第伍話「武装訓練」(中編1)
時は進み、みんなが昼食を食べ終える。
「あ、私と琴ちゃんでアーマードのブーストの練習してくるね」
そう言って美月は琴を捕まえて足早に去っていった。
「え、もうちょっとお喋りしたかったのにぃぃぃぃ」
琴の断末魔が遠のく。
可愛そうだが仕方がない、次の授業では実際に銃器を持ってでの戦闘訓練をするのだから。
「僕はまだ途中までしか読んでない本を読みに行くよ」
「俺は教室で寝とるわ、じゃな」
「私は自主練習で校庭にでも」
「じゃあ私も...ついてんくんなよ、えこひいき」
みんなはそれぞれ自分のことをしに、次々と食堂をあとにしていった。
残ったのは俺と_
「...何を見ているんですか...?」
小夜だ。
「いや、別に、なんでもないが...」
しばらく沈黙が流れる。
どうしよう...気まずすぎる。
あ、あの話題があったな。それでも話してみよう。
「なんで廊下で話してるとき、あんなことを言ったんだ?」
あの時彼女が発言するなんて予想だにしてなかった
「パパに言われて...」
パパ?
「つまるところ、おじいさんだけでなくお父さんもヴィーバントに所属しているのか、家族揃ってすごいんだな」
おじいさんは軍部司令長官、小夜は訓練兵のエリート、お父さんは...なんだろうか。
「...?...小夜に...おじいさんはいません」
...え?
意味が分からなかった。
少ししてからもう一度訊ねる。
ふと気になったからだ。
「お父さんってのはもしかして近衛昌嗣長官...?」
彼女はコクリと頷く。
...やっぱりか。小夜には何か裏があるはずだ。
しかしこれ以上の詮索はやめておこう。
奥に踏み入るのはもう少し時間が経ってからにした方がいいようだ。
「ところで長官からはなんて言われたんだ?」
俺は話を元に戻す。
小夜はこう答えた。
「貴方に命の危機が迫ったときお守りするだけです、私がいる限り貴方の命を保証します」
お、おぅ...なんかちょっと嬉しいようなちょっと可愛そうなような...
それよりなんで俺なんかを。
「なんで長官はそこまでして俺を守りたいんだ?」
続けて問う。
「それ以上はお答えできません」
きっぱりと断られた。
ここまでが訊ける限度ってところか。
「あぁ分かった、変に聞きすぎてごめんな」
俺は立ち上がりその場を去った。
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そして教室に着きノートを開く。
まだ大量にあるこの量を終わらせないといけないのだ。
シャーペンに予備の芯を入れキャップを閉じカチッと鳴らし、紙上を走らせる。
俺は1時間の間ひたすら書き続けた。
途中で駆が起きてこちらを少し見たが、邪魔をしないようにと思ったのか再び眠りについた。
こうして2時限目が始まるのだった




