31、【炎】カンジョン タンユン
ヒデ「そういや、人物紹介の【】とか《》っとかって何か違いがあるのか?」
ミドリ「気づいた? 実は細かい決まりがあるのです!」
「」…味方、もしくはそれに近い、もしくは中間色
『』…敵、もしくはそれに近い
〘〙…悪魔
【】…ラベリング:ボス
《》…異災警察
ミドリ「基本的にこんな感じらしいよ」
ヒデ「へぇ、知らなかった」
~31、【炎】カンジョン タンユン
太陽の力を溜め込んだ旗を掲げる。
ついに決戦の日。
ちょうどその日に敵も動くようだ。
綿密に計画した作戦。青瓦台を、そこに匿われる人々を大本営の警察に守らせる。出兵するは軍隊。敵の本拠地向けて真っ直ぐ進む。タンユンは特別に軍とは別行動で敵に突っ込む。
針は戻ることなく進み続ける。
ヒデは警察とともに青瓦台を守ることになっていた。
緊張と興奮で体が硬くなったため、その場で体を軽く動かしていた。準備運動をしている時、タンユンが話しかけてきた。
「ソンジュン、託したいものがあるんだ」
そう言って、ペンダントを渡してきた。中を開いても何も写真は入っていなかった。白いガラスが入っているだけだった。
「それはただのペンダントではないんだ。ここ最近作られた最先端技術が入っているペンダントなんだよ」
「最先端技術……?」
「そうだよ。【炎】属性に限るけど、能力を道具に保存することができる技術なんだ。その中には私の能力が凝縮されて入っている」
この変哲もないようなペンダントにそんな力が……
「ただし、そのペンダントには注意事項があるからよく聞いていて欲しい。私の能力が入っていると言ったね。そのペンダントは壊すことによって、能力を発動できるんだ。それなら、町ごと周囲の生き物を気絶させる程の熱波が放たれる。もちろん、発動者は無事だ。けれど……」
タンユンは続けた。
「発動するためには能力を注いだ人物がこの世から去ってなければ発動しない。さらに、発動は一度限りなんだ」
そのペンダントは……
①能力を注いだ者が死んだ時に、②その道具を壊すことによって、③一度だけ発動できる。
「もし私が死んだら、そのペンダントを持っていてくれ。いつか君がピンチに陥った時に使って欲しい」
その言葉のたった二文字に苛立ちを感じた。優しさからくる苛立ちだった。
「「もし」なんて言わないでくれ。絶対に生きて勝とう! 生きて自由を、夢を叶えようよ」
「そうだね……」
時計の針は待ってくれはしない。
太陽はさらに上へと上がっていった。
*
月の力を溜め込んだロウソクを持って天にかざす。
ついに蝋燭による決起の日。
ちょうどその日に政府が動くようだ。
「打倒! 軍閥勢力」と掲げたキムル率いた国民達が仲間を増やすとともに武器や食料などを確保する。
直接政府に迎え撃つのはムヒョン率いる前線勢力。
本陣に身を構えるのはマリン率いる勢力。
ムヒョンやキムルが進んでから相当な時間が経った。
最重要のポストに身を構える。マリンは敵の動きや戦況を確認する。
政府側では、前線の布陣にいた軍隊が二つに分かれ混戦となっているようだ。軍には国民から徴兵された人々が大半だった。その人々が反乱を期し、政府に楯突いたのだ。
軍隊の勢力はその場で均衡を保ちながら死者や負傷者を増やしていく。
敵の勢力が削がれた。
蝋燭にとってまたとないチャンスであったのだ。
前線を掻き分けるムヒョル。
粉雪と仲間がそれに続く。
途中から塞ぐ警察はいなくなった。道端で倒れているのが見える。
戦場となったのを見て人々は家に隠れるか、蝋燭についていくため道には無関係者は立ち寄らない。
ねずみ色の道路の先に立つ一人の女。
代表者マリンの仲間であるミドリだった。
「ここから先は行かせません!」
二匹の妖精が彼女の周りを漂っていた。
ヒデかマリンか。
ヒデを選べばマリンが、マリンを選べばヒデが。どちらとも選ばなかったら争いに負けた方が。必ず不幸になる。
嫌われるかどうかなんてどうでも良かった。
私は単なる偽善者になりたい訳ではない。嫌われたくない、という本能よりももっと大切なものがあった。
二人が不幸にならないためには……
この争い。どちらとも負ければいい。二人が不幸にならなければ、二人からどんなに嫌われても目を瞑る。二人を思うなら今はそれしか方法がない。
「政府も蝋燭もどちらも倒して、争いを止めます!」
リコーダーが動かされた。
「ごめんね。部外者には少しだけ寝てて貰うよ」
猛吹雪が吹いたが、強烈な風によって雲散霧消となってしまった。
荒れ狂う風が吹雪の上塗りをするのであった。
*
グ ラグウェルは頭を悩ませていた。
タンユンの考えた作戦が今にも崩れかけている。
「くそっ、まさか軍隊の中で分裂するなんて」
