35、サイコパス
トソース「『前回のあらすじ』?」
瑞人「いやぁ、まさかモブである僕達にも出番が回ってくるなんてね」
トソース「伏線を投入する時に、ついでに使われたモブだからね。ほんとラッキーだよ」
野村「ああ、マリンの左腕の伏線と緑下隊や紅蓮会の伏線のために使われたことがどんだけ嬉しかったか」
1話のモブ「いやぁ、ワイもでるかな?」
トソース「名前もつけられてないし、無理じゃない。というか、誰?」
1話のモブ「ほら、あのワイセツしてた」
3人「「「ああ、わいせつモブ!」」」
猥褻モブ「わいせつモブ言うな!」
~35、サイコパス~
こんにちは、の嵐が止まない。
教室まで続く廊下を抜けて、教室へと入っていく。
窓側の席に座る一人の女の子。彼女が私に気づくと手を振って居場所を知らせる。
「おはよー。ジュナちゃん」
「おはよっ。リコっち」
今日もまた同じような一日が始まる。
変わりない日常に飽き飽きしながらも、友達と遊べることだけは退屈しなかった。
私達の通う小学校は全校生徒四百程度の少し小さな学校。一学年三十人クラスが二つずつ。上へと上がってもクラスメンバーの変更は全く起きることはなく進んだ。
伝統ある学校。木の板の上に座った。
その途端に遅れて二人の友達がやってきた。
「おはよぉ」「……。」
学校生活は基本私と友達三人の四人で楽しく過ごしていた。
四人で楽しく話していると二人の男の子がやってきた。その内の一人が私に近づく。
さっぱりとした表情で机の上に鉛筆を置いた。
「サンキューな。莉子のお陰で、リアルに助かった。ほんとありがと」
彼はアイト。私の好きな人。半年前に告白してから、付き合っている関係。
「もう授業始まるし、また後でな」
友達に恋人。変わり映えしない日常に味を醸し出してくれる。
その味を噛み締めながら、学校中に鳴り響く鐘の音に耳を傾けていた。
教室の前に置かれた時計。その針もいくつか進んでいる。
何回目かの鐘の音。
先生は私達を起立させ、お辞儀させ、着席させる。
今日の日直が忙しく黒板を消していく。他の人は自身の机を動かして三つの山を作っていた。
ジュナは袋から白衣を取り出して服の上から着ていった。
そしてそのまま、他の白衣を着た子ども達とともに教室から離れていく。
数分後運ばれてきたワゴン台。ローラーの回る音が教室の中に充満していく。
その音が止まると、今度は忙しない足音がする。
薄い青色のボックス。牛乳が入ったダース箱。銀色の箱。それらが用意された机に置かれた。ワゴン台のスープ桶の蓋が開かれる。
白衣を着た数人は教室の前でスタンバイをしている。
私達はトレーを持って列に並んだ。
トレーに置かれていく、味噌とともに銀色のアルミホイルで包まれた魚。その横に小松菜和えが添えられる。私はこの野菜が嫌いだった。いや、野菜全般嫌いだった。
適当に置かれる袋。その中にうどんが密封されている。
置かれる小さなうさぎ型リンゴ。ジュナは優しく微笑みながらそのリンゴを置いていく。
私も微笑み返しながらそのリンゴを受け取った。
給食で果物が出てくることは稀なため、この日のリンゴは相当嬉しいものだった。
注がれるカレー。置かれる牛乳。取っていく箸。
それらが乗ったトレーを机の上に置いた。
クラスのみんなが支給される飯を取り終えて、椅子に座った頃、「いただきます」のハーモニーが広がる。
その後はたまたまクラス一斉に、重なったうどんの投入の音。麺の半分が投入された。
目の前の席にいるジュナと、近くのクラスメイトを巻き込みながら楽しく会話していく。
食事は誰もが楽しめるものだと思った。
絶え間ない笑顔の連鎖が広がっていった。
楽しい日々。
そこに近づいていく不穏な予兆。
家に返ってテレビをつける。都内で暴力団の縁下隊と異災警察との抗争があったことを伝えていた。
あの事件の後からか、ほんの少しだけジュナに異変が起きたように思えた。彼女は異変を隠しながら日常を振舞っていたけど、長くいたから分かる。彼女が少し無理して日常を演じていることなんか。
その日は雨は降らないけど、雲行きが怪しい日だった。
太陽の日差しは雲で隠れてしまっている。
ジュナはこの日すごくおかしかった。いつもと……違う。
薄いピンク色と仄かな水色が合わさったピンクよりのランドセル。その中からラインの着信音がする。そこはジュナのものだった。
この学校でケータイは持ってきてもいいが、必ず切っておくことが条件だった。
ジュナは先生に怒られるな、と思いながら音のする方を見ていた。
彼女と先生がその音の場所にきて、確認をする。
「ケータイは切らなきゃ駄目だからな。気を緩めちゃいけないぞ」
そこに何の連絡があったのだろうか……
何故か笑っているジュナがいた。
「ようやくこんなままごとが終わる……。やっと動くことを決めてくれた」
嬉しそうな表情を浮かべている。
何か不穏な空気で肌がヒリヒリし始めていった。
「どうしたんだ?」
疑問に感じる先生。
「何でもないよ。先生って、最後に言いたい言葉とかってある?」
「最後に言いたい言葉か……。私なら無難に「ありがとう」とかかなぁ。どうして聞いたんだ?」
