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7、誘拐犯と裏社会(後編)

カヤ「『前回のあらすじ』です」



カヤ「人攫い事件への担当となった異災警察は囮作戦を決行。シーナが連れ去られましたが、敵の居場所を突き止めました。そこでオパル先輩が敵のボスを倒しました」


オパル「いやぁ、救った女性の蹴りもう一度くらいたいなぁ」


カヤ「勝手に食らっていて下さい」

カヤ「今回は私とヒデが敵の参謀と厄介な能力者との対決。シーナのいる部屋に辿り着いたミドリがそこにいたヘドニックとトレッドミルと戦います」


カヤ「ヘドニックとトレッドミルについては第4話を見直すといいですよ。それでは始まります」



~7、誘拐犯と裏社会 (後編) ~

 何が人を幸せにするのか。

 家族? 恋人? 仕事? 自然? 思うに、やはり「金」が人を幸せにする。

 茨城県の緑が美しい土地。

 優しい家族に恵まれ、好きな人と付き合って、優等生で、周りは自然豊かで。何もかもが満たされているはずだった。ただ、足りなかったものが一つ────金だ。それがなかったからか、何故か心は満たされていなかった。

 貧乏な家だった。

 成人して上京し、新たな生活。家族と別れ、彼女とも別れ、好みの仕事にはつけず、自然の貧しい生活。そこでの生活は辛く心を削り減らす日々だった。

 子どもの頃とは違って金はあるが、他にはもうない。しかし、それでもお金がすり減った心を満たしてくれた。そこで気づいたお金があれば何もかも買えるのだと。

 お金を好む人々に好かれ、キャバクラなどに言って女と遊び、自然ある場所には簡単に行ける。全ては金だと言うことを知った。


 パチンコ。天は味方してくれる。

 そこで得た利益を元手に悪の手に染まっていった。そうすれば、さらなる金銭が増えるからだ。

 ある日、トレッドミルと出会った。それと同時に相棒と思うようになっていった。

 地下深くに造られた実験施設。

 科学者たちは能力の使えないもの達が能力を使えるようにするための実験を繰り返す。

 異災能力者から手に入れた義手や義足を使うことで実験を成功させていた。

 そこに参加し、お金を貰う仕事。

 彼らは実験のため悪魔から『悪魔の肉片』を作り出すこともしていた。異災警察にバレる前に外に出てしまった悪魔の肉片の駆除をすること。そこでの報酬は目から鱗が落ちるほどだ。

 傍らには人攫い稼業に参加し、金集めを欠かせない。

 今まで何人もの女を海外に密輸して売り(さば)いた。今日、明日で一人の女を密輸し、一人はリーダーの奴隷にする予定だった。

 この仕事をやってて躊躇いはない。

 あるのは金が貯まるという感覚とそれによる幸福感のみ。

 目の前の異災警察にやられてしまったら、全ての財産が無に還る。それだけは避けたい。


 ヘドニックは地面を液状化させ、その中へと入っていった。

 敵対するミドリはリコーダーわ構える。すぐ近くには二匹の妖精が護衛していた。

 小さな光が勝負の幕を下ろした。



*



 張り巡らされた糸。

 炎の手刀で解けるのは証明済み。このまま一気に決めにいけば。

 ヒデは大きく腕を上げて炎を振りかざすつもりだった。

 カヤが袖を掴む。そのまま強く引っ張ったことで攻撃のカタが崩れてしまい、攻撃は不発した。

 それと同時に銃弾がすぐ真横を通過する。紙一重の距離だ。銃弾が進路にある髪を撃ち捨てた。

 オレンジ系のほんの数本の髪が宙を舞う。

 フードを被った男はヒデやカヤではなく、もっと別の方向へと銃を向けていた。

 銃が進む音が響く。まだ銃弾は止まっていない。

 何故────?

 銃弾は真っ直ぐ進むはずだ。そうすれば必然的に壁に衝突しこの部屋から消えるはずだ。

 なのに。


 カヤは物怖じしていない。何故か近くの糸を引っ張ったり押したりしている。

「ヒデっ! 右回り百度。手を水平にして上へ四十度。そこの糸を斬って!」

 声が聞こえる。しかし、内容がのみこめない。

 右に回転して半回転になりかけの所で止まる。そして、手を水平に伸ばした時にカヤが「遅いっ」と言われながら押された。

 彼女の手に銃弾が(かす)る。

 今も尚銃弾の進む音が鳴り響いていた。


「相手の方向が北。東西南北で言う。上下に関しては時計の針で言うわ。速くそこの糸を斬って。絶対におお振りだけはしないで!」

「どういうことだ。状況がのみこめねぇ」

 周りの糸に触れながら説明していく。

「この部屋は能力による特殊な糸が張り巡らされてる。そこに銃弾が触れることで軌道を変えているの。あの銃の威力は相当なもの。それが無駄になりにくいのがこのフィールドよ。もし一気に多くの糸を斬ったら、あなたは隙だらけになってしまうから、そこを狙われてしまう。私も糸がないと援護はできないし……」

