表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

爆縮と体温の機知(10)

時計の中身

夕紅色が通り過ぎ

国道の車が忙しなく行き交う頃

豊かな形の街角

路地裏の一角に

染み付いた汚れの取れぬ人間の

吹出物みたいな溜まり場が出来る

馬券を見せびらかし

過去の武勇伝を語る者から

いつから飲んでいるのか分からない

半分くらい寝こけている者

禿げた頭を帽子で隠していたが

女性店員に揶揄い様に

帽子を取られてしまう者など

賑やかと混沌のおでんが

異様な空気感で煮詰まっていた


普通の人間は来ないが

近道として横目に歩き切ると

その先には夜桜のライトが

テンテンとし

ケンケンパの拍子が

聞こえてくるようである

ポツポツと人間が歩いていて

影になり顔が分かりを繰り返し

幸と不幸の間を

蛾がライトに向かって飛びながら

取り持っている光景

革靴と運動靴の間のような靴で

ゆったりと歩けば

万華鏡の中をトグルを巻きながら

進んでいるような気がする


歩き切った先の車止めを

ラジコンカーのように抜けると

繁華街の中心から

少しズレた場所に出る

遠くのネオンの中で

タクシーが客を待ち

戻ったような萎びたような

それでも表向きの元気さを見せており

空元気になるまいとしている

小さな心意気が感じられた

強さの形が如実に出るから

今の活気には

少しづつ安心が存在するのだろう

安全とを天秤に乗せて

どちらが良いかを比べている


背にしながら

見慣れたコンビニに立ち寄り

ビニール袋を片手に

三階建てのアパートの一階

奥から2番目のドアの鍵を開ける

昼間の生温さが

いつの間にやら

おかえりの声になっているようで

少しだけ窓を開けて換気扇を回し

作業着を脱ぐと

時計を見てから洗濯機を回した

自宅に帰ってくるだけで

回すものが

いつも増えてしまう

元より日常を回しているが

時計の内部にある小さな歯車が

今、音を出して

回っているものかもしれない

自身も歯車を使っている

自身も歯車になっている

バランスが取れなければ

ただの日時計になるのだろう










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