木?」
嬉しかった。
仲間が生きていて。
「うっ......うっ......」
成功したんだ。
死に戻りが。
「三木......」
早苗には俺がなんで泣いてるかが分からず困惑していた。
しばらく経ったとき俺は歯を食いしばって涙を止める。
「......すまん、つい故郷を思い出してな」
「そう、とりあえず早くあいつらを片付けよう」
「そう......だな!」
早苗と俺は建物の影からブーストをかけて飛び出す。
反応のあった場所には2体のレヴナントがいた。
「目標認識しました」
「同じく目標認識しました」
早苗は更にブーストをかけて一気にレヴナントまで距離を詰める。
そしてショットガンを放つ。
レヴナントから血肉が吹っ飛びそのまま倒れた。
......やはり一緒か。
俺は早苗を視界からそらさずにK48で弾幕を張りながら距離を詰める。
そして、左袖からスティングナイフを展開させコア部分を突き刺した。
二度も戦った相手だ。
あの時より少し早めにレヴナントを倒せた。
......さて、ここからが運命の分かれ道だ。
確かあの時早苗は背後からレヴナントに刺されたんだよな。
そうならばやつは早苗の後ろに潜伏しているはず。
俺はすぐさま早苗の方を振り向く。
_ビンゴだ。
早苗の後ろにはまだ一体のレヴナントが残っていた。
そのレヴナントは既に攻撃体制に入っており、刃状の腕を伸ばし早苗に襲いかかろうとしていた。
俺は考えるよりも先に足が動く。
「如月から離れろおおおおおお!!!」
ブースターをすぐに起動させレヴナントめがけて向かった。
この時俺には分かっていた。
そのままレヴナントをK48で撃って倒したとしてもその時には早苗は串刺しになっているだろう。
だから、俺は__
俺は早苗の背後に降り立つ。
そしてレヴナントに標準を合わせてK48を撃ち放った。
前方からはレヴナントの腕による攻撃が迫っていた。
だが俺は避けなかった。
グサッ
レヴナントの刃状の腕はアーマードの装甲をいともたやすく貫き腹部を突き刺した。
意識を失うほどの激痛が走る。
それでもK48を手放すことはなく撃ち続けた。
「あああああああああああ!!!!」
ついにはレヴナントのコアに命中しレヴナントは活動を停止する。
それと共に俺もうつ伏せになって倒れこんだ。
腹部から水溜まりのように血が溢れる。
「_______ギっ!? しっ____り___て!?」
早苗の声が聞こえる。
何言ってるんだろう。全然聞こえないや。
.......これで良かったんだ。
得たいの知れない暗黒が俺を包み込んだ。




