異世界転移 〜答えは全て「YES」のみ〜
なんか思いつきで描いてみました。小説を書く技術はヘナチョコさんなのでアドバイス等あったらぜひぜひ
ん、ここは……?
目を覚ますと高さ十メートルはあろう天井が目に入る。
「知らない天井だ」
死ぬまでに言ってみたいセリフ第五位を言うことが出来るとは。幸せな人生だった、俺はもう死んでもいいかもしれない。ありがとう父さん、母さん、こんなバカ息子を育ててくれて。俺死ぬ前にあのセリフを言うことができたよ。ありがとうっ!
「目が覚めたか」
俺が脳内で父さん母さんに別れを告げていると声がかけられた。体を起こし声のした方を向くとそこには……!!なんかおっさんがいた。年齢は……見た目からして四十代後半から五十代前半くらいだろう。
というか、おっさんすごい格好してるな。赤い服着て王冠被ってるぞ。いい歳してコスプレか?
「おっさん、なんでそんな格好してんだ?てか、ここどこ?」
「おい!国王に向かってなんて事を!無礼だぞ!!」
声のする方を向くとそこには何人ものおっさんがいた。おっさん多すぎね、ここ。
てか、何?国王?あのおっさん国王だったの。え、国王?え?
「ここは『ヒューズ王国』である。異国の勇者よ」
え、俺勇者?
「えーっと、ヒューズ王国とか異国の勇者とか何?」
「うむ、それも含め話をしよう」
国王のおっさんが語り出した。
曰く、ここヒューズ王国は魔王領と隣接しており、昔から魔族との争いがちょこちょこ起こってたらしい。当然魔王領には魔族を統べる魔王がいる。先代の魔王は五十年前、なんか腐ったもの食って死んだらしい。
嘘だろ魔王。
そして先代の魔王が死に、魔族の勢いが衰え、最近まで魔族との争いはなかった。ところが三年前、再び魔王が誕生した。その魔王は先代の魔王より数十倍も強く、先代の魔王がいた頃より魔族の勢いがすごいらしい。手がつけられなくなる前に魔王を討伐してしまおう。そう考え、一年前、国の精鋭を集め魔王討伐へと向かわせた。誰一人として帰ってこなかった。
「異国の勇者はとんでもなく強いらしいって言い伝えがあっての。うちの戦力じゃどうにも出来んから召喚しちゃった」
なんって傍迷惑な!てか、急に口調変わりすぎだろ。気持ち悪!
「いや、俺剣とか魔法とか使えないんだけど」
「それは騎士団団長と魔法団団長の指導を受けさせるつもりである。なんの準備もせず討伐に向かわせてもすぐ死ぬことくらいは分かっておるからの」
「ほんとにそれくらいで魔王を倒せる程の実力を俺は持てるのか?」
「うむ。勇者は一般人の何百倍も成長が早い。恐らく倒せるじゃろ」
「それで、俺は魔王を倒したら元の世界へと戻れるのか?」
「正直ワシらではどうにもできん。帰る方法なら魔王が知ってるであろう。恐らく」
いやあのさっきから適当すぎません?
「では、魔王討伐よろしく頼んだぞ」
「え、いや帰れるかわかんないのに命かけるとか普通に嫌なんですけど」
「よろしく頼んだぞ」
「は?いやだから」
「よろしく頼んだぞ」
「いや、だかr」
「よろしく頼んだぞ」
「……はい」
こうして俺は魔王討伐をすることになった。まじなんなんだよあいつ!!
「我輩がヒューズ王国騎士団団長 オリバーである!」
召喚された翌日から訓練は始まった。
「君が召喚された勇者か、ふむ小さいな」
「は?」
え、いや何この人。出会って三秒でバカにされたんですけど。てか別に俺小さくねえし、平均よりたった!たった五センチ小さいだけだから!小さくねえから!
「それに細すぎる!まずは筋肉を付けるところから始めるぞ!」
さっき国王と会話してる時も思ったけど、この国の人みんなガタイ良すぎないか?みんな百八十超えてたと思うんだが。もう俺いらなくね?こいつら自分で魔王倒せんだろ。
「ではまず、この訓練場を五十周するところから始める」
「え?」
今なんだって五十周って言ったか?……まさかな。ナイナイ無理無理。
「すまん今なんて言った。悪いななんか耳がおかしくなっちまったみたいでさ。あんま聞こえなかったんだわ」
「うむ、ではもう一度言おう。ここを五十周してこい」
「いやだから無理に決まってんだろうが!!!!」
どんな無茶振りだ!一般人にこんな広い場所五十周させるとかイカれてんじゃねえの!?訓練するにしても最初は軽くって知らんのか!ウォーミングアップでバテるぞ!
「ふむそうか、では五十周してくるのだ」
え、何が「ふむ、そうか」なの?何も分かっていませんよね?とりあえず腕組んで見下ろすのやめろよ。でかいんだよお前。
「いやだから無理だろ。もっと減らしてくれ」
「五十周だ」
「なあ、おい」
「五十周だ」
「だかr」
「五十周だ」
「分かったよ!!行ってくればいいんだろ!?」
なんなんだよこの国!国王も団長も人の話を聞きやがらねえなおい。こんなんが国のトップで大丈夫なのかよ。
「ハァ…ハァ…ご、五十周してきたぞ」
本当に五十周させられたよクソッ!!
