第玖話「第二の目覚め」(中編2)
「オルゲンロートリッターシステム...?」
本のように何枚かで構成されてある書類にボールペンで走り書きされた文字だった。
オルゲンロートリッター...なんの意味だろう。
一番最後のページには超重要書類、持ち込み禁止との赤文字。
なんでこんな大事なものを入り口間際に捨てておくのか。
俺は中身をめくろうとしたその時、
「オルゲンロートリッター、夜明けの騎士って言う意味よ」
ふいに後ろから声がした。
冷や汗をかきながらも振りかえる。
そこには長谷教授が立っていた。
「あ、あのすみません...そういうつもりじゃ...」
「全く、私がトイレに行ってる間に...」
そういって俺の手から書類を奪い取る。
「オルゲンロートリッターって何の意味なんですか...?」
俺はおそるおそる訊いてみる。
「別に...大したものではないわ、あなたには関係のないものだから、でここに来たからには何か用があるのでしょう?」
「は、はい、実は_」
俺は自分が所持しているものが向こうの世界に持っていけないかどうかを話した。
「_なるほどね」
教授はしばらく考え立ち尽くす。
そしてこう口を開いた。
「物は試し、確証はないのだけれどやってみましょう」
「そ、そうですか、分かりましたやってみます」
俺はそう言うと自室に行かずまっすぐ図書館に向かった。
休み時間はまだかなり残ってある。
とあることが気になったからだ。
俺は検索用のパソコンの前に座る。
そして躊躇いもなく1つのワードを打ち込んだ。
『オルゲンロートリッター』
しかしそこに出てきたのは通常の検索結果ではなく、パスワード入力画面だった。
「...ダメか」
俺は息をつく。
諦めて立ち上がった時、誰かが後ろから話しかけてきた。
「その様子を見る限り、お探しのものはなかったのかな?」
その声の正体は透だった。
オルゲンロートリッターのことは一応言わないでおこう。
「ああ、いやまあそんなかんじかな」
「そっか、それは残念、ところでさ_」
透は右手に持っていた本を差し出す。
「本に興味はない?この本すっごく面白いんだよね」
「本?まあ嫌いではないかな、これ読んでおくよ」
そう言って俺は本を受けとる。
「読み終わったら僕の机とかに置いてね、じゃあまた」
「分かった、じゃあな」
本、か。
俺は題名を見てみる。
『昼と夜の狭間』
「んー、つまり夕方のことか?深いような深くないような」
試しにパラパラと読んでみる。
内容をかいつまんで話すとこうだ。
どこもかしこも常に夕方の世界のお話だ。
具体的に言うと主人公のいる空間だけが夕方みたいなもので、主人公は世界自体が夕方だと思っているという設定だ。
そこで出会う奇妙な人たちと触れ、徐々にこの世界から抜け出したいと思ってしまう。
休み時間が終わるからここで読むのをやめよう。
ラストがどうなったかは分からないが、これの何が面白いのだろうか...
俺は悩んでてもしょうがないと思い教室へと向かった。
「_まずはテスト返しだ、番号順に一列に並べ」
テストは合計200点、その中の8割、つまり160点で無事合格となる。
「犬崎 琴、182点」
「よし、9割いいね!」
なるほど、点数まで言われるのか。
自分が最低点だったら嫌だな。
「宇崎 駆、161点、ギリギリだったな」
「あぶねえー、いや良かったわホンマに」
その後もテスト返却は続いた。
透は191点、早苗は175点、小夜は200点、今宵は195点、美月は168点だった。
最後は俺だ。
「三木 祥」
「は、はい!」
「132点」
その時俺だけが凍りついた。