 とりあえず分かったことは、銃弾が糸に当たって跳ね返っているということ。

 速すぎて見えない銃弾をカヤは見通しているのだ。

 フードを被った男は横にいる男に何か言い続けている。フードが銃弾の軌道を変えるため糸をどこに張るかを命令し、糸男が実際に糸を張るのだ。

 一方、こちらはカヤが命令し、ヒデが実行に移す。


 一本の糸を斬るという細かい作業。その作業をこなすために、小指だけを伸ばした。手には炎の針が糸を切ろうと燃え盛る。

「北北東、六時の方向。手前から二番目の糸」

 北北東。六時。二番目。

 速く

 ヒデは銃弾よりも先に目的の糸を切る。

 銃弾は敵の思い通りには動かなかった。部屋中を銃弾が右往左往していた。


 常に二手、三手先を読む。しかし、これはそんな悠長(ゆうちょう)なものではなかった。

 十手、二十手、三十手先を読まないとすぐそこに銃弾はいる。

 糸にぶつかって軌道が変わる。その次はどこに当たるのか。そして、どこに跳ね返りどこへ当たるのか。敵よりも有効な手の内を先に打っても勝てるかどうかは分からない。

 この勝負、司令塔にかかっている。

 糸は動いたり増えたり。そして、切れたり。

 ヒデは小指を振り回す。炎を(まと)った小指が糸を切っていく。命令された通りに動く精密さが頼もしい。


 カヤは変わらず声を上げていた。その時、カヤの太股(ふともも)を貫く銃弾。貫いても威力は落ちない。

 血の飛沫(しぶき)が近くの糸に吹き飛ぶ。赤い糸は液体を垂らしていた。

「北北東、全ての糸を切って────」

 その命令で指を三本加える。

 手のすぐ真横には炎でできた日本刀の残像が映っている。

 炎が複雑に張り巡らされる糸をたたっ斬る。


 銃弾がフードの男を狙う。

 黒い布を穿(つらぬ)く金色の(たま)。血飛沫を舞わせて壁へと衝突した。壁にめり込む銃弾。

 銃が落ちる音が響く。

 フードの男の腕から赤黒い血液が流れ落ちていた。

「油断大敵よ。私は()えて銃で撃たれた。もちろん、怪我をしても大きな被害にならないよう肉の多い所を撃たれたつもり。それに、大雑把に糸を斬らないと思わせていたところを()いた。残念だけど私()の勝ちね」

