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8、白の結晶と黄色の電気

ミドリ「『前回のあらすじ』です」



コラール「異災警察の目的は平和を守ること。その平和を守るための仕事の一つ『悪魔の肉片』を退治すること。その中に『悪魔の肉片』を作り出す根本の人々を捕まえることも仕事の内だ」


ミドリ「はい。人攫い事件でその『悪魔の肉片』を作り出す根本への手がかりを得ました。『悪魔の肉片』の実験は人々の平和を脅かす可能性を秘めた行為。早く見つけてそれを止めなければ」


コラール「今回は前回活躍できなかったシーナと黒羽が活躍する」


ルサ「あのぅ、私は?」


ミドリ「始めましょう!」


ルサ「ええっ、私は!?」



~8、白の結晶と黄色の電気~

 世界規模の大災害から十三年の月日が経った。

 悲惨な環境も現代の技術で颯爽と改善を加えて修復していく。元通りとなった道路は異災能力の攻撃を受けてもある程度は破壊されにくい。建築物もそうだった。

 だが一世紀前の写真と瞳の世界を見比べた時、そこに変化を見出すことはできなかった。

 我々は日進月歩で技術力を上げてきたがもうこれ以上の進化が見込めない。唯一の希望であった災害を止める技術も大災害によって打ち砕かれてしまった。

 窓ガラス越しに昔の風景を合わせても変わらない。

 いつの日かより革新的な技術が現れることを願ってただ外をぼんやりと眺めていた。



*



 外をぼんやり眺めて「強くなりたい」と独り言を呟く。

 ゆっくりと流れゆく様々な形の雲を追う。亀の形の雲。大分県の形の雲。女に飛ばされるオパルの形の雲。青い背景が雲を強調していた。

 さっきから呼ばれている気がする。

 おい、シーナ!

 そう思った時には何度も呼ばれていた後だった。すぐに呼ばれた方向を振り向いて返事をした。

 コラールはシーナと黒羽を呼んで話し始める。

「今から二人には調査しに行ってくれ」

 コラールは書類を見せる。そこには"カシオ株式会社"と書いてある。

「例の義手の件だが、そこは義手や義足の素材を作る会社だ。それに妙な噂も流れている」

 義手や義足を作るために必要な接着器具を作る会社。

 その会社の周りで度々発見される人影。真夜中に何かをしているようだ。しかし、誰かは分からないし目的も分からない。だから確かめにいくしかない。

 黒羽は無関心のようで書類を捨てていた。

「それでシーナにはこの任務の全権を任せる。黒羽に命令して任務を全うして欲しい。もちろん、由々しき事態となって大変な事態となれば全ての責任はシーナに被るからな」

「え、えええええ!」

 驚くことしかできなかった。

 先輩に指示を出して、もし何かあれば全てボクのせい。胃が痛くなりそうだった。

 それに新人であるボクが先輩である黒羽を指令していくことは今までの常識を覆すものだった。

「黒羽。この任務はシーナに任せてある。勝手な行動は(つつし)めよ」

「仕方ない。この地の武力王の命令だ。受け入れよう」

 厨二病発言。普通なら意味の分からない言葉だがシーナには理解ができた。コラールの命令だから仕方ない。と言うことだろう。

 雲は流れ青に染まる空が全面に現れる。

 (さえぎ)る雲はなくなった。天はシーナに行くように仕向けているようだった。



*



 穏やかな空気が流れ静けさが残る住宅街の中。

 例の会社は簡易的な看板を掲げた簡素な建物であった。

「黒羽さん、ここで待機していてくれませんか? もしも怪しいと感じたら尾行などをお願いしてもいいですか」

 まずはボクがアポイントを取った時間と場所に行って表面上の調査をする。ただ表面を繕って難を逃れようとする可能性もある。そのため予備として黒羽を待機させるのだ。

 黒羽を後ろ盾にシーナは前へ前へと歩いていった。


 内装は古臭くなく、しかし新しくもない。掃除は行き届いているようで(ほこり)は見えない。

 社員に連れられ応対部屋へと入った。そこで女社長が立ってお辞儀をする。それに返すようにお辞儀をした。

 世間話から入り手短に要件を伝えた。

 社員が部屋から出た。シーナは女社長と対面した。

「単刀直入に言わせて貰います。異災警察は『悪魔の肉片』を作り出した組織の存在を疑っています。悪魔への実験は人類を滅亡させる危険性のあるため犯罪として数えられます。最近起きた事件でその組織と義手や義足に関わる会社が関係あるのではないかと推察しました」

