第弍拾伍話「西南部防衛戦線」(前編)
「20km先レヴナントを確認しました」
「緊急アーマードの出撃要請を出しますッ!」
「民間人の避難が最優先だ。でないと間に合わないぞ!」
オペレータールームは慌ただしくなる。
「__さぁ......やってくれるかしらね。この世界の鍵ちゃん」
四国高知県、海岸、市街地にてけたたましいサイレンが鳴り響く。
東雲教官から通信が入り俺は目を覚ます。
「貴様ら今日がその日となってしまった。これから西南部防衛作戦に入る」
それから約10分間に渡り作戦の内容が確認される。
「__以上だ。今日まで短い間だったが貴様らはよく頑張った。この隊の教官になれて私自身心から嬉しいと思っている。そして最後になるかもしれない命令だ__」
「__生き残れ」
「__そして」
「殲滅せよ、この世界に巣食う化け物を」
俺たちはアーマードを身にまとい出撃準備を行う。
ハッチが開けられ、澄み渡る青空が視界に入る。
その青空は何もかも飲み込むようなほどの青だった。
俺は決心し、足に体重をかけブーストをかける。
それに続き他のみんなもブーストをかけた。
「三木祥、行きますッ!」
「犬崎琴、同じく行きますッ!」
「宇崎駆、行かせてもらうぜッ!」
「大宮透、出撃OK、出ますッ!」
「如月早苗、出る」
「近衛小夜、オールクリア、行きます」
「東雲今宵、参るッ!」
「高岩美月、行くからねッ!」
八機のアーマードが宇宙を駆け目的地である海岸へと向かった。
辿り着いた先にはまだレヴナントの姿は無かった。
だが海中へと向かって数多のミサイルや砲弾が撃ち込まれる。
他にも海底に設置されていた機雷がレヴナントに反応し爆発する音があちこちから聞こえる。
戦いは既に始まっている。
俺たちは各自決められた場所へと降り立った。
その時オペレーターからの通信が入る。
「あと十数分で敵が上陸します、全機武装の準備を」
俺は指示があった通り自動小銃K48を装備した。
他の仲間も同じく自身の武装を持つ。
「おっしゃああッッ! やってやるぜ!」
「駆君、少しは落ち着いたらどうですか」
「みんな、頑張ろうね!」
「そうだね美月ちゃん! 私たち勝つよ!」
「うむ、そうだな、琴殿。共に頑張ろうぞ。そうだろう、早苗殿」
「......分かってる」
俺たちは共に励まし合った。
そして通信が切れた。
心臓が鼓動する。
同時に冷や汗が走る。
シミュレーションではそんなことはなかった。
俺は今までにないほど恐怖を感じているのだろう。
だが立ち向かうしかない。
俺は銃を構えたまま、その地を踏みしめた。
場所は変わりオペレータールーム。
「__明星ちゃん、貴女は表に出るのかしら?」
長谷教授が明星副司令に問いかけると側近が彼女を睨みつける。
「貴様、明星副司令の立場を分かっての口調か」
「よせ、お主らは下がってろ。これはこれはうちの者が手荒な真似をしまってすまないの、長谷教授」
明星副司令は軽く会釈する。
「先程の話じゃが、わらわはいざとなったら表に出ようとしておるぞ。この怪我がなければ最初から参戦してたかの」
「そうなのね......とりあえず、あの子たちが頑張ってくれるを見守るしかないわ」
「......長谷教授」
「はい、何か」
「この戦い、お主は勝てると思ってるかの」
「......勝てないわ」
「ふむ、それはどうして」
「あの機体がないから、とでも言っておこうかしら」
「あの機体.....ーー月のことじゃな」
二人は戦闘が行われているモニターを眺める。
__ついにその時が来る。