その言葉に違和感がある。
軍隊が分裂して硬直してしまうことなんて最初から分かっていたはずだ。思い返せば何故タンユンは使えなくなる軍隊を戦闘に駆り出したのだろうか。
もしや……
タンユンは一人で決着をつけに行くのではないか? タンユンは死と隣り合わせの禁忌を使える。もしかすると……
分かるのは今はタンユン一人が敵に向かっている。このままでは死んでしまいそう。
「俺も前線に行って戦う。後は任せたっ」
「危険だ。なら、私が……」
「いや、ラグウェルさんはそこの指示塔を頼みます」
ヒデは急いでかけていく。
速くしないと……
死亡の旗は立っている。
嫌な予感が胸の内で渦巻いていた。
*
(妙だな。政府側が倒れているのに敵が見つからない。途中で出会ってもいいはずなのだが……)
閑散とした道を進んでいく。
気温が低下していく。が、それ以上に走っていくことによって体は温まっていた。
道に雪の跡がポツポツ見え始めた。
もしかしたら敵のリーダーであるムヒョルがいる。彼は手強い。決意を固めて進んで行くが……
ムヒョルは道の上に倒れていた。
警察も国民も皆道端に倒れている。
落ちゆく粉雪に打たれて一人の女が美しく映えている。
「やはり政府側の首も来ましたね……。この争いを止めるため、あなたを倒します!」
リコーダーを構える女の人。
彼女はヒデの友であり仲間であるミドリだった。
ミドリはヒデとマリンにお互い敵となる情報をリークしていた。そして、二人からそれぞれの作戦を聞いていた。
導かれたそれぞれの動き。ここでムヒョルやタンユンが来るのは分かっていたのである。
シル君が殴りにかかる。
その攻撃を避けて跳んだ先にはニーちゃんの放つ空気砲。タンユンは銃から炎の弾を繰り出し、その反動で攻撃を避けていった。
落ちる間際を狙ってリコーダーを振る。
彼は片手に持った刀でリコーダーに合わせてきた。
鉄の衝突する音がなった。
「龍の蜷」
回転が加えられる。無数の回転に熱波が合わさり、赤い竜巻が現れた。
危険を察知し距離を開ける。
竜巻は止んだ。
リコーダーを三つに分ける。そして、スナップを効かせて投げた。
リコーダーの真ん中、本体が真っ直ぐ回転していく。タンユンは斜め上に跳んで躱す。
そこを狙ってリコーダーの上部分、口をつける方を投げる。そのブーメランは刀で弾かれた。
間髪入れずに最後のリコーダー。銃で軌道を変えられた。
投げたリコーダーは不発に終わった気がするが。この技はまだ終わらない。
投げたリコーダーはミドリ目掛けて戻っていく。
上と下のリコーダーは当たらずに戻ってきたが、真ん中のリコーダーはタンユンに当たりそうだ。
彼は体を捩り背後を見る。
すぐ腹にはリコーダーが飛んできていた。
爆風────
強烈な風圧がタンユンを襲う。
ミドリの頭上を越して飛んでいき、地面に落ちる頃に回転して叩きつけられるのを回避していた。
リコーダーは戻り、元の状態になる。
「強いね。戦いのセンスはまだ未熟だけど、能力は恵まれているようだね」
刀が太陽の日差しを反射している。
「それに、今は無理そうだけどいつか、私と同じ「禁忌」が使える可能性がある」
禁忌────
それは能力をさらに踏み込んだ力である。それは人間の持つ能力を遥かに越していて禁断の領域に踏み込む。その力を持つ者は世界でたった指で数えられる程しかいない。
その能力を発動する度もしくは発動中は、あまりにも強大な力であり人間の限界を優に超えるためいつ死んでもおかしくないのである。また、使用頻度が多い程、使用時間が長い程寿命が縮んでいく。このようなデメリットが大きいため使うことはほとんどなく、本当に必要な時だけに限られてくる。
「見ることはできないけど、ミドリさんの未来が楽しみだよ」
地面を強く蹴って近づいてくる。銃が朧に光っている。
「ちょっと、気絶して貰うよ」
空気中の熱が全て集まっていく。
「龍の息吹」
銃から強烈な炎が放たれる。
ニーちゃんの放った空気砲が壁となりミドリには当たらなかった。
炎が止む。
目の前にいたタンユンが見当たらない。
目を閉じて感覚を頼る。直感の方位磁石が真上を示していた。
刀がギラギラと輝いている。
「竜の鋼翼」
真上から刀が振り落とされる。その姿はまさに翼竜の硬い翼が切り裂くようだ。素早く落ちてくる。
反射的にリコーダーを真上に構える。
「シル君、カバー」
そのリコーダーをシル君も掴む。
重い一撃がのしかかる。
衝撃波によって塵が舞う。粉塵が視界を奪っていく。
「私も用事があるからね……。これからもヒデの友達でいてくれないかい。あいつは日本に来て間もなくて友達も少ないからね」
煙が止んだ。その時にはもうタンユンの姿は見えなくなっていた。