「なるほど。それでこの会社が疑わしいと……」

「ええ。妙な噂も流れてきていますし。そこで異災警察に警備させて貰いませんか?」

 社長は独りでに頷いた。

「なるほど。それは助かりますわ。私も困っていました。夜な夜な不審人物が目撃されていますし、不安に感じる社員もおられました。警備する件、是非お願いできませんか?」

 シーナは快く受け入れる。

 交渉は終わった。

 その場を後にしようとドアに手をかける。その時に横目で部屋を見渡し、気になる本を見つけた。"ワンピース"という昔の漫画だった。

 社長はその様子を見て笑顔でその漫画の一巻を差し出してきた。

「良ければお読み下さい。客間の方は空いておられますので」

 積極的に進める社長の行為に断れずそのまま本を持って席についた。

「ボクの仲間もこの漫画が好きなんです」

「そうですか。この部屋には他にも二十一世紀の漫画が揃っておりますので、良ければお読み下さい」

「ありがとうございます。すごいですね。ここまで揃えていて。二十一世紀の漫画を集めるのが趣味なのですか?」

 その言葉を聞いて社長は斜め下の方を向いた。

 空気が変わった気がした。

「ごめんなさい。揃えているのは"(いまし)め"のためです」

 その言葉を聞いて思わず聞き返した。

 社長は窓の向こう側に映る外の風景を眺め、口を開いた。

「今の時代とその時代はあまり変わっていないと思いませんか? 一時前は日進月歩していくのが常でしたが、今では進化は見られずにただ同じ日常を繋いでゆくだけ。何も変わっていない象徴的なものとして漫画を飾っているのです。私達は進化し続けなければならないのに。進化できないこの時代を戒め、私達の手で進化しようと志をたてるために」

