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3.校長ファリオン・ファルムス

「入りなさい。」

返事を聞きゆっくりと古めかしい木の扉を押す。ドアノブは金の龍の頭に、扉の中央には紋章だろうか。金字で龍の模様のような者が施されている。


校長室、その部屋は馬鹿広かった。

教室の2回りはあるだろうか。とても広い。

最奥に校長の執務机があり執務机から見て左側には窓が連なっている。右側には三メートルはあろう本棚が幾つも置いてある。だから古紙の匂いが強いのか。俺は本が好きだ。村でもよく読んでいた。だからこの匂いは、好きだ。

それにしてもこんなに高い本棚、どうやって本を取るんだろうか。踏み台も見当たらない…


「本が、好きなのかね。」


声の主、執務机の椅子に座っている老人。

伸ばした白髪にがっちりとした引退した身とは思えない体格。校長、ファリオン・ファルムス。

重厚で威圧感MAXの声。いや、扉の前で聞いた時よりいくらかは柔らかい、ような?


「そんな声をしておったか。柔らかめに声を掛けたつもりだったんだがな…」


えぇ、あれでも柔らかめなの。

……ん?なんで会話成立してんの。いや、会話は成立していないんだけど。

俺、校長室に入ってから声出してない…


「あ、あの。」


戸惑うアルトを放置しファリオンは本棚へと近づく。


「届かぬ本は…こうするのだ」


ファリオンが「魔術教本」と唱えると茶色く分厚い本が棚の最上段からふわふわとファリオンの元へ飛んできた。


俺のどうやって棚から本を取るんだろうか。という疑問に対して答えたのだろうか。

ということは。


心、読まれた?


「そうだ。お前の心を読んだのだ。私のスキル、『神耳』。相手の心を読む、というのではなく聞く、と言った方が正しいか。」


なるほど。俺が頭で考えたことがわかるのか。変なことは考えないでおこう。


因みにだが俺はこの部屋に入ってきてから一言も言葉を発していない。流石はテラネクス魔術学校校長のスキルだ。


「校長。『神耳』を使っての会話はお控え願えますでしょうか。私が会話に参加できかねます。」


あ、アリエル先生もいるんだった。


「おぉ、アリエル!ここでは、あれだぞ。校長なんて堅苦しい呼び名じゃなくても、お爺ちゃんで、いいんだぞ。敬語も要らんぞ!」


先程までの校長としての威厳はどこへやら。

一瞬で孫を愛でるお爺ちゃんだ。

アリエル先生と校長先生は孫と祖父の関係なんだったな。言われてみればキリッとした目元はよく似てるし同姓のファルムスだもんな。

敬語じゃないアリエル先生ってどんな感じだろう…見てみたい。


「生徒もいますのでできかねます。」


アリエルはピシャリと閉め捨てる。


ピシャッて音が聞こえた気がする。


「それに、金庫のことでは。」


アリエルの言葉で一気に空気が冷たくなる。

祖父と孫の暖かい会話がまやかしだったかのように。

温度計があったなら3度の低下は確認できただろう。


「そうだな……

アルト・レヴィータ。貴様は金庫で窃盗を働いたのか。答えよ。」


お爺ちゃんモードを消し、校長モードを取り戻したファリオンが正面から斬り込むように問う。

ファリオンから醸し出る威厳ある重圧。

これが王立テラネクス魔術学校校長か。



「いいえ。私は昨夜、自室で寝ておりました。」


やっていない。俺は盗んでいない。

だから迷いもなくキッパリと断言する。


数秒間の沈黙があった。

ただただ、ファリオンは俺の目を見ている。

何かを見透かすかのような、鋭い目。まるで鷹だ。


「そうか。わかった。貴様は盗んでいない。それは嘘ではなさそうだな。」


途端体の力が抜け強張っていた足に力が戻ってくる。『神耳』俺の思考を読む…いや、聞いてくれたのだろう。なんとか冤罪は免れた。

あぁ、そうか。アリエ先生が俺を校長室に連れてきたのは校長のスキルで俺の真意を確かめるためか。


「そうだ。私の『神耳』は人の考えを聞き間違えることはない。従って貴様は窃盗犯ではない。アリエル先生の推測は正しかったな。」


良かった。これで俺は今まで通り過ごせる。


「それはできん。」


俺の思考を読み、校長は無慈悲にも甘い考えを叩き割った。


何故だ。俺は何もしていないのだから何も…


「レヴィータ君、先程言いましたが職員会議で君の有罪が確定しました。処罰は、校長がお決めになられます。」


アリエル先生の言葉を理解するのに数秒の時間を要した。有罪?冤罪?


「え、は、え?だって、校長先生とアリエル先生は俺の無罪を主張してくれたんでしょう!?校長先生の意が通らないことなんてあるんですか!?」


思わず絶叫する。

こんなに大声を出したのは久しぶりかもしれない、


「すまんな。校長とはいえ多数決で2対18は覆せん…」


まぁ、なんて民主的な学校なんでしょう。


違う、そこじゃない。つまり、俺は冤罪…


「じゃ、じゃあ、俺はどう、なるん、ですか…?」


死刑?労働?いずれにしても退学は免れないか…


「その前に貴様にもう一つ問いたい。」


なんだ、何が来る。受け答えによってはこの場で首と胴がお別れすることになるんだろうか。

慎重に応えなくては…


「アリエルは可愛いか。」


質問の意図がわからなかった。だが良い。校長を前に意図を読み解こうとするなど無意味だ。

ただ、正直に答える。



「はい!」


「よしぃ!アルト・レヴィータ!貴様を停学処分で済ませる!!」


「こ、校長!?」


テラネクス魔術学校校長 ファリオン・ファルムスはシスコンならぬ、孫コンだった。

はじめまして!

葛切いつきと申します!

この度は初めて小説を投稿させていただきました。

拙く未熟な文章ですが楽しんでもらえたら幸いです‥!

励みになりますのでぜひブックマーク等、よろしくおねがいします!

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