第捌話「ただいま、さようなら」(中編2)
「_うん、ここでいいよ、ほんとにありがとね!」
「分かった、じゃあまたいつか」
俺たちは十字路のところで別れを交わす。
_さてこれからどうしようか。
家に帰るのは当たり前のことだが、要はあの世界のことだ。
また寝たらあの世界に戻るのか。
だとすると何か今できることはないのか。
俺は急ぎ足で家に戻った。
そして帰ってから夕食、風呂などを手短に済ませゲームを起動する。
ゲームとあの世界がリンクしているなら何か手がかりがあるはずだ。
そう思いながらストーリーを進める。
ストーリーはあの世界と登場人物や出来事は違えど流れは一緒だった。
ある程度進め、とある場面で手が止まる。
「これは...」
それは「西南部防衛戦線」と称されたミッションだった。
さらにストーリーを進めその全貌が明らかになる。
2010年6月15日_決行。
防衛区域は四国地方の湾岸、市街地。
前線崩壊の場合、四国地方陥落と見なし作戦を破棄する。
つまるところ破棄=失敗という意味だ。
確かあの世界の時間は4月24日だ。
ということはあと2ヶ月を切ったということになる。
「早めにシミュレーションとしてやっておくべきだな」
俺はミッション移行パネルをタッチした。
しかし_
「あれ?いかない?」
どうやら固まってしまい反応が一切なくなってしまった。
10秒経ったのちメンテナンス画面が現れる。
「そういや今日の昼もメンテナンスあったな...今日はそういう日なのか」
仕方なくゲームの電源を切りベッドに入った。
_4月24日
そして朝を迎えることになる。
目覚めた先にあった天井は昨日と変わらないままだった。
「あれ、異世界転移しないのか...?」
異世界転移には条件があるのか、はたまたもう異世界転移はできないのか。
悩みに悩んだ末、俺は後者の方を選ぶ。
まあ元の世界に来れたんだ。
あんな化け物がいる世界ではないこの世界に。
朝飯を済ませ私服に着替えた。
今日からは大学の講義がある。
俺は行ってきますと告げ、自転車のロックを外しペダルを踏み込むのだった。
春風が頬を伝わり流れ去っていく。
坂を越え目的地である大学に着いた。
「大体20分か...冬はバスでいかないとな」
俺は自転車を駐輪所まで押し進めた。
そして腕時計を確認し時間に間に合うように席につく。
何人かちらほらいたが人はまだ来ていなかった。
どうやらあと30分もあるようだ。
しばらく寝てよう。
「_き...起き...起きて...」
ゆさゆさと誰かが起こそうとしている。
「ん?その声は...」
目を開けるとそこには琴がいた。
「...!同じ学科だったのか...」
「えへへー、そうだよ、ほら講義始まるからシャキッとしないと!」
そう言いながら琴は俺の隣りに座った。
ガラララ
講義の時間になり誰かが講義室に入ってくる。
...!?
まさかこんな人までもいるのか...!?
入ってきたのはなんと長谷教授だった。
「今日の最初の講義はオリエンテーションよ、一番最初の列から適当に自己紹介していって頂戴」
俺はその時更に目を疑った。
自己紹介中に気づいたのだがあの世界と同じく、駆、透、早苗、美月、今宵の5人がいたのだ。
しかし、とあることに気づく。
なんで小夜がいないんだ...?
まあどこかで会うことになるのだろう。
とりあえず休み時間になったら_長谷教授にでも話かけよう。
何事もなく午前の講義は終わり休み時間になる。
早速俺は長谷教授を探しにいった。
ふと歩いてるととあるプレートに目がつく。
_B5資料室
まさかと思いノックをして入る。
そこにいたのは長谷教授だった。




