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24、水と氷の使い手マリン

ミドリ「『前回のあらすじ』です」



ミドリ「前回は私が孤児院にいた頃を振り返っていました。ミカエルさんの元で生活する毎日。アスタロトとの楽しい日々」

ミドリ「ですけど、ミカエルさんはルシファーさんによってお亡くなりになってしまいました」


マリン「哀しい話とうって変わって、今回は哀しくないので安心しなさい」


ミドリ「今日は確か飲み会の日だっけ?」


マリン「ええ、そうですわ。楽しみですわね」



~24、水と氷の使い手マリン~

 異災警察の中。

 今日は鍛錬の日。

 試合を行う。攻撃は峰打ちのみ。敵を気絶させたら勝利。

 異災能力を持つ者は体の中に異災の袋というものがある。そこに強い衝撃を与えれば気絶できる。そこをどう守って、相手をどのように攻めるかが鍵である。

 もし敵が異災能力者でなければ首を根元に強い衝撃を与えて気絶させる。

 気絶させる技術は異災能力が広まった現在に重宝される能力であった。気絶させるには己の能力を把握。敵の能力を素早く把握。そして、体の構造を理解。相当の知識と、それを実行に移せる技術。

 国は峰打ちの試験を行い。厳しいふるいにかけて残った者には証明書が与えられる。

 異災警察はマリンも含めて気絶の免許を持っている。

 この試合はその気絶技術を用いて行うのである。


 マリンの戦闘を生で見る初めての機会。

 興味が(そそ)る。

 彼女は左手につけた布を外す。皮膚は顔や右手とは違う黒色だった。違和感が襲った。

「えっ、何で左手の色が違うの?」

「簡単なことですわ。両手は義手ですので」

 義手と聞くと嫌な予感が広がっていく。白色の雲が急変して黒色になったみたいだ。

 悪魔の肉片を製造する悪の根源。

 そこに関わっているとされる義手、義足に関する組織。

 人攫い稼業、虎眼を通して義手義足に強い懸念を強めていた。

 まさかマリンが義手とは。驚きが隠せなかった。



*



「君の言う通り、彼女とは別人の指紋が感知された。調べた二つとも別々の人であり、男性を表していた」

 水青色の服装。キチッとした制服が緊張感を与える。目の前の警官はオパルに資料を手渡した。近くでダイが話を聞いている。

「一人目は磐井(いわい) 間千(ません)だ。数年前から行方不明となっているブラジル籍の四十代男性だ。この人物に関しては面白い情報を得られた」

「面白い情報?」

「四月に人攫い事件が起きてあんたらが犯人を捕まえたろ。その犯人の一人野村(のむら)の右手の指紋から感知されたのもその磐井という男だ」

 静かに口を閉じた。

 ゆったりと時間が進む。ただ、時計の針は通常通り動き続けている。

「つまり、その野村の右手とマリンちゃんの左手は、磐井と言う者の手なんだね」

「そうだ。もう一方の手からは海風(うみかぜ) (すい)という、またもや行方不明の男性が検出された。彼には捜索願が出されていて愛知県で三年前までは確認されているがそれを機に目撃者はいない」

「何か嫌な予感がするね」

 胸騒ぎが体を覆う。オパルの嫌な予感は散々当ててきた。

 何かが起こりそうな悪い予感である。

「先週の捜査で分かったことなんだが、俺らの中にスパイがいるかもしれない」

 ダイの言葉によってその場がさらに凍りつく。

「さらにスパイが投入された可能性があるということかい?」

「ああ、そういうことになる。だが詮索は難しい。その時に警戒されれば元も子もなくなる」

 左足と魔の手を動かして軽く動く。

 ドアの(ふすま)から吹く溢れ風がひんやりと冷たかった。

「スパイが投入されたのなら、俺はこれをチャンスと思っている。スパイと分かっていれば対処できる。さらに、だ。ここで秘密裏に動き、上手く利用すれば敵の情報を引き出せる上に敵を撹乱(かくらん)させられる」

