34、頑張れ!6期生
アワル「るんるんるるんっ。あわるんるん★チャンネル! だよ。今から『前回のあらすじ』について話していくよ」
アワル「前回の作品見てくれたかな? 見えない速さのボールを打つっていうチャレンジなんだ。そこで機械を使ってボールを止めようとするんだけど……」
アワル「詳しくはもう一度見てみてね!」
~34、頑張れ! 6期生~
韓国で起きた騒動。それよりも騒がしい気がするのは気のせいだろうか。
見知らぬ女が一人。見ず知らずの環境に無理やり連れて来られたのだろうか、少し苛立っているように見える。彼女はオパルと何か喋っていたが、唐突に強烈な蹴りを加えて帰っていった。
その様子を何変わらない日常として捉えている環境のせいで、周りは無関係とばかりにその様子をスルーしていた。
「行燈に照らされし一輪の……。ふっ、違うな。朧月の下、新光の瞬きに……」
朧月の下、新光の瞬きに、うんぬんかんぬん。
銀色の刀が電球の光を反射している。黒羽は必殺技(?)の詠唱をしている。厨二病の言葉に目をくれず周囲は自身の事に集中していた。
分厚い本が上へ上へと重なり、山のようになっている。その本を読み耽る。カヤはマーカーで線を引いたりして、本の内容を覚えようとしている。本を捲る音は騒がしい音の混沌に混ざっていった。
パソコンを打ちながら必然的に音が鳴る。
周りの雰囲気に影響されず独特なオーラを醸し出す。ダイはただひたすら目の前の課題をこなしていく。一人で事務仕事しない人の分まで担っているのだ。大変だ。心の底で頑張れと思う。
マリンはケースから何かを取り出した。玩具だろうか。大きな箱には「組み立て! 黒ひげ危機一髪」と書いてある。箱から取り出された中身はプラモデルのように緻密な部品が揃っている。
「お土産の黒ひげ組み立てセットですわ」
「それ、わざわざ韓国に行ってまでして買う必要あった?」
思わず口が開いていた。
マリンはひたすらその玩具を完成させようとした。部品が重なる音が混沌に吸い込まれていく。
帰国して早々、怒りの感情を顕にするヒデ。対面するルサも何故か怒っている。そして、我慢の限界が途切れたのか、お互いに蹴りあい始める。幼稚な争いの音が響く。
その様子を見て、何も感じなくなっている私がいる。
その後、コラールがやって来た。
彼の一喝で部屋が静かになった。
「はぁ」とため息が放たれる。それもそのはずだ。この様子を見れば常識的な人なら誰でも思う。
さらに遅れてシーナが入ってきた。
「おかえりなさい」
手を後ろで組んで笑顔を浮かべる。身の丈よりも長い服が、ワンピースのように風で揺らめく。
「ただいま、シーちゃん!」
喧嘩終わりのルサが近くにきた。
「ねぇ、聞いて聞いて。三人が韓国に行ってた間、六期生の愛称が変わったんだよ。シーナちゃんのお陰で!」
首を傾けた。
「シーちゃんが何かしたの?」
焦れったい表情を浮かべながら視線を斜め下に落としていた。シーナは恥ずかしそうに口を開く。
「何か、うん。任務に当たったら、そう呼ばれちゃった」
今までの六期生は"駆け出しの六期生"という愛称であった。その愛称はどのように変わったのだろうか。質問するとルサから返事がきた。
「今度からは駆け出しじゃなくて"頑張れ六期生"だよ」
「えっ、何でそうなったの?」
言わないで、と言いたげなシーナ。それとは裏腹に話されていく。
「そう。それがね、シーナちゃんが任務で犯人を逮捕しようとしてたら途中から国民の応援がついてね、最後には何とかギリギリ勝てたからさ、みんなから応援されるような愛称になったみたい」
「そんなに強かったんだ。その相手」
コラールが口を挟んだ。
「その件についてだが、そんなに強くはなかった。とりあえず、ミドリなら十分あれば片付くだろうな」
……。……なるほど。
力の弱いのを考えると納得がいく。か弱いシーナをとても可愛らしく思えてくる。
恥ずかしそうに振る舞う彼はもっと愛くるしく見える。
「そもそも、その六期生ってなんですか?」
「そういや、詳しくは言ってなかったな」
コラールは淡々と説明し始めた。
愛称がつけられ始めたのはいつかは分からない。いつの間にか、世間一般につけられていたのだ。憶測ではネット上でつけられた愛称が世間一般に広がったと考えられている。
