第肆話「起動」(前編)
「!? あの時の......少年......?」
しばらく沈黙が流れる。
そりゃそうだよな、助けた頭のおかしい一般人が訓練生になるなんて。
俺は気まずい空気の中、指定された席に座った。
というかあのゲームで助けてくれたあの人と瓜二つなんだが......
「教官、あの人と何か関係でもあるんですかー?」
生徒の一人、高岩 美月が手を上げて質問した。
「......別に、何もないわ」
あ、こいつなかったことにしやがった。
「それよりミツギッ!」
「は、はいッ」
「特待生として今日から訓練生となるのに、初日から遅刻だと?どういう根性してるんだッ」
ひ、ひぇ......
「す、すみません......」
俺は慌てて謝った
「......次からは注意するように、それではまず、自己紹介から始める」
「ミツギ! 最初は貴様からだ。」
そういってこちらに指を指す。
「は、はい、ミツギ ヒロです、好きな食べ物はカレーです、よろしくお願いします!」
俺は立ち上がり一言言う。
......シーン
あれ?滑った......?
「__一番から彼に自己紹介していってくれ」
「犬崎 琴、君が来ないものだから朝起こしに来たんだ、あと昨日のこと覚えてるからね!」
昨日、寮でぶつかった子だ。相変わらず背は小さい。
「宇崎 駆!俺はハンバーグが好きやな!よろしく!」
金髪で俺よりちょっとだけ背が低い、サッカーをやってそうな雰囲気だ。
こいつ......リュウジと同じエセ関西弁の使い手か......
「大宮 透、本を読むのが好きです、よろしく」
メガネを掛けたいかにも好青年といったところか。
「如月 早苗、ま、そゆことで」
ん、なんかカンジが悪いな...
「...近衛...小夜」
ぺこっと一礼だけして着席する。
え、これだけ? まあ、無口な子なんだろう......
白髪だし何か不思議なかんじだ。
てか近衛ってまさか__
「東雲 今宵、琴と同じく今朝、貴方を起こしに来た者だ、東雲教官の妹である、以後宜しく頼む」
身長は俺と同じくらいか、それにしても姉妹揃って高身長だし真面目な性格なんだな。
「高岩 美月、可愛いものが好きかな、よろしくね!」
駆にも負けないぐらいの明るさだ。
黒髪のポニーテールがひらりと左右に振られる。
「__よし、自己紹介は以上だ、これにてHRは終わる、起立、敬礼!」
俺も慌てて遅れながらも慣れない敬礼をした。
「ミツギ、あとで話がある、すぐに指導室に向かうように」
HRが終わったあと東雲教官に呼ばれた。
あぁ、こっぴどく叱られるのか......
俺は重い足取りで教室を出て指導室に向かう。
コンコン
「入ってよし」
「失礼します」
そこには東雲教官が立っていた。
そして資料を渡される。
「これ、今日の夜までに教授に出しといてくれ」
なんだ......用ってパシりのことかよ......
まあ、叱られるよりかはまだましか。
「__本題に入る、まずはこれを渡そう」
そう言って渡されたのは1冊のノートだった。
中を見ると文字や図でびっしりと埋まっている。
そこにはアーマードや銃器、戦法やレヴナントに関しての情報が書かれてあった。
「__これらのことを全てメモし、一週間後にある筆記テストまでに全て暗記すること」
「え!?」
「ちなみにだが、ざっと3ヶ月分の内容だ」
3ヶ月!?てかあの人たち結構前から訓練生としてやっているのか。
「む、無理ですよ?そんな3ヶ月分の内容を1週間で覚えろとか......」
「ほぅ、アーマードの装着員になりたくないと」
教官はこちらを見つめる。
くそッ、身長がたけえ......
「......分かりました、やってみせます」
俺はコクンと頷いた。
「あ、あとシェルターの人達を助けてくださってありがとうございました」
「あ、あれか。まあこちらこそありがとな」
俺は伝えることはすべて言ったので教室に戻ろうとドアに手をかける。
「誰が戻っていいと言った」
え、まだあるんですか......
俺は即座に振り向く。
「__期待はしてない、以上だ」
冷たくあしらわれた。
それだけが伝えたかったことかよ......
俺は悔しい思いを必死に我慢し指導室を出た。
絶対アイツを越してみるほどのアーマードの装着員になってやる。
そして俺が次期エースに......!
__教官の言葉が俺への鼓舞となるものだと気付きもしなかった。