「なるほど! 二重スパイってことだね」

「オパル……。少し違う気が、そういうことにしておいてくれ」

 不穏な雲に亀裂(きれつ)ができる。

 黒色の雲に覆われた世界に、分かれ目から水色の光が降り注がれた。



*



 違和感が胸を支配するが声には出さなかった。

 試合のための部屋、そこの大半を選挙するマリンとヒデ。

 準備運動は終わった。後は鍛錬の試合が行われるだけだ。

「手加減はしないぜ!」

「ええ、こちらこそ手加減はしませんわ」

 マリンは右手を前に出す。

 手のひらから水が出る。その水は形を変形させていき、特殊な槍の形となった。真っ直ぐ伸びる尖端、そこから少し手元側には左右それぞれに尖端がついている。

 その水に左手が触れる。

 すると、水は一瞬にして凍った。

 白く(にご)る十文字槍がヒデを狙っていた。


 コラールの一言で試合が始まる。


 二人から殺気が放たれる。炎の手刀と氷の槍がぶつかる。溶けていく氷がすぐに凍りつく。

 一振。そして、回転しながら二振。

 その攻撃を手のひらで受け止めた。

 もう一振。真下から上に向かって振るわれた攻撃であった。

 ヒデはバク転をして攻撃を(かわ)す。

 槍が手から離れて空中を何回転もする。その間、マリンは武器を持っていなかった。そこをヒデは逃さない。

 思いっきり前に跳んで目の前にくる。勢い良く手のひらを振った。

 炎の手刀と氷の盾がぶつかりあう。

 水が盾の形を作り、それを凍らせて氷の盾にする。ヒデよりも速くそれは作られていた。

 冷たい白煙が舞い、視覚を奪う。


 凍て付く煙。激しく動く体内が寒さを忘れさせていた。

 床に刺さった盾を支点にする。マリンは盾を持つ手に力を入れてヒデの真上を飛んでいた。

 落ちていく槍を握る。

 足が地面に着地すると同時に、ヒデの方向を向き、真っ直ぐ進んでいた。

 煙は消えていた。

 いつの間にかヒデ、盾を越した場所にいる。マリンを見ると槍を振った後のようだ。

 目に見えない切断。

 無音の時間。

 ヒデが崩れ倒れた。


「終わりですわね」


 この試合、ヒデの負けに終わった。



 その様子を見ていたコラール達はあることに気づく。

 この技は"黒羽の自己流剣技"と似ていると。

「よくやった。(いにしえ)より伝わりし我が剣技の腕も上達している」

 剣技を黒羽から教えて貰っていたようだ。

 黒羽は人と接するイメージがなく、後輩に剣技を教えた事例がなかったため、マリンに剣技を教えていたことに衝撃が走っている。

 異災警察で、四期生は武術、剣術、銃術、作戦術に長けた四人がいた。

 ヒデはその中で剣術に長けた先輩に剣技を教えて貰っていた。

 一方、黒羽は剣技を教えて貰わず一人で剣術を学んでいった。

 頑なに剣術を学びにいこうとしない。ヒデを中心として後輩に学んだ剣術を教えようともしない。そんな黒羽がマリンに剣術を教えたのだ。それだけで驚きが隠せない。

「だが、まだまだ上級には至らない」

 黒羽とマリンが話す。

 その様子を珍しく思った。

 黒羽が話している姿を全く見たことがなかったからだ。


 様々な刺激が楽しさを思わせる。



*



 黄金に輝く液体がジョッキの中で踊っている。上層部の白い泡がユラユラと揺れる。(のど)を通る。スッキリとした味わいと深みが体の中で溶けていく。

「はぁ、俺も飲みたいぜ。俺もお酒飲んじゃ駄目?」

「駄目だよ。まだ未成年だし。警察なんだから、守らないとね」

 六期生が居酒屋に座って飲み物を飲む。

 ヒデ、シーナはお酒を飲めないため、代わりにジュースで代用していた。

 お酒の席が進む。

 ルサは最初に頼んだファジーネーブルで顔を赤らめ机に額をつけてしまった。