「先生、ありがとう、って言って」
「えっ、いいけど。ありがとう。けど、どうしたん……」
ジュナから流れ落ちるとても細い蔦。廊下を突っ切ってその蔦は教室全体に根付いていった。
蔦が先生を掴む。他にも近づいてくる植物。先生は植物の蔦に囲まれ見えなくなった。その植物は蕾のように見えた。
「ほんとに、退屈が終わる」
先生だけではない。クラスメイトのほぼ全てが蕾の中に閉じ込められていた。唯一、私だけが閉じ込められることがなかった。
壊滅した教室。
この様子に目を疑う。頭がこの状況についていけない。
「ジュナちゃん。これってどういうこと」
「ジュナね、ずっとこうしたかったの。けど、父上に止められてたの。ようやく、ようやくなの。これを認められたのは」
近づいてくる。思わず後ろに後退りしていた。
窓の壁にぶつかる。もう後ろには退けない。
教室の中にある蕾が開いた。その蕾は先生を閉じ込めてた蕾だった。その中に葡萄が一房だけ吊るされていた。それ以外は何も無く空洞だ。
その葡萄を取り出して床に捨てる。
「先生ってウザかったよね。リコっちもそう思わない?」
「う……うん。そうだよね」
声が震える。
心の中で思ったことではない。それでも、生きるために嘘をついて理解を表す。
「そうだよね。大人だからって偉そうに。ほんとにウザかった」
真っ白のシューズの底と横に紫色の液体が飛ぶ。ジュナは葡萄を踏みつけてグチャグチャにしていた。
「あとさ……」
二つの蕾が開く。
蔦を操ってその中にあったキウイとドラゴンフルーツを手に取った。
「リマっち、影でジュナの悪口言ってたこと知ってるよ。マユっちはリマっちの味方だもんね」
紫色の液体の中に緑色と赤紫色が加わる。マユコもリマも私の大切な友達だ。
液体は悪魔のような色合いとなっていた。
「ジュナちゃんの能力、聞いてなかったけど、能力って何?」
「ジュナの能力はね、人を果物にする力なの。ちゃんと食べれるから安心して。あっ、そうだ」
蕾が開く。今度はリンゴを手に取っていた。
床に悪魔の液体の跡。靴の跡がそこについていた。
手を伸ばせば体に触れる。
彼女はリンゴを手渡そうとしてきた。私はそれを受け取る。
「それは、リコっちの好きなアイト君だよ。好きだったもんね。リンゴになったアイト君を大事に食べてね。きっと美味しいから」
リンゴ。
頭の中でアイトとの記憶とを重ねていく。
脳の中にある糸が切れて意識が途切れてしまった。
学校にいた人々はたった数分にして果物になってしまった。一人を除いて、皆残ることなく────
その区から人が消えた。
突然現れた幾つもの果物は腹を空かせた小鳥につつかれていく。
不思議な現象は波のように押し寄せていく。
次の区画に向かって果物化の波は進んでいった。
不安で胸が膨らみ破裂しそうだ。止まれば動けなくなるし、涙も溢れ出しそうだった。
早足で通学路を進む。
至る所に果物が目に入る。その食べ物からは悲しい臭いが漂っている。
家の中は蔦に侵食され、所々破壊されて穴抜けとなっている。
母親は蜜柑に変わり果てていた。
目を向けたくない。
もう果物なんか見たくない。
家を出てひたすら我の道を進む。恐怖に任せて走っているため、それに意味はない。
怖くて。恐くて。こわくて。
どれぐらい走ったのだろうか。分からない。
走った先には……
斬られて倒れるジュナの姿があった。その場所へと近づいていく。
「ジュナはどうなったの? 果物にされた大切な人は元に戻るの?」
斬った男は冷静だった。
「その女は数多なる魂を葬った。神の代わりに、この黒羽が、天罰を下し、暗黒魔界に転送した」
両目が私を捉えている。
その目は哀れんでいるのか悲しんでいるのか、分からない。
ジュナの状況を確認する。息はなく、脈もない。もう死んでいる。
けど────
「どうしてっ。なんで、なんで。なんでリンゴは元に戻らないの!?」
涙が道に落ちる。
その水が流れゆき、植物の栄養となった。
一度、果物になった人々は元には戻らない。例え変化させた張本人が死んだとしても。現実はいつも残酷な道を通らせてくる。
絶望に打ちのめされる。
後々、会社にいた父も果物にされていたことが分かった。
たった一日で、大切な人を全て失った。
私の大切なもの────
そんな暢気なものじゃない。無くしてはいけないものをその日だけで無くした。一番大切な友達によって。
その日から、心の闇を消すために包丁を振るう。
絶対に無理な話。もしあの時私が武器を持って、ジュナが暴挙に出る前に殺せていたのなら。
その思いで刀を振った。
それが欠けた心を穴埋めする方法の一つだった。強い憎悪と悔恨、怨念が穴を埋めていた。
*
事情を聞いて、胸が痛くなった。
彼女に顔合わせする顔がない。そんな過去があるとも知らずに軽率な行動を取った自分を悔やむ。だから、同じ特別扱い。リンゴを削除。全てを毛嫌いするような表情。それでも異災警察にくる理由。
異災警察は彼女と同じような目にあったメンバーもいると言っていた。
ミドリさんは壊滅した祖国を見て、二度と同じような景色にしないために異災警察をやっているのだと。強い意志がこの活動を後押しする。
なら、僕はどうだ?
