第弍拾玖話「オルゲンロートリッター」(前編)
「はああああああああッッッ!!!」
俺はブーストをかけて200m級レヴナントに急接近を仕掛ける。
周りからは一つの光がその巨体に立ち向かっているように見えた。
だが一人の人間が抗うなど無意味なものだと思われていた。
しかし、そんな状況でも希望をもつ者はいたのだった。
「三木......師匠の分まで頑張ってくれ......!」
「ヒロ君、頑張ってください」
「三木さん、私は貴方のことが__」
「三木殿、そなたならいける......!」
「三木君、応援してるからね!」
「ここは三木に賭けるしかないのね」
「三木祥、全ては貴方に任せました」
その7人はあの機体を装着している人が誰だか分かっていた。
俺は200m級レヴナントの背中に飛び乗った。
持続的にブーストをしてホバリングをしているおかげで、足をとられることはなかった。
「どこだ......? どこにコアが......!?」
ひたらすらコアがある部分を探すが中々、見当がつかない。
しばらくさ迷っているとアナウンスが入った。
「拠点まであと2kmを切りました。各自避難してください。アーマードは全機、撤退し輸送機に乗り込んでください」
冷や汗が走る。
俺の手は震えていた。
「くそッ......ここは落ち着けッ! 落ち着け、俺ッ!」
それでも弱点が分かるわけはない。
俺にはやはり何も出来ないのか、そう諦めかけ目をつぶってしまう。
「ごめん......俺、やっぱ__」
その時だ。
まばゆい光が暗黒を突き破ってくる。
その瞬間何かが俺に宿った感じがした。
「......ここだ」
俺は200m級レヴナントのとある部分に目を移す。
その部分にコアがあるのだと俺には分かる、そんな気がした。
いや気がしたのではない、そこにコアが必ずある。
そしてその部分まで移動した。
「うおおおおおおおおおおッッッ!!!」
咆哮をあげながら二本のソニックブレードを思いっきり強く突き刺した。
だが前と同じように厚く硬い層が行く手をはばむ。
持ち方を変えてブースターの出力を最大にした。
しかし層は貫けない。
更にそうしている最中、突如としてブースターが停止した。
「何ッ......!? まだ燃料は切れてないはずなのに......!?」
ガチャッガチャッと機体を動かそうとするも動く気配はしなかった。
ブーストが出来なくなったため、脚部が徐々に体内に吸い込まれていく。
「くそッ、くそッ、このままじゃ......!」
せっかくあともう少しというところなのに機能停止してしまい、悔しい気持ちでいっぱいだった。
***
「__おや、貴方は逃げないのですか? Ms.長谷」
とある男が長谷教授に話しかける。
「ええ、だって勝てるのだからね」
「......ほう、それは失礼。そういえば例の新機体がフリーズを起こしたそうですよ。何やらブースターどころか機体自体が動かないらしいです」
しかしそんな言葉など耳にせず、長谷教授は何も言い返さずに歩き続ける。
「......このままでは負けますよ? 本当にいいんですか?」
長谷教授はピタッと足を止める。
その後、その男に向かって振り向いた。
「世間一般では貴方のしていることはしつこいと言うのよ。まぁ、手はあるわ、南条君」
「おや、私の名前を覚えてくれていたのですか」
「だって私の元助手じゃない。それぐらい覚えているわよ」
「はは、確かにそうですね。ところでその手というのは一体......?」
長谷教授は内ポケットから用紙の束を取り出した。
そしてそれを南条に見せる。
「__ほう、これですか......噂程度にしか聞いたことはありましたが、まさか本当とは......」
「残念だけどまだ開発途中なんだけどね。三木君には私の実験体になってもらうわ」
「三木祥、彼にですか......彼もまた悲劇を被った少年になってしまうのが少々致しがたいことですが、仕方ないことですね。いわゆる運命ってやつですか.....」
南条は警告音が鳴り響く場内にて、ポケットから取り出したタバコに火をつけ吸った。
「さあ、見せてもらいますよ三木祥君......」
***
機体が200m級レヴナントに腰まで浸かってしまった時、いきなり再起動しだし、背部が変形して新たな二対のブースターが露になる。
「......何が......起きたんだ?」
困惑していると何かが目の前に映り出す。
画面には赤い文字でこう書かれていた。
「オルゲンロートリッターシステム作動」