*
敵の本拠地にきた。多数の武器を持った敵が待ち構える。
タンユンはその中へと突入していった。
「龍の咆哮」
熱波による衝撃波が人々を吹き飛ばした。敵の本拠地の真ん中で堂々と一人立ち尽くす。
蝋燭の人々は活気溢れていき、武器を持ってタンユンを目掛けて進む。
「さて、私の禁忌に耐えれる猛者は何人いるのだろうか」
空気が止まった。
風が止んだ。
敵の布陣の真ん中に現れる赤き龍。その龍の登場によって人々の動きが止まった。
「『禁忌』龍の威圧──龍激──」
衝撃波が周囲に広がっていく。
赤く薄い膜が広がっていき、円を広げていく。その中に入った人々が気絶していく。広範囲に広がる円で弱き者を倒していく。
半径何メートルかの人々が倒れている。一人を除いて円の中にいた人々は全滅だ。
唯一立ち尽くすマリンは十文字槍を向けていた。
「やりますわね。危なかったですわ」
「なるほど。やはり代理であっても代表者だけあって実力はあるようだね。けどこの技はまだ序の口だよ」
龍が動く。重い体を動かして、強い衝撃を加えていく。
龍に氷の槍が衝突した。
戦闘の間にも蝋燭の援軍が次々と向かってきていた。
ヒデは走っていく。
タンユンの進む進路の上を走ったが、途中で引き返し、別の道を進んだ。
彼は最初から作戦通りには動いていない。
もしかしたら……
途中でそのことに気づいた。そこから、敵の本拠地に一番速く着く道に変えた。
(叔父さんなら、敵本陣に突っ込む。そして、頭を撃ってすぐさま敵の士気を下げ、一瞬で戦いを終わらす)
敵の本拠地へと着くと、予想通りタンユンが一人で戦っていた。周りには数えきれない程の敵が構えている。
戦っている相手はマリンだった。そこに二人の剛腕そうな男が武器を持って襲いかかろうとしていた。
ヒデは真っ直ぐ飛び込んでいく。
「叔父さん! 俺も、戦うっ!」
驚いた表情でヒデを見る。だが、すぐに表情を整える。的確な指示が放たれる。
「仕方ないね」
地面を強く蹴って空高く跳んだ。
失敗しやすくてあまり使わなかったタンユンから教えられた技。しかし、今その技を使う気分になっている。
(一か八か。今までは失敗が怖くて目を背けていたけど、韓国にきて思い出した。失敗を恐れて背けてはいけない。叔父さんの目の前で絶対に決めてみせる)
炎の渦が手のひらに沿う。
「成功させてみせる。竜の突撃」
炎が舞っていく。が、敵の目の前で溢れ出した炎が消えた。
失敗だ。
十文字槍が攻撃を防ぐ。
「あら、オレンジ君。決着をつけにきたようね。けど、もう決着はついているのではないかしら」
回転を加えて十文字槍を振るう。ヒデはダッキングして攻撃を避け、後ろに跳んで距離を空けた。
空中では逆さになりながら落ちていくタンユンがその様子を眺めていた。
「今の失敗は仕方ない。大事なのは諦めないことだっ。次は絶対にできる」
勇気づける声がけ。体の奥底からやる気が溢れていく。
「余所見する余裕なんてあるのかい?」
剛腕そうな男がタンユン目掛けて跳んでいく。このままでは殺られてしまう。
「余所見している暇なんてありまして?」
真っ直ぐ伸びる槍を後ろに避ける。
「龍の火炎弾」
二発の銃弾が熱気を帯びる。まるで龍から放たれた炎の弾のような攻撃。その攻撃が攻撃してきた男を飛ばした。
「そうだったな。余所見するまでもねぇや」
心配する必要なんてなかった。タンユンは心配する必要のないぐらいとても強い。
マリンがいつの間にか目の前にいる。黒羽直々の奥義。十文字槍が横に振るわれた。
後ろに軽く跳んで避ける。体と槍はあまり離れていなく、ギリギリの所を通っていく。
「そう来るって思ってたぜ!」
予測通り。お陰で攻撃にいち早く反応し避けることができた。
踵に力を入れる。
「今度は俺の番だ! 今度こそ成功させてやる。竜の突撃────」
翼竜の翼がマリンを切るかのよう。炎の渦が一直線に進んでいた。
攻撃を受けたマリンはその場で気絶した。
地面に着地したタンユンと背中合わせとなる。
周囲を囲む蝋燭の人々。
地面には倒れた人々がゴロゴロと転がっていた。
「ちょっと場所を変えようか」
「どこへ変えるの?」
「ヒデの真正面を進んだ先に行くよ」
「了解!」
炎が舞う。
龍が真っ直ぐ進み、人の壁を崩していった。
橙炎の猛火が太陽によって煌びやかに輝いていたのであった。
人物紹介
【カンジョン タンユン】①
身長:188cm
性別:男
年齢:47
髪色:薄いオレンジ
所属:韓国政府
趣味:運動すること
特技:サッカー、バスケ、など
特徴:しっかりとした服装。真面目な感じが伝わってくる。少しヒデっぽい面も持っている。
信念:自由を掴み取る
いし:タンザナイト (誇り高き人)




