第玖話「第二の目覚め」(後編)
「聞こえなかったか?三木、132点だ。」
「......」
俺は無言で受け取った。
周りはシーンとなった。
「あ、あの...」
「なんだ?三木?」
「ふ、不合格の場合ってどうすればいいのでしょうか...」
東雲教官はため息をつく。
「どうするもなにも、貴様には除隊してもらう」
「救済処置とかないんですか?」
「知恵と知識のない者がアーマードに乗れると思うな」
教官は厳しい眼差しを仕向ける。
「...姉上、いえ東雲教官、彼は優秀なアーマードの装着者です。彼を失うのは我が隊でも十分な痛手になるのではないかと」
今宵がそんな様子を見かねて抗論した。
「そ、そうですよ。アーマードを上手く扱えるからいいじゃないですか!」
美月まで...
「_いえ、そんなことはないんじゃない?」
そこに水を差すように発言したのは早苗だった。
「確かに彼はアーマードを自由自在に扱えれる。でもだからこそ反乱みたいなふざけた真似を起こすんじゃない?」
それを聞いた今宵は口を開く。
「それは聞き捨てならんぞ早苗、三木は優しくて情のある人だ。ふざけた真似をしているのはお前ではないか」
「早苗さん、三木さんはそういう人じゃないよ。だって私にアーマードについて教えてくれたもの」
琴も擁護する。
「くっ、どいつもこいつもえこひいきの味方して...もう知らない!」
そう言うと早苗は教室から飛び出した。
「...はぁ、呆れる連中だ。三ツ木、行って来い」
「教官!?なんで俺なんかが...」
「訓練生同士の問題だから貴様らで解決しろ、特に三ツ木、お前が言わなくてどうする」
えぇ...
普通なら仲のいい美月とかが行くだろ...
まあ、俺が低い点数をとったのが原因だから仕方ないといえば仕方ないか。
「分かりました、すぐに戻れるようにします」
_5分後
「はぁ...はぁ...くそっ、どこにいるんだ?」
あれから走って探し続けたがどこにも見当たらなかった。
流石に女子トイレに入るわけにはいかないが、廊下を歩いていた職員に訊いてみるとどうやら上の方に向かったらしい。
残るは_
「ここか」
俺は屋上のドアをギイっと開けた。
瞬間風が入ってくる。
屋上には早苗の姿があった。
何もない空間に1人ポツンと。
ここまで来たのはいいが掛ける言葉がなかった。
しばらく黙っていたが、早苗がいきなりこちらを振り向きこう言い放った。
「なんで私があなたをえこひいきって言ってるか分かる?」
「え...?」
俺は驚いた。しかし答えは出なかった。
「...質問変えるけど、私達がどうやって訓練生になったか知ってる?」
「あぁ...確か適正診断と入試試験の2つで合否判定がされるんだろ」
ノートの最初の部分にはそう書いてあった。
「それがどんなに難しかったかあなたには分かる?」
「......」
「私は自分の故郷を奪ったあいつらを倒したくて、必死に必死にここまで這い上がってきた。私だけじゃない、他のみんなも同じ」
「...えこひいきってのはそういうことか」
俺はその時全てを察した。
「なのにあなたは、特待生とかいってノコノコやってきた。あなたには私達の努力の何が分かるの?」
「...分からないさ」
「は...?」
「分からないさ、なんで俺なんかが選ばれたのか」
「......」
「俺だって努力してんだ。分からないことばかりのこの世界で」
「......」
「......」
俺たちは無言になった。
真実を伝えれば彼女が納得してくれそうだがそういうわけにもいかない。
「...なんでさ、」
「ん?」
「なんで三木は地下で訓練してたの?」
「......」
いきなりの質問に答えることができなかった。
「...訳アリってことで受け取ったほうがいい?」
俺はコクリと頷いた。
「まあ、いいわ。今回は許してあげるから」
「そ、そうか...」
ん?なんだ?
案外あっさりした感じで終わったが...
「じゃあ、そういうことで。私は戻るから」
早苗はそう言って階段を降りていった。
俺は立ち尽くし空を見上げていた。
「...さて、今度は俺の番か。こんなところで除隊だなんてしたくない...」