第弍拾漆話「舞い降りたテンシ」(前編)
「黒より黒く全てを抹消せよ、ダークネスシューティングッッ!!!」
「......あぁ、ごめんね。確か琴ちゃんやっけ、気にせんでええで」
「あ、はい」
零士、茜、琴の三人を含んだ部隊は民間人を避難させるための防衛を任されていた。
元々は海岸または市街地での防衛をする予定だったが、別ルートに派生してやって来るレヴナントが発生したことより急遽派遣された。
三人を含んだ部隊は一斉に銃弾を放ち、この場所を守り抜く。
「......どうしてレヴナント人間を襲うのでしょうかね」
「ふん、それは定められた運命、抗えぬ__」
「えーとね、色々な説はあるけど、分かりやすく言えばレヴナントの移住先を確保するからというのが上げられてるねん」
「そう......なんですか......」
「まあ、今は目の前の敵をやらないとッ! 行くよ琴ちゃんッ!」
「はいッ」
レヴナントに向かって弾丸を撃ち込んでいく。
そんな中、少し色の異なるレヴナント達が後方に見えた。
「なんだ、あの紅に輝けるレヴナントは......」
「......強化態ね」
「強化......態......?」
「強化態、他のレヴナントより高い筋力と知能を持つレヴナントのことや」
「......なるほど、なら私行きますッ!」
琴はブースターを起動させ、強化態レヴナントの元へと向かう。
(少しはできるってことは見せないと......! じゃないと三木さんに......!)
強化態レヴナントが琴に気がつく。
「......この距離じゃ攻撃は届かないね。早速やるよッ!」
琴は炸裂式12.7mmフルオート拳銃を構え、銃口を向けるとすかさずトリガーを引いた。
しかし、強化態レヴナントは瞬時に加速し、鋭利なその腕で弾き返した。
「......ッ!?」
その後、脚力に力を入れ込みバネのように引くとこちらの方へと跳躍してきた。
丁度、琴のいる高さ25m程の位置に余裕で届いてしまう。
そして強化態レヴナントは刃状の双腕を振り下ろした。
あまりの速さに琴は思わず目をつぶってしまう。
その時、二機の機体が左袖から展開させたスティングナイフで攻撃を受け止める。
「フッ......俺たちを置いていくなんて、なんたる不敬......」
「琴ちゃん今やッ! うちらが止めてる隙に撃ち込んでやッ!」
「は、はいッ!」
琴はもう一度トリガーを引く。
二つの弾丸が強化態レヴナントの体に刺さり込んだ。
「零士、琴ちゃん、早く下がってッ!」
下がると同時に強化態レヴナントの体が弾丸を撃ち込まれた場所から徐々に膨張し、やがて紅い血肉と共に破裂する。
「フン、これが結束の力か......」
「危なかったわ......琴ちゃん、あんま無理しないでな」
「あぅ......すみません......」
「でもこのままじゃマズイねんな、とりあえず分散して戦おうか」
「了解ですッ」
三人は離れてレヴナントを迎撃することにした。
いっそう戦いは激しくなる。
琴が防衛を行っていると、強化態レヴナントが再び目の前に映る。
(味方を呼ぼうにもこの状況じゃ無理か......)
琴は二丁拳銃をリロードし、備える。
ほぼ同時に強化態レヴナントは襲いかかってきた。
(......速いッ! でもッ!)
叩き斬られる寸前、琴は左足を重心に180°回転させスレスレで攻撃をかわし、銃口を強化態レヴナントの頭部へと向ける。
その時間は1秒にも満たない。
「......これでも強くなったんだからね!」
銃声とともに強化態レヴナントの頭は撃ち抜かれ、その時に生じた隙を見逃さずコアのある胸部に弾を撃ち込んだ。
(ありがとう......三木さん......三木さんがいなければここまで強くなれなかったよ)
琴は特訓の日々を少し思い出す。




