第弍話「あの世界」(前編)
_2010年4月22日
__強い光がカーテンの隙間から差す。
......もう朝か。
目をこすりあくびをしながらゆっくりとベッドから出る。
......って今日入学式じゃん!
俺は嫌な予感を感じながらも恐る恐る時計に目をやる。
時計は8時半を指していた。
入学式は9時から始まる予定だ。
俺は慌ててパジャマを脱ぎ捨て、スーツへと着替える。
「普通なら遅刻したときいつも母親がたたき起こしてくるはずなのに......」
そうブツブツと文句を言いながら準備を済ませて下の階に降りる。
「母さーん、時間無いから朝食抜きでー」
遅刻するときのいつもの台詞だ。
しかしいつもは「はーい」と返ってくるのに、何も返事が返ってこなかった。
それどころか朝食すら準備されてなく、部屋はがらんとしていた。
......まあ、いつも忙しい母のことだ。用事でも何かあるのだろう。
俺はスニーカーの靴紐を強く結び、ドアに手をかけた。
「行ってきます」
誰もいない家に挨拶をする。
....おかしい。
そう感じたのは家から出て、数歩進んだ時だった。
上手く言葉で言い表せないが、何かがおかしい。
不安をあおるかのように春の生暖かい風が通りすぎる。
......そうだ、人の気配がないんだ。
普段なら自動車の音、近所の人たちが話し合う声、TVの音などそれらの生活音が聞こえてくるはずだ。
だがそれがこの世界には1つもないのだ。
そんな時、後ろから1つの人影がこちらに近づいてくるのが見えた。
「あの......すみません......今日ってなんか変なかんじですね......」
振り向いてそう軽く話をするつもりだった。
そこに立っていたのは人間ではなかった。
全身が黒く染まった2mもある人型の化け物。
その化け物は昨日プレイしたゲームに出てきた敵_レヴナントと酷似していた。
化け物は腕を刃状へと変化させこちらをあたかも突き刺そうと近づいて来る。
俺は足がすくんで一歩も動くことができなかった。
「少年ッ! 早く伏せてッ!」
どこからか女性の声がしたかと思うと銃声が鳴り響いた。
俺は指示に従い地面に伏せる。
伏せている中、とあることに気がつく。
......この銃声、どこかで聞いたことがある。
7.62mm機関銃......「フォルテ」......?
よく聞いてみると完全に一致している。
......いや、ただのまぐれだろう。
しばらくして銃声が鳴り止む。
「少年、もういいぞ」
俺は立ち上がる。
立ち上がった先には黒い肉片が銃弾と共に散っていた。
今まで嗅いだことのない腐った匂いがする。
その光景と匂いに吐き気がした。
「ふむ、見る限り目立った外傷はないようだがどこかやられたりしなかったか?」
「い、いえ、ありがとうございま__」
お礼を言おうと声のありかへと体向けたときのことだ。
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