「この世界」(中編2)
「......10m級......だと......」
10m級。それは絶望の2文字を表現するのに容易い代物だった。
通常、2m級は腕が2本なのに対して10m級は腕が6本もある。
さらにコア部分は発達した頑丈な胸骨や背骨で覆われており、砲撃でない限り風穴を開けられない。
そして何より厄介なのが__
「なにッ!?」
いきなり2本の腕がこちらめがけて襲いかかってきた。
確かに隠れていたはずなのに......
俺は右にブーストを切って攻撃をかわす。
そう、これが真の驚異。熱反応を完全に認知する能力だ。
2m級でもある程度は認知できるがここまでの距離とまではいかない。
俺はブーストを切ってかわしたことで完全に姿をあらわにしてしまった。
俺は7.62mm機関銃を構えさらにブーストをかけ接近する。
コアを狙うのは無茶がある。
せめて頭部を狙い視覚を奪うのに徹底しないといつまで経っても猛攻が続くままだ。
「とっとと消え失せろッ!!この......デカブツがァッ!!!」
ひたすら頭部を狙う。
しかし__
「ぐッッッ!?」
新たに2本の腕によって横から叩きのめされる。
そのまま薙ぎ払われ道路へと放り出される。
「装甲損壊、全体ダメージ70%到達」
ダメだ......このままじゃ勝てない......
地べたに這いつくばった俺は既に諦めの念を押そうになっていた。
それでも膝をつきながら立ち上がる。
「人類を守るためだ......自分が犠牲になっても......それでいい......」
「だから......まだ俺と付き合ってくれ......幻月......」
_1:02
_1:01
_1:00
_0:59
残り1分を切った。
もうこの機体はボロボロだ。
まともな状態ではない。
だが腕と足が十分に動けるのならそんなことはどうでもいい。
俺はあと残り僅かの燃料でブーストをかけ、立て続けにくる攻撃をかわし上空へと駆ける。
「うおおおおおおッッッ!!!!」
センターポイントに正確に頭部を入れ必死に撃ち続ける。
頭部のところどころから血が吹き出し、ついには爆散した。
だがそう甘くはいかなかった。
「!?」
推進剤が切れたのだ。
機体は勢いをなくし地面へと墜落していく。
「ここまで......か......」
堕ちていく中、時間がゆっくりと流れていくのを感じた。
_0:30
_0:29
カウントも残り僅かだ。
......俺はもう死ぬのか。
死ぬのならいっそこの機体ごとズタズタに引き裂いてくれ。
出血多量で力尽きるぐらいならまだそのほうがましだ。
そんな敗北を意識している中、
一つの砲弾がレヴナントに着弾し、轟音とともに爆発したのだった。