 白黒の世界から色のついた世界へと変わった二十一世紀。髪による保存から機械による保存へと変わる。神の教えよりも科学的根拠が重視される。あの変わりゆく時代。

 一方、その時代から今の時代は全く変わっていない。そう思っているようだ。

 時代を経て様々な変革は起きた。同時に起きた災害もそうだ。

 しかし、それは進化ではない。変革だ。そういう解釈だった。

 シーナは何も変わらなくていいと思っていた。だから、その解釈に質問したくなった。

「進化しなければいけないのですか? 今のままじゃ駄目なんですか?」

「もし進化し続けなければ私達人間はいつか"○○族"に滅ぼされますわよ」

 その一言で話に終止符が打たれた。それ以上の会話は続かなかった。

 ネアンデルタール人の生き残り。人々は○○族と呼ぶ存在。彼らの存在は人々の奥底に脅威を感じさせていたことを否定することはできなかった。

 シーナは外からの光に打たれている社長を横目に部屋を出ていった。



*



 新月に近い大半が欠けている月。

 その月光の下で黒羽と話をしていた。

「この会社の見回りの許可がおりました。見回りはボク一人がやりますのでこの会社の周辺、町の見回りをお願いします」

 闇の中何か音が聞こえる。

 不気味な音だ。人の足音ではない。獣の足音だ。

 振り返ると(いのしし)がゆっくりと近づいてくる。汚れた様相を見るに野生の猪だ。

「最近ここから上岸の方で被害を出している猪です。下に降りてきたようですね。この猪については殺処分が認められていますので黒羽先輩、あの猪を殺していいですよ」

「ようやく黒羽の出番か。刀が(うず)いていたところだ」

 猪は殺気に気づく。殺される前に殺すという本能で猪は突進してきた。

 黒羽はいつの間にか刀を抜いていた。

 猪の背後に現れる。

 猪は力尽きて倒れてしまった。

 死にゆく命に背中越しで黒羽は言う。

影炎(ようえん)の世界で激動を放つ(くれない)()()()()』」

 猪の体の中に現れる氷の結晶。

 猪はその場に倒れて動かなくなった。

 切られた外傷はないのに死んでいる。黒羽は体内に氷の結晶を作って攻撃しているのだ。

 コラールに聞いた情報と重ね合わせる。

 触れている空間、刀で触れた相手の内部などに氷の結晶を作り出す。それを応用することで空を跳ぶことも体内に鋭い刃を作り出すこともできる。────強力な能力だ。

 能力も相まって戦闘力は高いが性格に難がある。ボクが上手く導いて指示すれば一万馬力だが下手な指示なら戦闘力を無駄にするだけでなく最悪の場合をうむかもしれない。

 絶対に上手く指示して導くんだ。そう心に固く決めた。



 月明かりが一人の男性を淡く照らす。

 会社についていた光が消える。それを合図に会社へと入っていく。

 抜き足差し足忍び足。周りを何回も何回も確認する。必要以上に確認した。

 しかし、そこに伸びる手。手が肩を捉えていた。

「そこで何をしているんですか?」

 細く白い華奢な腕が見える。斜め上に伸ばされている。背は低い。小さな女の子に見えた。

 格好は異災警察の服装を着ている。

 ヤバイという感情が襲う。

 逃げようといる方向とは逆に向かおうとした時、廊下を照らす電球と向かう方向からやって来た社長。

 彼は挟まれてた。

 社長は少し驚いていた。

「ま、まさか。最近不審な人物がいるって聞いていたけど、私のストーカーだったのね」

 シーナは社長と雑談をしていた時にストーカー被害で警察に被害届を出していた。そのストーカーは元交際相手だった男性である。

 挟まれたストーカーは体から力を絞り出す。そして、その能力で体を覆っていった。

 溢れ出す泥がコンクリートのように固くなっていく。

 月が雲に隠れ闇夜を照らす電球が頼りとなったが、どこか頼りなかった。



*



 まさか別れるなんて。

 彼女は会社の社長で忙しかった。それは理解している。しかし、それ以上に仲は良かったはずだった。

 ある日、彼女は何も言わずに合わなくなった。

 唐突に連絡が途切れ、連絡がつかなくなった。

 最初は忙しいからだと思っていたが何回もつかないと意図的だと気づく。

 意図的に別れようとしている。

 そんなこと心は許してない。

 だからこそ、何回も彼女のところへ言って話をきこうとした。

 何回も何回も誠意を見せていく。もう一度付き合うと言うまで会いにいく。

 しかし、警察がその行為を阻むようになった。

 仕方なく密かに行動するしかなくなった。会社終わりにコソコソ行動して会社を最後に出る彼女と会う。

 そういう作戦を繰り返していた。

 だが、実際に面と面を向けて話すのに勇気がなく対面できずにいた。

 そして、今日対面したものの警察が真後ろにいる最悪な状況。


 ここは能力を使って最強の防御力を見せ、隙ができた時に逃げよう。そういう作戦をとった。

 コンクリートのような泥を操る。

 その泥で最強の(よろい)を作った、つもりだった。



*



 大丈夫かな?

