第弍拾玖話「オルゲンロートリッター」(後編)
ポッ......ポッ......ポッ......
何やら電子音が聞こえる。
その音に目を覚ますとそこは医療室のベットだった。
「......あれ、なんでここに」
「目が覚めたのですね、三木祥」
起き上がるとそこには小夜がいた。
俺が目覚めたことを確認すると小夜は医療室から出ようとする。
「ちょっと待ってくれ、まだあんたに言いたいことが」
小夜は立ち止まる。
「あの時俺を回収してくれたのは小夜だったよな。小夜がいなかったらこの戦いは勝てなかったよ。本当にありがとう」
「......私は言いました。あなたをお守りすると」
そういやかなり前、小夜と初めて話した時そんなことを言ってたな。
ちなみにまだあのことが気になっている。
「なぁ......やっぱ気になるんだけど、なんで俺なんかを守るんだ?」
「.....それはお答えできません」
以前と同じ答え......か。
続けざまに俺は問う。
「どうして答えられないんだ?」
「それはお答えできないからです」
答えが答えになっていない。
仕方ない、これ以上聞くのは諦めるか。
小夜が医療室から出る際、こう言い放った。
「そうですね。強いて言うならば、貴方が死を選ぶなら私は何もしません。貴方が生を選ぶならばその時はお守りします」
「......?」
言っている意味がさっぱり分からない。
どういうことだろうと考えている時には、既に小夜の姿はなかった。
「さて......これからどうしようか。新機体を無理やり使用したせいで何か罰せられるだろうし、共犯になった長谷教授も何かされるだろうしな......」
「__その必要はないわよ」
俺が一人呟いている時、ふいにドアの方から声がし、目を向けるとそこには長谷教授がいた。
「長谷教授、あの時は色々とお世話になりました」
「ええ、お疲れ様。よく頑張ったわね」
「はい、ありがとうございます。それとさっき、その必要は無いと言っていましたがどういうことですか?」
「あぁ、それはね__」
それからは驚きの連続だった。
長谷教授は実はアーマードの総開発者の一人だということ。
そしてその権限を使って正式に俺にアーマードを託したことにしたことで罰を帳消しにしたこと。
更に前に見たことのあった『オルゲンロートリッターシステム』を新機体に配備させていたということ。
「__ところで、オルゲンロートリッターシステムってどういうものなんですか?」
「オルゲンロートリッター、覚醒の騎士、目覚めの騎士という意味が込められているわ。まだ開発途中だから使用する前に機能停止に陥るけど、作動するとアーマードがパージされ機体の機動力が格段に上がるわ。ただし防御面は頼りなくなるからそこには注意ね」
「なるほど......でもそのシステムって勝手に作動しましたよね。それについてはどうなんですか?」
「あら、多分だけど装着する際に生体認証を行ったわよね。あれで装着者の状態を読み取り、その反応に応じてシステムが作動されるの」
そういうことだったのか......
あの生体認証がなければ確実に不利になっていただろう。
「そういや三木君、貴方のお友達が貴方が目覚めた時にパーティーをするって言ってたわ。早く皆の元へ行ったらどう?」
「え、そうなんですか!? 分かりました。行ってきます!」
俺は急いでベットから飛び出て服を着替えたあと、医療室からいつもの教室へと向かって走り出す。
「.....ふふ、まだまだ子供ね」
バンッッと強く教室のドアが開けられる。
そこには東雲教官含め、皆の姿があった。
「三木、おはよう。先日はご苦労だった。さて、貴様らッ! パーティーを始めるぞッ!」
「「「「「「「おーーーーーーーッ!!!」」」」」」」
「......おー」
その後パーティーは暗くなるまで行われた。
ゲームをしたりケーキを食べたりして最高の時間を過ごした。
パーティーをしている最中、琴があまり大きくない声で話しかけてくる。
「......今日の九時、またあの図書館で会えますか?」
「ん? あぁ、いいぞ」
それからパーティーはお開きとなり、琴に言われた通り四階の図書館に向かった。
ガチャりとドアを開けると、そこには満月に照らされている琴の姿があった。
「用って一体なんだ?」
「あ、あの......その、えっと......」
「.......?」
「実は_____」
「三木さんのこと、ずっとずっと大好きでした!」