あ、ちなみに三十周したあたりから意識が遠くなって、四十周する頃にはゲロゲロパーティーでした。
「では次は素振りだな」
そう言うとヒョイと真剣が俺に投げられた。
「あ、危ねえ!!真剣なげるとか頭おかしいんじゃねえの!?」
なんとかして刃の部分は触らずにキャッチできた。てかこれ重!!なんでこんなもん片手で軽々投げられんのあいつ。ゴリラかよ。
「素振りはこうするんだぞ」
そう言うとやたら堂に入った構えをする。剣を振り上げ、次の瞬間ものすごい風が俺を襲った。
「分かったな」
は?いや、「分かったな」って。あんたの振り速すぎて何も見えなかったんですが?何を理解すればいいの?教えろよ。
「おい待て、何も見えなかったんだが」
「素振りなど誰にも教わらずにできるだろ」
ンなわけあるか!!俺がやっても剣を振り回すガキにしかならないに決まってんだろ!てかじゃあなんでお前俺に見本見せたんだよ、意味ないだろ。
団長がこんだけ剣技すごいならマジで俺いらなくね?このおっさんだけで魔王ヤレんだろ。
「なあ、ひとついいか?」
なんだ、と団長は続きを促す。
「あんたクソみたいに強いんだから、別にこの国の戦力だけでも魔王倒せんじゃねえの?」
「ふむ…勇者は魔王がどれくらい強いのか聞いてないのか」
「先代よりものすごい強いとしか」
「魔王は、そうだな……ざっと我輩の一万倍は強いな」
「Oh......」
思わず息子が縮み上がる。
『パパ、僕怖いよ』
『大丈夫だ、パパがお前を守るからな。一回も使わず死ぬなんてパパも絶対に嫌だからな』
「おい勇者、早く素振りをするのだ。千回」
「……っは!」
あまりの絶望にトリップしていたようだ。
「ん?千回」
「そうだ」
ハッ!またバカな事を言ってやがる。無理だろ。
「なあ、さすがに千回は多すぎだろ」
「魔王はすぐそこまで迫っているのだぞ!!甘えた事を言うな!!この国がどうなってもいいのか!!」
団長様大激怒。
いやあの俺ここの国民じゃないんすけど。昨日来たばっかりなんですけど。愛着とかゼロなんですけど。
「いいからやれ!!!」
ああ!もうやってやらあ!!
「オラアアアアアアア!!」
ひたすらに剣を振る事一時間。素振り千回は無事終わり、午前の訓練は終了した。“午前”の訓練が。
「こんにちは。私は魔法団団長のエミーよ」
クソみたいな午前の訓練が終わり昼食をとった後午後の魔法の訓練が始まった。
講師は若そうな美人な先生だ、さっきよりも全然やる気が出る。ヤる気も出る。
「ちなみに魔法で容姿を変えてますが、私の年齢は七十七歳です」
訂正。ただのBBAだった。
「勇者様はこちらに来たばかりで魔法を使えないという事で、今日はとりあえず魔法について知ってもらおうと思います。ではこれを」
はい、と厚さ五センチ程の本が手渡された。表紙を見ると『魔法の起源』と書かれていた。
「良い魔法を使うには魔法を深く知る事です。ですので今日はその本を読破してもらいますね。ちなみに読み終わるまで今日は寝られませんので」
「え、今なんて」
あれ?また耳の調子が悪いな。はっはっは!今日の耳は悪さをするなあ。聞き間違いだらけじゃないか!
「ですから、読み切るまで眠れませんと」
「この量は多すぎやしませんかね!!!!!」
「頑張ってください」
「無理だって!!」
「頑張ってください」
「お前もかよクソ!!!」
なんで偉い奴らはどいつもこいつも話を聞かないんだよ!!無理だって言ってんだろうが!!
あ、ちなみに読み終わったのは日が昇る直前でした。マジ無理。
「今日はついに魔王討伐の日。ここまで長かったなぁ」
朝日を仰ぎながら感傷的な気分になる。
地獄の生活が五年続いた。どうやら国王の言っていた、勇者は成長速度が尋常でなく早いというのは本当だったようで、召喚されてから一年経った頃には団長格とほぼ互角、二年経つ頃には圧倒できるまで成長できた。
「よし、ちゃっちゃと倒して地球に帰りますか」
「うぁ……」
結果を言うと大敗した。手も足も出なかった。「また遊びに来いよ」と魔王には殺されず見逃してもらえた。完全に舐められている。敵として認識されていなかったんだ。
結果を国王に報告しに行く。
「魔王は……倒せなかった」
「そうかそうか、倒すことが出来なかったのであるか。ではもう少し団長達には鍛えてもらおうかの」
「え?」
嫌な予感がする。嘘だろおい、嘘だよな。そんなことないよな。
全身から滝のように汗が流れ、体の震えが止まらない。
「「あと五年頑張ろうな(ね)」」
後ろを振り返ると、満面の笑みで立っていた。俺のトラウマ、二人の団長が……。
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