第弍拾漆話「舞い降りたテンシ」(後編)
「着弾地点を確認、コアへの到達率を演算計算。オールクリア、発射します」
パァッッンッッッ
スナイパーライフルを二丁携えた機体はバイポッドやスコープを付けずに二体のレヴナントに向かって弾丸を撃ち込む。
二体とも同時にコアを貫かれ行動を停止した。
機体は行動が停止したことすら確認せず、撃った直後に他のレヴナントに標準を合わせる。
「なんだ......あの機体は......」
「着弾すら確認しないといい次々と狙うのは相当な計算がされてるに違いねぇ......」
「あの身のこなし、俺はどこかで見たことあるぞ......あの天才の装着者、近衛小夜だッ......!」
その機体を装着しているのは小夜だった。
「一気に二つのスナイパーライフルを扱うなんて、なんて動体視力なんだ......」
「あのスナイパーライフルってM42の試作カスタムじゃないか!? 確かあれは威力が大きい分、反動が馬鹿みたいあるんだぞ!?」
「何ッ!? まるで無反動に撃ってるように見えるぞ......? 一体どういうことなんだ!?」
味方は皆、驚きざわめく。
そんな時間が流れている間にも小夜は二体ずつレヴナントを順番に狙撃していく。
その時、50m級レヴナントがその場に浮いたままでいる小夜の機体を上から叩き斬ろうとする。
「危ない小夜ちゃんッ! 避けてッ!」
そう美月が叫ぶのは遅かった。
小夜は完全に真っ二つに斬られた__
ように見えた。
「__あと0.02秒遅かったですね」
小夜はそこにいた。
そして銃口を向けそのレヴナントのコアを撃ち抜く。
いつの間にかレヴナントの数は減っていた。
味方は勝機を感じ取り、複数がかりではあるが残っているレヴナントに集中砲火する。
レヴナントはほとんどが倒され、海岸の防衛に終わりが見えそうだった。
そう、あのレヴナントが来るまでは__
***
場所は移り変わり市街地中央、時は少し前に戻る。
多くのレヴナントが四国にあるヴィーバントの拠点を目指し進んでいく。
「クソッ......数が違ぇ......!」
太田は中央の防衛を任されていた。
だが最初の頃よりも圧倒的に数が増えている。
レヴナントを倒しても倒しても新しいのが湧いてくる。
後退を強いられながら戦うことに彼は屈辱を感じていた。
レヴナントと交戦している最中、後ろから他のレヴナントが襲いかかる。
「......ぐッ、やられるッ!」
しかしそのレヴナントは上空から弾丸を何発も撃ち込まれる。
レヴナントはドサッと倒れた。
「太田先輩ッ! 助けに来ましたッ!」
「その声、三木かッ! 感謝するッ!」
俺は自分の防衛地点での敵の数が減ったことで場所を変えると、案の定レヴナントはルートを変えて侵攻していたのだ。
これはゲームでも起こりえたことだ。
「ついに物量で攻めてきたな......三木、前線を上げるぞッ!」
「了解ッ」
俺はソニックブレードを装備し、道を切り開くために前方にいたレヴナントに斬りかかる。
ブーストは最大出力、少しでも有利にならなければならない。
太田も自動小銃K48で援護射撃を行う。
レヴナントの腕による攻撃を剣で弾き返す。
その直後コアを肉ごと斬り裂く。
返り血を浴びながらも突き進んでいった。
__そして一時間が経過する。
市街地に紛れ込んでいたレヴナントは一掃し、防衛は完全に成功となった。
なんだ......シミュレーションの時よりも時間は長いけど上手くいったじゃないか。
でも__
そう考えながらも俺は何やら不穏な空気を感じていた。
その予感はすぐに的中することになる。
「200m級を確認しましたッ! ただちに応戦を願いますッ!」
それは最後の戦いを示す代物だった。




