第拾話「切望」(中編1)
「_南条、それは冗談じゃ済まされないわよ」
「いえ、上の方からそう伝えろと」
「なら説明してくれるかしら」
南条が言うには、
今日はアーマードの遠征で装着員の人数が足りないという話だ。
何人かは残っているがそれでも数は足りないらしい。
「_それでも私の大事な宝物を傷つけるわけにはいかないわ」
東雲教官は厳しい眼差しを南条に向ける。
「ふーん、数も数っていう状況なのになぁ...」
「あの...南条さん?でしたか、どうして僕達が選ばれたんですか」
いきなり問いだしたのは透だった。
彼は真剣だった。
おそらく出撃しなければならないことだと分かっているのだろう。
「まあ単純に言えば今年の訓練生は成績が良いからって話かな」
「...そうですか」
東雲教官がその様子を見かねて結論を出した。
「結局やむを得ないってことね。分かったわ、各自、準備をよろしく頼む。集合場所は第2アーマード演習格納庫だ」
_第2アーマード演習格納庫
「各自揃ったな、時刻は11時25分。これより作戦を開始する」
...まさかこんなにも早くレヴナントと対峙するとは思っていなかったな。
俺もそうだがここにいるみんなは初めてレヴナントと交戦する。
大丈夫なのだろうか....
「三木、大丈夫だって、俺達なら勝てる」
そう思っていた矢先、駆が励ましの言葉を送ってくれた。
「ああ、ありがとう。心配なんていらないよな」
_しばらくして出撃可能の許可が降りる。
「貴様ら命だけは最後まで守り抜け、命令は以上だ。武運を祈る」
そう東雲教官が言うと上空へと飛び去っていった。
それに続いて俺たちもブーストをかけて飛ぶ。
今回の作戦はこうだ。
場所は市街地区。
1グループ2人に別れてレヴナントを撃破し、全ての目標を対処次第、合流をする。
ペアの組み合わせは以下の通り。
俺と早苗、駆と透、今宵と小夜、美月と琴。
早苗とはまだ仲は悪いほうだが俺一人でもなんとかなるだろう。
***
「_美月ちゃん、あれ、レヴナントじゃないかな...」
「そうだね、流石琴ちゃん、鼻が利くぅ」
「えへへ...でも笑ってる場合じゃないよね....目標認識しました。迎撃します」
美月と琴の前に2m級レヴナントが立ち塞がる。
すかさず二人は武装を構えた。
しかし距離を保ったまま二人が動くことはなかった。
「...いくよ、琴ちゃん」
しばらく様子を見たあと美月が先に仕掛けた。
(MP67、弾数は35発。琴ちゃんに負担をかけないようにすぐに倒す...!)
美月はブーストをかけ一軒家の上に立った。
この場所でなら一方的に撃てる、そう思っていた。
「当たれええええええええ!!!」
ズダダダダダダダダダダダダ
しかし標準が合わず、弾は横をかすめたり硬い部位に当たったりして効果はなかった。
カキンカキン
乾いた音が銃から鳴る。
「弾切れ!?」
「_危ないッ!!美月ちゃん避けて!!!」
「え?」
レヴナントは高く飛躍しアーマードを叩き斬ろうとしていた。
間一髪のところでブーストをかけて避けたが_
「...っつ、ごめん琴ちゃん。右腕やられちゃった」
MP67を持っていた右腕が切断されカランと落ちた。
「美月ちゃん...!?」
「ん、大丈夫。本物の右腕は無事だから。琴ちゃんの掛け声がなかったら今頃スパって切れてたよ」
「でも、もう武器を持てそうにないかな...」
美月は左袖のスティングナイフを展開させた。
「待って?何をするの?美月ちゃんッ!」
(これ以上琴ちゃんには辛い思いをさせたくない。せめて私だけでも...!)
「はああああああああ!!!!」
美月はひたすら走った。
ブーストをかけレヴナントめがけて。
そして_
グシュッッッ。
スティングナイフがレヴナントに突き刺さる。
ドス黒い血が一斉に吹き飛んだ。
しかし、
ガキンッッ
「!?」
そのまま突き上げようとしたが、硬い肉質のせいで逆に刃が折れてしまった。
(...もう...ダメか)
レヴナントは刃状の腕でこちらを突き刺そうとしていた。
その時だ。
ダンッダンッ
2つの鉛玉がレヴナントに直撃した。
それと僅かな時間差で炸裂し肉体が弾け飛ぶ。
「...!琴ちゃん!」
「私を置いてかないでね、だってあの時約束したじゃん」
あれは初めて琴に会った日だ。
美月は琴の過去を知って全部聞き終わったあと、強く抱きしめた。
そしてこう言った。
「...私がいつでもそばにいてあげるからね」
美月はその時のことを思い出した。
(そうだったよね、いつでもそばにいるって言ったもんね...)
「仕留めるよ!美月ちゃん!!」
「うん!」
琴は的確に炸裂式12.7mm弾を当てていく。
そして次々と内部から破裂しついには跡形もなく吹き飛んだ。
「_ありがとう、琴ちゃん。助かったよ」
「うん...!美月ちゃんが無事で良かった!!」
二人は合流場所へと向かっていった。




