第弍拾漆話「舞い降りたテンシ」(中編1)
__2010年5月28日
「......あのッ! 私と付き合ってくれませんか!」
「え......!?」
シミュレーションで練習してる最中、琴がそう俺に話掛けてきた。
あまりにもいきなりの出来事で俺はたじろいでしまう。
何もしないままでいると、琴は「あっ」と気が付き唇をギュッと噛んで言い直した。
「えっと、そういう意味じゃなくて! 特訓です! 特訓に付き合って欲しいんです!」
「あぁ、そういう事か。全然いいよ」
「......まぁ、別にそっちの意味でもいい......ですけどね」
「ん? なんか言ったか?」
「んー別にー」
フンと後ろを振り向きシミュレーションボックスへと入っていった。
「......俺、なんかしたのかな?」
***
「__きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
琴の機体は大きく吹っ飛ばされる。
「......まだです、まだ、負けてせんよ......!」
俺たちはまたリセットを選択し、最初から戦闘が始まる。
「おいおい、何度やっても同じこと......じゃないか?」
「いや、私は三木さんを倒すまで何度でも立ち上がります!」
「そうか......」
俺はハァとため息をつき、機体を発進させる。
結局この戦いも俺の勝ちとなった。
「__一旦、休憩しようか」
「は、はい......」
休憩所でジュースを選んで、椅子にちょこんと座っている琴に手渡す。
俺たちは互いにストローをジュースに差し込み、チューと飲んだ。
「......三木さん、やっぱ強いですね。やはり地下でずっと練習していたからでしょうか?」
そういやそういう設定だったな。
俺はストローから口を離し応えた。
「そう......かもな、でも他の皆も強くなっただろ。上達する方法を見出してひたすら努力するのがコツなんだ」
琴はうーんと首を横にする。
俺は続けてジュースを飲んだ。
「......そういや三木さんのタイプって何ですか!?」
「ん......? 好きな......タイプ?」
「はい! 好きな異性のタイプです!」
そこまで考えたことはなかったな。
俺はゆっくりと指を折り曲げつつ答える。
「一つ目、自分より背が低いこと」
「ほお!」
琴は目を輝かせる。
「二つ目、よく一緒で居てくれること」
「ほおお!!!」
更に琴は目を輝かせる。
「三つ目は......やっぱ、かっこいいところかな!」
「ほ......ぉぉ......」
琴はガーンと頭を下げた。
「ん? なんで頭下げてるんだ? 具合でも悪いのか?」
「イエ、ナンデモアリマセン」
「とりあえずさっさと特訓しようぜ。今度は俺から戦闘での立ち回りなんかを教えてやるからさ」
「はい!」
その日はずっと琴と二人で特訓をした。
当たればほぼ即死の二丁拳銃の扱い方と撃つタイミング、カウンターからの相手に必ず射撃を当てる方法などを一通り教えた。
他にもレヴナントの攻撃のかわし方、かわした後の動き方をみっちり教えた。
最後に対人戦をやった時は、俺自身かわしきれず被弾してしまいある程度ダメージを負ってしまった。
結果としては俺の勝ちだったが、琴は以前よりも強くなっていた。
「__今日は付き合ってくれてありがとう!」
「あぁ、西南部防衛作戦でも今日培ったスキルを上手く活かすことだな!」
「了解であります! 三木隊長!」
琴はその小さい手で敬礼をする。
「はは......隊長なんてまだまだだって」
俺はそう言いながらも敬礼を返した。
二人はぷッと笑みをこぼし共に自室へと戻って行った。
***
「あの時はずっと二人でいれて楽しかったな......また二人で居れるといいな」
琴は目を開け、港を守るためにトリガーを引く。




