第伍話「武装訓練」(後編)
「東雲さんは休んだりしないのか?」
今宵は1時限目からずっと自主練習をしている。
そんな彼女が気がかりだった。
「うむ、1秒でも早くアーマードに慣れたいからな」
まあ、当たり前のことだ。
「それともう1つ_」
ん?
「守りたいものがあったから...だ」
あった...?なぜ過去形なんだ?
「守りたいものって一体...?」
今宵は少し下にうつむく。
...あまり触れないほうがよかったのかもしれない。
「...嫌なら無理して言わなくても大丈_」
「妹のことだ」
......
「さらわれたのだ、ツェアシュトーレンに」
「私は絶対に許さない...」
彼女が拳を強く握りしめる。
_ツェアシュトーレン、北方に位置するヴィーバントと同じ対レヴナント機関の1つだ。
ゲームでチュートリアルに行くまでのストーリーで軽く勢力的なものが説明されていたのを見たことがある。
10年前、人員確保のために各国から多くの人を拉致したという暗黒の歴史を持っている。
なぜそこまでして人を集めたのか、人員確保というのはただの口実で、何か裏があるのではないかとインターネット上で憶測が飛び交っている。
今後のストーリーを進めるかアップデートが来るまで待つかしないと、その詳細は判明されない。
それにしても被害者がこんなにも近くにいたとは...
「確かに妹さんに対しての気持ちはよく分かる、でも過去のことを考えすぎてもらちが明かないんじゃない...かな..」
俺には今宵がまるでツェアシュトーレンにアーマードで立ち向かう、そんな気がした。
もしそれが実際に起こってしまうと彼女の命が危ない。
「...確かにそうだな、申し訳ない、だがあの時起こった出来事は一瞬ながらも脳裏に焼き付いて離れないのだ」
「...そうか、こっちも変に聞いて申し訳なかった、もし良かったら名前教えてくれないか?何かで名前を聞くことが今後、あるかもしれない」
今宵は前を向く。
その表情はとても真剣な目つきだった。
「...東雲 璃里だ、場所は分かっていえどもう会えないのは承知している、別に覚えるほどでもない」
「...もし北方にで向かう機会があったらその時は探してみるよ」
ゲームのストーリーでは後半の方に北方に行くというミッションがあった。
この世界がゲームとリンクしているならばもしかして出会えるかもしれない。
「そうか、そなたは優しい人なのだな」
_____
それから俺はその場をあとにした。
休み時間は残りあと15分。
訓練も大事だがノートのメモも大事だ。
教室で集合だったため、教室に行き机の上でノートを開く。
しばらく書いた後、気になる部分があったので手を止めた。
「...シュヴァルツワークス」
そのまま俺はじっくりと読み進める。
レヴナント保護機関「シュバルツワークス」
そのままの意味でレヴナントを保護する組織だ。
時は1998年12月3日、人外生命体研究機関「ヴァイスワークス」はレヴナントの捕獲に成功し莫大な資金を使って解剖、研究に取り組んだ。
その結果は表には公表されてない。
だが、ただ1つ人類に向けて宣告されたことがある。
「レヴナントは増えすぎた人類を粛清するために地球外から来た使者である」
かの学者レギンストールが1999年3月21日に発した言葉だ。
その後、レギンストールは4日後どこの組織か分からぬヒットマンに胸を撃ち抜かれ絶命した。
しかし、人外生命体研究機関「ヴァイスワークス」はレヴナント保護機関「シュバルツワークス」に名を変更し研究、保護の活動を進めた。
人類の敵であるレヴナントを保護するだって...!?
ゲームの資料設定には書かれてなかった内容だ。
そしてこういう奴らが軍事的な力を得たとしたら、確実に人類は終焉へと向かうだろう。
そう、レヴナントの目的は__
「三木ッ!授業が始まるぞ!時計を見ろッ!」
ハッとして周りを見るとみんなが席に座っていた。
時計はすでに5時を過ぎていた。
「す、すみません...」
俺はノートと筆記用具を机の中に押し込む。
「_ではこれから3時限目を行う、敬礼!」
一斉に起立し敬礼をする。
そろそろ慣れてきたのか、周りと合わせることができるようになった。
「今日の最後の授業はシミュレーションルームでレヴナントと戦ってもらう」