 そう思いながら窓の外に映る雲を眺めていた。

 ミドリは無意識の内に雲にシーナの残像を重ねて無事を祈っていた。

 ルサは仕事を放棄して外をぼんやりながめるミドリを不思議に思っていた。普通なら仕事に没頭している。少し心配になる。

「大丈夫? どうかしたの?」

「何も。ただ、シーちゃんは無事なのかなぁって」

 雲は相変わらず流れていた。



*



 体が泥で囲まれるストーカー。そして全てを泥で覆われた。

 そう鼻も口も────

 数秒後、彼は息ができずに苦しそうにする。無数に「ン」を言い続けていた。

 シーナは思わず、

「馬鹿なの?」と言い放ってしまった。

 瞳に映る死にかけの男。目の前で死なれても困る。警察として下手に出てしまって殺してしまった、とすれば責任は重い。この状況はとても困る。

 人が死ぬ三つの時間。三分間息ができない、三日間水を飲めない、三週間食べ物を食べられない、これで人は死ぬ。今回は三分間だ。

 早く呼吸ができるようにしなければ。

 タイムリミットはすぐ迫ってきた。


 能力の殻を消せばいい。手錠を当てればその殻は容易く消える。

 しかし、その手錠は車の中にあり、そこまでに行くのに二分は見積もる必要がある。往復合わせて四分。間に合わない。

 周りは廊下で武器となる武器はない。

 いるのはシーナと社長と、そして黒羽。

 腰に当てている七つの鞘。その一本には殺気を秘めた刀が刺さっている。黒羽ならこの状況を突破できる可能性が高そうだ。

 それではどうすれば殻を破れるのか。

 コラールから教えて貰った情報が頭を過ぎる。

 【氷】の種類。能力は〘結晶〙。氷の結晶。これを上手く扱えばいけるか?

 そうだ────


「黒羽先輩、口や鼻元の泥に向かって技をお願いします」

「そうか、まあ、おやすい御用だ」


 刀が顔を覆う泥を捉える。瞬く間に刀はストーカーの背後にあった。

「真冬の祭典に捧げられし鼻に咲く悲花(ひばな)(ポイン)(セチ)()』」

 鼻や口元の泥が凍る。

 そこにすかさずシーナのスタンガンが衝突した。

 氷は壊れ息ができるようになる。ここまで二分五十秒程度。ぎりぎりセーフというところだった。

 こうしてひとまず難は去った。

 一応ストーカーを署へと持ち運ぶことにした。ついでに社長にも声をかける。

「もし良ければ明日署の方へ来てください。お互いに話し合った方がいいです」

 シーナは続ける。

「ストーカーって面と面を合わせてきっぱりと断れば意外と解決するもんなんです。付き合える可能性があるからストーカーに走ってしまう場合が多いので。それでも駄目だった場合は我々警察を頼って下さい。きっと善処しますから。もし明日重要な仕事が入っていなければ来てください」

 その一言を言って去っていった。

 雲に隠れていた月明かりが再び空の下を照らし始めた。



*



「私達、もう付き合うことは絶対にありませんから!」


 その言葉が強く突きつけられる。

 今までの努力が崩れ去る。それにつられて体制を崩した。

 体全体を無気力で包まれた。しかし、前までのそわそわした感覚はなくなり心に余裕が生まれた。そういう感覚を与えていた。



 ストーカーはもうしなくなったようだ。お陰で仕事にもっと打ち込める。そう社長は言った。

 まだ一週間しか経っていないがもう彼にストーカーをする気は一切ないのが分かっているため安心感がある。

 社長は感謝として高級な品を異災警察に送った。

 高そうな封を剥がし箱を開くと、そこには六つの高級菓子とメッセージの書かれた紙があった。

 紙には社長からの感謝が述べられてある。

 ダイは言う。

「なるほどな。調査だけでなくストーカーの解決までするとはな。流石、シーナと黒羽だ」

 お菓子を見て言い放たれる。

「これはお前ら二人で食えばいい」

 黒羽は何も言わずに刀を研いでいる。「どうでもいい」という言葉が聞こえてきそうだった。

 シーナはそんなにもいらなかった。一つあれば充分であった。

「ボクは一つで充分です」

「そうか、じゃあ一つはシーナ、もう一つを黒羽。後の四つは……」

 周りを見渡す。

 ダイ、オパル、ミドリ、ヒデ、カヤ、ルサ。六人いて四つでは分けきれない。

「それじゃあ誰がこのお菓子を手に入れるか勝負だな」


 異災警察の部屋内で瞳から放たれる眩い電流と火花が散り放たれていった。

キャラ紹介

《シルフ》


(愛称):シル君

身長:30cm

性別:オス

特徴:丸っこい体で風の集合体。二本の太い腕がくっついている。語尾はカタカナになっている。元気っ子の小学生イメージ。

戦闘:自慢のパワーで物理的な殴りで攻撃。パワー系。

秘話:マスコットキャラを作る時に思いついた。バレーボールのマスコットキャラを参考にした。二体目も作りたく、戦い方を変えるためシル君はイシツブテみたいな形になった。


次は3時間後

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