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第拾壱話「絶望」(後編)

「......私と過去を変えてみない?」


「はい......?」

本当に訳が分からない。

過去を変える? どうやって?


「その『はい』はYESなの?」


「いや、そうじゃないです......でも過去を変えるってどうやってやるんですか? そんな非現実的なことができるわけないじゃないですか!?」


「落ち着きなさいよ、あと非現実的な人間なんてそこにいるじゃない? ほら」

長谷教授はそう言って俺のことを指差しした。


「死に戻り、できるんでしょ?」


そう言われてハッとなる。


「その様子じゃ完全に忘れてたっていうかんじね」


「そ、そうですね。じゃあとりあえず俺、今から死に戻りすればいいんですかね?」


安直な言葉に長谷教授は「待った」と声をかける。


「そうしたほうがいい、って思うけどどこまで戻るかが問題よ」


確かにと俺も思う。


「最初の死に戻りはアーマードに乗るか乗らないで避難してそこで死ぬかの選択だったわよね」


そういえばそうだったな。

あの時はゲームとリンクしていて、分かれ道がちゃんとあった。


「でも今回死に戻りするとなると上手くいくかしら? 貴方が死ぬ前の選択肢まで戻るとなると、今貴方が戻りたい地点まで戻れるか......」


長谷教授はうーんと考え込む。


「その選択肢が死ぬ以外の条件だとしたら......死に戻りが発動しなかったら.......」


ブツブツと考え込みながら独り言をしてる最中に俺は口を挟む。


「......やってみないと分からない、って言ったのは長谷教授じゃないんですか?」


「......」

長谷教授はこちらを向く。

そしてため息をついた。


「確かにそうね......こういうのは実験してみないと分からない。ただし」


「ただし?」


「これだけは言っておくわ。もし貴方が望んでいなかった地点まで戻されたら今までと同じことをしなさい」


「......分かりました」


「それとこの出来事もその世界の私にも話すこと」


「その世界......ですか」


「死に戻りした世界でってことね」


「分かりました」


「では、今から貴方を殺すわ」

そう言って長谷教授は研究服の内ポケットから1つのピストルを取り出した。

真剣な眼差しで銃を構える。

その瞬間俺は思わず目をつぶってしまった。

死ぬのが怖かった。


「......って、いきなりこれはダメよね。ちょっと待ってて」


長谷教授はそう言うとピストルをカタンとテーブルの上に置き、コーヒーを淹れようとした。


「お互い落ち着いてなきゃ、貴方の命を一発で仕留められないもの」


「そ、そうですよね.......」

俺は一気に緊張がほどけクタリと椅子に座った。



「_はい、ミルク多めにしといたわよ」


「ありがとうございます」


そう言って俺と長谷教授は二人でコーヒーを飲む。


「......あのね、もう1つ守ってほしいことがあるの」


「ん? なんですか?」


「死に戻りはあまり故意でやらないでほしいの」


「......」

いきなりのことに俺は無言になる。


「貴方が死ねばそれがトリガーとなり世界はリセットされる。だから貴方が死ぬのは誰も覚えないし、他の人間の記憶もリセットされる......」


教授は一気にコーヒーを飲み干した。


「......それって悲しいことじゃない?」


「......」


「何が辛いって貴方が2回、もしかしたらそれ以上同じのことをしないといけない、貴方が死んでも誰も悲しまない、貴方が死ぬ時の痛みを何度も感じないといけない......まだまだあるわ」


「そう......ですね。でも仕方ないことじゃないですか」


「そうだとしても、貴方には自分のことを大事にしてほしい」


「.......分かりました」


俺はコーヒーを飲み干した。



「_ミルク多めも悪くないですね。なんだか心がぽかぽかします」


「そう言ってもらえると嬉しいわ」


長谷教授はテーブルの上に置かれたピストルを手に持つ。


「......じゃあ、俺行ってきますね」


「ええ、お元気で」


長谷教授はピストルをそっと俺の頭に向けた。

ピストルのひんやりとした感触が伝わる。


だが死ぬのはもう怖くなかった。









「さようなら」









トリガーが引かれる。

ピストルと_この世界の_

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