第弍拾漆話「舞い降りたテンシ」(中編2)
美月は激戦の中、一人でいた。
味方は燃料や弾の補充で一旦下がり、前線を維持するために彼女は戦っていた。
右手には自動小銃K48、左手には短機関銃MP67。
二つの銃で応戦していく。
味方の機体が来るまであと三分、ここを守り抜かなければならない。
だがしかし、状況としては最悪だった。
戦闘は既に六時間が経過していた。
こんなに時間をかけて防衛しているのにも関わらず、レヴナントは海から次々とやって来る。
当たり前ではあるがシミュレーションの範囲をゆうに越している。
そしてレヴナントの何体かが市街地に到達していた。
指がつりそうになるのを堪え、引き金を引いていく。
だがある時、弾が完全に切れてしまう。
リロード分のマガジンすらも一切ないのだ。
まだ味方は帰ってこない。
美月は焦る。
「どうしよう......これじゃ、市街地になだれ込んで......!」
そんな中、とある機体がこちらの元へやって来る。
「......!? まだ時間はあるってのに!?」
その機体は下がっていった味方のものではなかった。
「じゃんじゃじゃーん! 愛菜ちゃん参上ーー!!!」
「愛菜先輩......!?」
その機体を身にまとっていたのは愛菜だった。
「えへへー、新武装の整備が遅れちゃったんだー」
愛菜の左腕には鉄の筒が四つ付いたものが装備されていた。
通常のものより長い弾丸がそこからはみ出ている。
更には胴体にも同じものが巻き付かれていた。
「その名も四連式ガトリング砲ちゃん! 相手をメッタ刺しにしちゃうよー!」
愛菜は四つの銃口をレヴナントに向ける。
そしてもち手を掴み構えた。
「死ねやオラアアアアアアアアアアッッッ!!!!」
銃口が回転し発射される弾丸の豪雨。
レヴナントからは血しぶきが飛び散る。
あっという間に海岸にいたレヴナントを全て撃滅する。
大地が黒い血肉で染まった。
「あれぇ? レヴナントちゃん達がいなくなっちゃったよー。愛菜、こわーい」
愛菜のその態度に美月はドン引きして、声が出なかった。
ちょうど倒し終わったタイミングで味方の機体が遠くからやって来る。
「おーい、大丈夫かー。今戻ったぞー」
こちらに手を振ってくる。
美月は手を振り返した。
「......これを一人でやったのか。流石、新兵器といったところだな」
「えへへー、良かったね、ガトリング砲ちゃんー」
愛菜はよしよしとガトリング砲を撫でた。
「とりあえずこの場所の防衛は完了した。さっさと市街地へと___」
しかし、まだ終わらなかった。
皆は絶望した。
海から上がってくる奴らがまだいたのだった。
「......どうしてだ!? もうレヴナントは全てやっただろ!?」
「こいつら、隠れてたんだ......! 他にも来るぞッ、前来、配置につけッ!」
海から現れ出たのは10m以上のレヴナントばかりだった。
大きくて60mほどの奴もいる。
美月は味方からマガジンを貰い、銃器にセットする。
そして戦いに挑んだ。
「はあああああああああああッッッ!!!」
ひたすら一番大きい60m級のレヴナントに銃を撃ち続ける。
しかし、弾は弾かれてしまい一切効果がない。
他の味方も苦戦し、レヴナントの進行は止まらない。
ガトリング砲もついには弾が切れてしまい、戦力は一気に下がる。
何も出来ないまま市街地への進行を許してしまう。
「まずい......このままじゃ四国がレヴナントの手にッ」
必死に抗う者、負けるとわかっていながらもガムシャラに撃ち続ける者、諦めて撤退しようとする者、様々な意志を持った者達が混じり合う。
その時だった。
一つの弾丸がレヴナントの背部に突き刺さり、コアを貫通する。
人々は空を見上げた。
上空からブーストしてレヴナントを見下ろしたその姿はまさに__
天使が舞い降りたようだった。




