第弍拾陸話「抗戦」(前編)
標準を合わせる。
引き金を引く。
この動作を何回も何回も続けていた。
「......キリがないですね」
「うむ、そうだな、透殿。やはり数が多い。だがここで撃ち損じては市街地に行ってしまう。ひるまず攻めるぞ」
「......はいッ」
スナイパーライフルでの撃滅に特化した集団、彼らは狙撃部隊と呼ばれ、二人はそこに派遣された。
木々で姿を隠し撃ち続けていた。
その時だった。
他の部隊から通信が入る。
「こちらD部隊、レヴナントに突破されてしまった。よってそちらのC部隊に加勢する。以上だ。」
それを聞いた味方は各々話し合う。
「やべぇ、E、F部隊も既に陥落したんだ」
「まずいな、まだ二時間しか経っていないんだぞ!?」
「時期にここも落ちるのも時間の問題だぁ」
「__皆、何を怯えているのだ。ここで弱っていては意味が無いだろうッ」
今宵は弱音を吐いている味方に喝を入れる。
「この声......あの東雲凛花分隊長か......?」
「否、私は東雲今宵。姉の真似事をしてしまってすまない」
「あ、あぁ、妹さんか。確かにここで弱音を吐いてればこの戦いには勝てないな。みんなッ、奴らを駆逐するぞッッ!!!」
味方は皆、「了解ッ!」と声を揃えた。
「......すごいですね、今宵さん、まるで東雲教官のような感じでした。」
「そうか、なら嬉しいな。私は目指しているのだ。姉のような頼りがいのある正義感が強い人に」
「なれますよ、今宵さんなら......!」
「うむ!」
またしばらくレヴナントを撃ち続けていた。
D部隊と合流してからも狙い撃っていた。
しかし、そんな時間は長く続かない。
オペレーターから通信が入る。
「10m級の変異種がそちらに向かって進行中、早急に撤退を願います」
それまで引かれていたトリガーが止まった。
「おい、聞いたか。10m級の変異種だってよ......」
「馬鹿野郎、普通に狙撃すれば余裕だろ」
「......おい、あれじゃないか!?」
遠くではあるが、蟻のような体に体の倍近くの長さの四本の足が生えたレヴナントがこちらに向かって迫って来るのが見える。
各自で狙撃を試みるもののその足の速さは尋常ではなく、標準が合わない。
それどころか瞬きするごとに段々と近づいてくる。
「くっ......みんな、撤退だッ! ここは下がるしかないッ」
味方はスナイパーライフルを片付け撤退の準備をし始めた時だった。
今宵が口を開く。
「私がアイツらを足止めする。だから皆はここで狙撃しろッ!」
そう言ったあと今宵は背部からソニックブレードを取り出す。
「む、無茶ですよ!? 相手は十体、あれを一人じゃ逆にやられちゃいますよ!?」
「言語道断ッッ!!!」
今宵はそのままブーストをかけてレヴナントに群れに向かった。
(私がやらねば誰が食い止めるというのか......!)
今宵は必死だった。
そして敵を目前とすることになる。
奴らは蹂躙するかの如く木々を踏みしめてやって来る。
今宵はソニックブレードを構え、レヴナントの真正面まで来た。
ブーストを更にかけて頭から剣を入れる。
そのまま胴体まで切り裂き剣を抜いた。
抜いた場所から黒い血が勢いよく飛び出す。
その後、そのレヴナントは進行を停止し、崩れるように地面に落下した。
残りは九体、味方のいる地点に到達するまではもう時間がない。
今宵は次の標的へと目を移す。