「もう……駄目!」

「早いね。まあ、最近二十歳になったばっかりだから仕方ないか」

 即刻倒れたルサを他所に話を進ませていく。

 飲めば飲むほど口が饒舌(じょうぜつ)になっていく。

 飲み干したジョッキを置く。机に当たって豪快な音をたてていた。

「ぷハァ。恋バナしない?」

 酔っ払い共の饗宴(きょうえん)。酒飲める組を先頭に話が進んでいく。

 マリンと彼氏の全盛期について語られる。

 それを聞いて羨ましがるカヤに対して、挑発していく。それに対抗しようとするカヤ。マリンとカヤは馬が合わないことが分かった。

 言い合いもすぐに終わった。

 カヤが呟く。

「私は男に恵まれないし、そもそも男女の恋愛なんか二の次だし」

 そこに疑問の声が飛ぶ。

 二の次────?

「私、BL派だから。見せてないけど裏では重症の」※BL=ボーイズラブ

「まじかぁ。もしかして腐女子かも知れないパータン」

「そうそう、そのパターン」

 話が進んでいく。

 時計の針が回っていく。想像していたよりも時間が進んでいた。

「もうこんな時間かぁ。お子ちゃま組は帰りの時間だね」

 その言葉にヒデが反応する。

「お子ちゃま、言うな!」

「ごめんごめん」

「ったく。子ども扱いしやがって」

 帰宅準備をするヒデと、シーナ。その横にはずっとダウンしているルサがいた。

 ルサをヒデに任せる。心の中でニヤリと見る。

 優しい服装の彼がルサを起こさせる。ルサは酔っていて意識が朦朧(もうろう)としていた。

「ったく、しょうがねぇな」

 ヒデが彼女の支えとなって出口へと向かう。

 こうして三人が帰宅する。三人とも無事に帰れたようだ。


 残った三人。

 ミドリ。最初に頼んだビールから始まり、もう何杯か飲んでいる。

 カヤ。三杯程度で酔い。口が軽くなっている。

 マリン。酔いを感じさせない勢いだ。

 お喋りは三人が帰宅するも、加速していく。女子トークが盛り上がりを見せていく。

 話は進む。人生相談。思い出の振り返り。いつしか先々週の遊園地についての話題となっていた。

 カヤがミドリに振る。

「そういや。ミドリって、シーナのこと気になってるでしょ」

 そう言われた瞬間、何かが頭に強い衝撃を与えていた。

「えっ、どうかな?」

 そう言いながらも、自分の意識に問いかけていくと、カヤの鋭い観察眼が核心をついていた。

 頬が余計に赤くなっていく。けれども、今はお酒のせいにしていた。


 時計の針は大きく回る。


 真っ暗な景色を月夜と星々が明るく照らす。

 家の中でミドリは天井を見ていた。

 カヤに言われたことを思い出す。

 シーナについて意識していたことについて。今までは目を逸らしていた。だが、今となっては目を逸らすことはできない。

 この出来事が、ミドリに"シーナへの恋"を強く意識させた。


 今日も星々は夜空で煌めく。

世界観紹介

〇七つの国、天使、悪魔

→七つの国にそれぞれ悪魔が封印されていて、その封印の責任を負う天使が一人その国に定住している。


・アメリカ

 天使:ミカエル

 悪魔:ケルベロス

・中国

 天使:イフディエル

 悪魔:ルシファー

・日本

 天使:ウリエル

 悪魔:ペルセポネ

・イギリス

 天使:ガブリエル

 悪魔:サタン

・ロシア

 天使:ラファエル

 悪魔:閻魔

・フランス

 天使:メタトロン

 悪魔:メフィスト

・ドイツ

 天使:アスタロト

 悪魔:バベル


(※死亡も含む)



次回は昼の部 (12:00)

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