 銃弾はカヤが死角となり見えなくなっていた。単なる予想では保身のため糸を動かすと思っていたため予想外だった。その軌道予想は意識的に排除されていた。

 さらに、複数の糸を一気に斬ることはしてこないと思っていた。だから、対応に遅れた。

 敵にとって予想外なことを重ねることで一気に勝利を掴み取る。

 カヤの作戦が敵を打ち破ったのだ。


 ヒデはカタを構えていた。

 五本指の手のひらが糸男に向いている。手の横には燃える大剣の残像が見える。

 刹那。ほんの一瞬。

 糸男の後ろに瞬間移動したかのようだ。いつの間にかヒデがいた。今いる場所とさっきまでいた場所を繋ぐ一直線には焦げた跡が広がっていた。

 次の瞬間、糸男は倒れてしまった。

「安心してくれ。峰打ちだ」

 気絶した糸男。片腕を負傷して抵抗できないフードの男。彼らに手錠をかけてこの勝負はヒデとカヤの勝利に終わった。



*



 負ければ捕まり全てを失う。

 誘拐犯であるヘドニックとトレッドミルは早々戦いを仕掛けてきた。


 ミドリは風を扱い彼らの真ん中に突風を起こさせた。回避のためにバラバラの方向へと避ける敵。

 ヘドニックの方にニーちゃん。

 トレッドミルの方にシル君を戦わせる。


《当たらへん。攻撃が全く当たらへん》

「オラに攻撃は当だりはしねえべ」

 ニーちゃんは腕を砲台に変えて砲撃をする。強力な風圧が地面に当たるけど、液状化した地面の向こう側には全く届いていなかった。

 地面から顔を出したり引っ込ましたりする。

 攻撃が全く当たらない。

 油断をしていると彼はすぐ近くにいた。風の塊に向かって蹴り飛ばす。ニーちゃんは壁に衝突して軽い怪我を追った。

《ほんとこいつ、何やねん。少しぐらい当たってくれーな》

 それでも攻撃は止めない。きっと当たるのを信じて。

 風の砲撃は虚しくも地面にはばかられていた。


《力には自信があったんだけどナ》

 シル君とトレッドミルの肉弾戦が始まっていた。

 拳と拳がぶつかり。体と体が(ほとばし)る。

 トレッドミルの方が優勢のように見える。

《けど、ここで勝つからかっこいいんダ》

 拳が衝突し合った。

 シル君の方が力及ばずに壁に吹き飛ばされてしまった。

《まだだ。諦めるのはかっこ悪いからナ》

 まだ闘志の宿った瞳は死んでいなかった。


《仕方ない。一撃必殺見せたるわ》

 ニーちゃんは強力な一撃を放つため力を溜めた。その一撃はあらゆるものを吹き飛ばす。

 しかし、吹き飛ばすことで倒せるとは限らない。

 地面は今、海のような状態だ。海に向かって吹き飛ばす風を撃っても、ヘドニックはさらに下へと沈むだけであり、ダメージは見込めない。


《やるしかねぇナ。この一撃に全てをかけル》

 シル君は強力な一撃を放つため拳に力を溜める。その一撃はあらゆるものを粉砕する。

 といいながら、彼はそれ以上の力があるように思えた。

 彼は天井へと飛んで力をこめる。落下とともに威力を増していく。

 見た感じシル君の力では負けてしまう。

 直接の衝突では勝てる気はしなかった。



 風が舞い、笛の音が響く。

 ミドリは戦場の真ん中で笛を吹いた。

 リコーダーの穴を片指で全て埋めた。部屋の中には「ファ」低いの音が鳴り響いていた。

 この技はシル君、ニーちゃんの位置を入れ替える。

 ミドリの周りに緑色の風が流れ始める。緑色の円を描くようにミドリは回転した。

 瞬く間にシル君とニーちゃんのいた場所が入れ替わった。


 強力な拳が波打つ地面の中に入り込みヘドニックを捉える。そして、重い攻撃が彼にのしかかった。

 浮かび上がってきたヘドニックは白目を向いて眠っていた。


 強力な砲撃がトレッドミルを吹き飛ばした。拳ではどうしようもできない自然の力。その力で彼は飛ばされ天井に叩きつけられる。

 落ちてきたトレッドミルは動けない体を揺らして無念そうに唸っていた。


 すぐさま手錠で拘束し、シーナを解放する。

 この勝負勝ったんだ。


 希望の光を見て目を麗しているシーナ。崩れ去りながらミドリに抱きつく。そこに(さび)しく怖く哀しい気持ちだったことが伝わってくる。

 思わずミドリも抱きしめた。

 もう大丈夫だから────



*



 世の中は非情だ────

 人攫い事件の犯人グループを倒した。しかし、救えたのは二人だけだった。実はもっと他に拐われた人はいた。

 その人らはとっくに海外に飛ばされていた。

 もう警察の手では手に負えない。目を瞑って星に手を合わせることしかできなかった。


 人攫い稼業集団アジトでの戦い。

 無事犯人と思しき主犯格五名と従事していた人達を捕らえた。

 世間的には異災警察の勝利に終わっていたのであった。


 捕まえた彼らからはとても有用な情報が得られた。

 人攫い稼業よりもさらに悪の臭いがするものだった。

 彼らはとある研究所に所属していた。その研究所では能力の持たないものが能力を持つにはどうするのか実験する場所だ。それと同時に悪魔についても実験をしていたようだ。

 悪魔についての実験は法でかたく禁じられている。それだけでは収まらず『悪魔の肉片』をも作り出していたようだ。このことは非常に危険な行為であり、下手したら国、最悪世界を滅ぼしかねない実験でもあった。

 異災警察としては全力で止めなければならない。場所さえ分かればすぐに逮捕しにいく。

 が、肝心の場所が分からなかった。

 逮捕した彼らにも知らされていないようだった。まさに狡猾で穢らしい奴らだ。


 ミドリはこういう奴らのことが嫌いだった。彼らの存在が平和を脅かすから。監視されない闇にいる彼らが。


「ひとまず、関連ありそうな人物や場所を(しらみ)潰しで探していこう。オパルが何か気づいたようだ」

「そうだね~。もしかしたら、義手とか義足とかに関連する企業とか人物とかから探すといいかも知れない。何か引っかかるんだよね」


 ミドリは密かに心に闘志を燃やしていた。

 外には爽やかな風と荒々しい風が交互に吹いていた。


 その時「頑張らなきゃ」とどこからか聞こえた。

 ただ空耳だと思って見逃した。

 この事件がシーナに勇気を与えていた。地獄と直面し、そこから与えられた光。その光になりたいと強く心に刻む。



 ボクもきっと────

人物紹介

《岡田 秀》②


能力:炎の手刀

属性:炎

武器:────

戦闘:手のひらが炎の出る刀になる。その手のひらを動かして攻撃する。

災害:火事

秘話:元々は主人公の仲間兼ライバルだった。元の設定から変えたキャラが多い中、ヒデは全く変更されていない。


次は7:00です。

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