愚かな自分を更生させた異災警察に憧れたから? 中身は全くなかった。本当にこの職業につきたいのか。深く心の中が抉れていく。
映像を見る時間がまるまる消去された。
代わりに、急遽、仮試合を行うことになった。黒羽という男の頼みで変更したようだ。
体育館で刀を抜く黒羽。
それに対面しているのは気を取り戻した莉子。
二人は峰打ち免許を持っており、ここで戦うことを許可された。一方、自分はそれを持っていなくて戦うことは許されていない。
そもそも非行に走った自分が取るためには相当長い時間が必要となっている。
「なぜやらなきゃいけないのですか?」
仮試合に疑問を持っている。
「今宵、貴女の猛き成長が故ジョーカーに仇なすことができる存在になったか試したい」
その詞を聞いて頷いていた。
「分かった」
黒羽の一言が莉子の燻っていた心を。
彼女は穴あき包丁を二つ取り出す。その穴に紐を結ぶ。その紐が赤色に燃えだした。
「やはり、手の紋章は戦闘が原因か」
よく見れば莉子の両手は爛れている。包丁が燃えて炎が手に当たっている。その火が手を軽く溶かしているのだ。
「漆黒の王デビルの名の下に、始めよう。さあ、かかってこい」
莉子は素早い動きで、黒羽の背後に現れる。その俊敏さに感激した。自分ならそのような動きはできない。
焔を放ちながら包丁が首肩を狙う。
その途端、黒羽は莉子以上の俊敏さで莉子の後ろにいた。そのまま首に手を当てて気絶させた。
「勝負あった。暗黒の王デビルの名の下に、終わろう」
あれ? 暗黒?
さっきは漆黒だった気がする。それにデビルは王ではなくて単なる悪魔な気がする。
それは置いといて試合は終わった。黒羽の強さに感嘆するしかなかった。
火は近くにいたコラールによって消された。
悩ましい表情をしているように見える。
「はぁ、これ以上同じ技を使わせてはいけないな」
そう言いながら包丁を没収した。
「それに包丁は持ち歩いてはいけない。法に触れる」
この日の体験は幕を閉じた。
異災警察への憧れは増したし、戦いの高度さを知れた。意味ある一日だった。
帰り際に質問する。
夕焼け空の下で目の前のコラールが輝かしく見える。
「どうしたら異災警察になれますか? 僕は、人を殺めてしまいましたし、黒羽さんたちのように強くはないですし……」
「それらは関係ないよ。なりたいと強く願っていればいつかはなれる。異災警察に限ったことではない。可能性はゼロと思っても諦めずにアタックしていればいつの日か……」
強く願うこと。心の中で暗記した。
「異災警察はさ、皆平和のために戦っている。けれども、そうとはいえ、犯人との戦いで勝っても被害を食い止められるだけ、負けたらさらに失う。ハイリスク、ローリターンな仕事だ。それでも君はなりたいと思うかい?」
「はい。今はなりたくてしょうがないです!」
「そうか。異災警察はとても過酷で、危険で、理不尽で、あやふやで。だが、価値がある。自分は異災警察がいなければこの社会は成り立っていかなくなっていると思う。君が異災警察になる日を楽しみにしてるよ」
胸に宿る意志がより大きくなった。
その日の出来事を朝から脳裏に焼き付けていった。
人物紹介
《アーダナ・コラール》②
能力:能力上昇
属性:炎
武器:────
戦闘:体の中のエネルギーを燃やして増幅させることで身体能力を上昇させて戦う。戦い方はとてもシンプル。
災害:噴火
秘話:元の名前は確かアカオ?みたいな名前だった。宝石から名前をつける時にコラールに変わった。どこかで戦闘シーンでもいれてあげようと思ってたけど、何もなくここまで来てしまった(笑)
※ポイントがなく心が折れたため無期限無更新になります




