第弍拾捌話「もう一度」(後編)
「200m級、拠点まであと10kmを切りました。避難レベル4到達、各自準備をしてください」
アナウンスが聞こえる。
「......もう、ダメみたいね。三木君、私達の負けよ」
長谷教授がため息をつく。
「......いや、まだ負けてません」
俺はそう口にした後、ゆっくりと起き上がった。
「あら、おはよう。よく眠れた?」
「ええ、なんとか。元の世界であいつを倒すために色々して来ました」
「でも、もう遅いわ。早く避難を__」
「俺にあの機体を出してくださいッ!」
そう俺が叫ぶとシーンと静まった。
しばらくして長谷教授が口を開く。
「どうやらお見通しのようね。いいわ。私が格納庫の電源を落とすからその間に装着してちょうだい」
「了解」
その後駆け足でドアから出た。
俺は走る、走る、ひたすら走る。
ぶつかって転びながらも格納庫を目指した。
そして例の機体の前に着く。
「はぁ......はぁ......これが新機体__」
「『武月』......!」
その瞬間、照明が落とされる。
「どうした!? 何故消えたんだ?」
「分からない、誰か様子を見に行ってくれ!」
作業員達が混乱している最中、俺はそのアーマードを足から順番に装着していく。
最後に頭部ユニットをはめた時、照明が付く。
画面は徐々に明るくなっていき、生体認証が終わると出撃準備に入る。
「何!? あの機体が出撃するだと!? 誰かいるのか!?」
「おそらくさっきの間に装着したのだと思われます」
「くッ......出撃中止ができませんッ! あと三秒後に出ますッ!」
俺は一度目をつぶり深呼吸した。
そして仲間のことを思い出す。
「俺......行くよ......! 三木祥、出ますッッ!!!」
ブースターが起動しだし、空へと高く飛びだった。
その速度は今までの機体と違った。
後ろから幻月が数体追いかけてくるがブーストを最大出力にした瞬間、一気に距離が遠のいた。
そのまま200m級レヴナントの元へ向かう。
オペレータールームは新機体が急出撃したことにより更に慌ただしくなる。
「......やってくれたな、三木祥」
「ほほっ、ま、いいではないか近衛正嗣司令官殿」
軍部総司令官、近衛はモニターから目を離さなかった。
明星副司令も同じくモニターを眺めた。
その時ドアが開き、オペレータールームに長谷教授が息切れをしながら入ってくる。
「はぁ......はぁ......どうやら間に合ったようね......」
「およ、これは長谷教授。中々いい運動だったじゃろ」
「まあ、おかげさまでね」
「ところであの機体を彼に渡して良かったかの? アーマード総開発者、長谷麗子殿」
「......その肩書きはいらないわ。もう何年も前のことよ」
「何を謙遜するのじゃ? この世界の救世主とも言えるじゃろうが......」
「救世主、ねぇ......」
長谷教授は後ろを振り返りオペレータールームから出ようとする。
「......? 戦いの様子を見ないかの?」
「なぁに、結果は分かっていることよ。彼なら勝てる。だって__」
「__私が造ったアーマードよ」
***
三木がブーストをかけて目標の場所へとたどり着く。
「こいつが俺が倒されなければならない敵......」
俺は背部から二つのソニックブレードを取り出した。
最後の戦いが今始まる。