六期生に至るまで全六つ。それぞれに行った偉業を称える愛称がつけられた。
一期生。
提唱の ─── 一期生。
大災害が起きてすぐ、一人の警察官が動き始めた。彼は異災能力での犯罪は今までの方法では対処し切れないことを述べ、異災能力で犯罪に対処すべきだと説いた。
異災警察の構想を立てた。
しかし、その案は実行に至る前に異災能力の混乱に巻き込まれて彼はお亡くなりになった。
二期生。
始まりの ── 二期生。
その案を継いだ二人のベテラン警察。その二人は彼の案に賛同し、実行に移すまで持っていった。
異災警察の基礎が築かれた。
ある日、異災能力を扱う犯罪者との抗争で一人が亡くなった。残された一人は非能力者であり、実際に戦うには力不足。仕方なく後世育成に移り、二期生としての活動に幕を閉じた。
三期生。
戦闘の ── 三期生。
三期生は異災警察加入後、すぐに活動していった。上司はその下の代の育成に傾いていて、三期生はほったからしていた。
異災警察を手当り次第でこなしていく中で、本当に求められていることを知っていく。
一年も経たない内に、急ピッチでルールを定めた。
異災警察のマニュアルが決められた。
三人は後世の世代の成長のためそれぞれ得意とする武術、剣術、銃術を徹底的に鍛え上げ、成長を見送った後に引退した。
四期生。
全国的な ── 四期生。
働きながら上司のお陰で仕事についてのルールが作られていく。そのルールに沿いながら異災警察の仕事をこなしていく。
先輩から受け継いだ、術を受け継ぎ個々で伸ばす。
その頃からようやく異災警察が知れ渡るようになった。武術のコラール、剣術のパパラチア、銃術のシロナ、戦術のレキ。四人の素晴らしい動きは東京に留まらず異災警察の全国展開を目指している。
五期生。
Dの ── 五期生。
ここまでは流れるように繋がれた。彼ら五人はしっかりと育成された初めての異災警察である。
が!
前科持ちのダイ、人の心を持たない黒羽、酒癖が悪く度々問題を起こすアカナ、女好きで仕方ないオパル。一人だけイエローという真面目なメンバーがいたが、評判はみるみる下がり、デンジャラス(危険)と世間の目は見ていた。
彼らによって異災警察は不名誉の称号である異災のD-ポリスとも呼ばれるようになったのだ。
暴力団との抗争で二人失った現在も異災警察で働いている。
六期生。
頑張れ! ── 六期生。
その抗争中、後に入った異災警察のメンバーが六期生と呼ばれている。最初は駆け出しの六期生と呼ばれていた。また愛称は変わる可能性が高い。
「ざっと、こんな感じだ」
「異災警察の悪いイメージは五期生からだったんですね」
ダイはため息混じりに口を開く。
「すまないな。……マジで」
「ダイが謝ることではないだろう」
コラールは話終えると忙しく部屋から出ようとした。
「今から異災警察の特別体験会がある。今日は訳ありの二人だけだが、未来の七期生になるかも知れない逸材だ。今から育てていかなければならない」
そう言って、早々と進んでいく。
すぐに彼の背中は見えなくなった。
「七期生か……。早く一人前になれるかな」
窓の向こう側には雨が降っていた。
梅雨の水がくだらない悩みを印象つけていった。
*
胸は真っ直ぐな槍に変わっている。熱い信念。異災警察になりたい意志は日に日に固まっていた。
前科持ち。
警察とは少し違った異端な存在だとしても、前科持ちが合格するのは相当難しい。
それでもなりたい意志だけは強い。
不合格を取り続けても、いつか合格をもぎ取るまで諦めたくはない。
今日は特別体験の日。
前科持ちのため特別な日に体験することになった。体験させてくれるだけで有難いと思っている。
横には制服の女の子がいる。機嫌悪い表情が外れていないようだ。
コラールという威厳ある警察官がやってきた。
いるだけで威圧に押し潰されそうになる。緊張が膨らみ、口と体は固くなっていく。
「私は異災警察のコラールだ。今日は異災警察の特別体験と言うことで、異災警察について知って貰おうと思っている。パンフレットは貰ってるか」
入り口で貰ったパンフレットを眺める。
異災警察の建物の中の見学。ただし、見学できる場所は決まっている。主に、何をやってるかの説明のようだ。
大半は建物見学だが、午後にはテレビで取った悪魔の肉片についてのビデオなどを見るようだ。
「今日は二人だけだし、最初に自己紹介をしよう。君からどうぞ」
そう言って指名された。
胸を張って自己紹介をする。
「御園トソースです。【水】属性で〘津波〙の能力を持っています。よろしくお願いします」
少年院に入った時、恩師と呼べる人に出会った。その人の名は御園串勝さんだ。名前は佐藤トソースだったが、佐藤の字はあまりにも嫌だったため、彼の承諾もあり御園という氏名に変えた。
四月頃、僕は多くの人を殺めてしまった。
父の肩代わりとなった借金取りにせがまれ、人生はどん底に。そこに追い討ちをかけに来た不審者によって、堪忍袋の緒が切れて、罪なき人を巻き込んで暴れてしまった。
今ではその罪を償いながらも、その時に憧れた異災警察になるために必死で努力をしている。
一度捻れた人生の道を、再びやり直すために。
続いて横にいる女の子が話し始める。
今も機嫌悪い表情は消えていない。
「赤城莉子。能力はない……」
暗いイメージを感じた。
何か暗い過去でもあるのだろうか。その過去を引き摺って、本来の自分を殺しているように見えた。
午前中は建物見学で終わった。
建物内部は初めて見たため、興奮が止まらなかった。
ただ、楽しい感情も横の莉子を見る度、すぐにクールダウンしていく。何故かつまらなそうな表情をしていたのだ。
見学も終わり休憩時間。
支給された弁当を開いた。
白い大地にずっかりと腰を構える梅干し。その様子を眺める黄色いたくあん。赤とオレンジの中間色のニンジン。緑深いブロッコリー。他にもドカッと構えて印象的なハンバーグ。赤い殻を持ったうさぎ型のリンゴ。
鮮やかなコントラストが弁当の中で描かれていた。
箸で摘んで胃袋の中に閉じ込める。
美味しさが緊張を解していく。
しかし、目の前にいる女の子は違った。食べ物では不服な表情は解されることはなかったようだ。
気まずいからか、気になってたからか、分からない。
莉子の笑顔を見たくて話しかける。
けれども、ぶっきらぼうな返しは来るが、それ以上の返事はなかった。
どうしたら笑ってくれるんだろうか。
その時、ミラクル食べ物パワーというパワーワードが過ぎる。食べることが嫌いな人はいない、はず。食べ物を通して仲良くなって笑わせよう。
まだ食べきれてないリンゴを差し出してみる。
何かの不手際なのか彼女の弁当にはリンゴが入っていなかったので、この場を借りて渡してみた。
体中の筋肉から力が抜けていくように、莉子は脱力感にしたった。
「あ、ごめん。リンゴは嫌い……だった?」
力が抜けていく莉子。と思ったら、次は頭を抱えてパニックになっていた。
唐突な発狂に狼狽えてしまった。何が原因でこうなってしまったのか、詳しい要因は分からない。
頭を抱え暴れていく。周りの椅子や机は蹴り飛ばされた。
一、二分経つと彼女の挙動は終わった。
立ち上がり、睨みつける。嫌気の度を超えた殺意を持った感情。気を抜けば、脳裏には死が浮かびそうだった。
反応できないぐらい素早い行動だった。
隠し持っていた穴あき包丁がすぐ首元にある。
彼女は穴あき包丁で首元狙って刺したのだ。
すぐ近くにいる異災警察の黒羽。眼帯で隠された失眼からその様子が見定められる。彼の刀が首に触れる。
首と包丁の間に挟まれた刀。彼のお陰で死を回避することができた。
息遣いが粗くなる。
同じくやってきたコラールがその様子を見て考察した。
「もしや果物を見せたのか……」
「……ごめんなさい。仲良くなろうと思って」
「まあ、仕方ない。普通は知らないしな。あの過去を……」
莉子は疲労で力尽きてその場に倒れた。
心に余裕が生まれていく。
緊張どころではなくなっていた。
足りない酸素を補うため部屋中の空気を思いっきり吸っていった。
人物紹介
《アーダナ・コラール》①
身長:186cm
性別:男
年齢:45
髪色:赤
所属:異災警察(4期生)
趣味:────
特技:計算すること
特徴:署のトップ。威圧感がすごい。彼がいるだけで安心感がある。
信念:争いのない平和
いし:コーラル(威厳)




