23、天使の訃報
マリン「『前回のあらすじ』ですわ」
マリン「いいお話でしたわね」
カヤ「毎回思うけど、少しずつキャラが違ってきてない?」
マリン「気のせいでごわす」
カヤ(ごわす!?)
マリン「最初は女子大学生、からの悪役令嬢、そして現在はよく分からない設定に……なったってばよ」
カヤ(てばよっ!?)
マリン「さあ、本編始めますわ。今日は ~23、天使の訃報~ です」
カヤ「あ、戻った」
平和は簡単に消えてしまう。
それは十一歳にして思い知った教訓である。
生まれ育ったアメリカでは平和は続きはしなかった。
今生きている日本の地にはアメリカのような悲劇を味わせたくない。もうあの悲劇を繰り返させたくはない。
平和の執着をバネにしてミドリは警察となった。
そして、異災警察となりて平和を揺るがす犯人を倒していく。
だがそれは、土竜叩きだった。
地面から顔を出す土竜。出たら駆除をするが他にも土竜が現れる。何度叩いてもなくなりはしない。
どうすれば悪は潰え、永遠の平和は望めるのか。
今まで出してきた答えは"監視された社会"を作ること。そうすれば、悪に染まる行為を事前に防ぎ、平和は守られるはず。
異災警察としてできるのは僅かな悪の目を紡いでいくこと。
国の機関である異災警察。悪事が許されないことが知れ渡れば擬似的な"監視された社会"が成り得る。
だが、監視された平和は窮屈だということを知ってしまった。
壁の中に閉じ込められた人々は苦痛に感じる。平和よりも大切に感じることがあるのだと分かった。自由のない平和はどこか色がないことを知った。
皆が皆同じではない。
規則通りの生活。ロボットの生活は、向いている人もいれば全く向かない人もいる。
視点を変えれば悪にも成り得る。
ミドリはもう掲げていた"監視された社会"を叶えようとは思えなくなっていた。
代わりとなる目的もない。
ただ平和を維持すること。それだけが残っていた。
どのように永遠の平和が達成されるのか。そのための方法は、思いつきもしない。
「これから考えていけばいいかな……」
優しい風が吹いている。
少しずつ手探りに探していこう。
爽やかな空を見て平和について考えていた。
今まで見えなかった道。終わりのない答えを探して一歩踏み出した。
*
ミドリ宛に手紙が届けられた。
ミカエルからだった。
ミドリはミカエルとの出会いと日々について思い返していた。
*
目を擦りながら椅子に座る。
パジャマ姿で目の前に出されたトーストとミルクを食す。
食べ終わって履きなれた靴で家を踏みつける。皿を流しに置いた。
蛇口から流れる音と重なるテレビの音。そこからニュースが流れていく。
内容は世界各地で災害が起きているということだった。
地震、雷、火事、津波、台風、など。
他人事のように見ていたが、他人事ではなかったようだ。
黒雲が流れていく。
巨大なタイフーンが海沿いに現れる。
危険すぎるタイフーン。避難指示が出されたが……
他の地域で起きる地震や津波。そのせいで避難することができなかった。
ハリケーンが家を粉々にする。
ミドリはその餌食となって飛ばされた。その後の記憶は一時的に消えた。
暗闇の中で声が聞こえる。
《おい、大丈夫カ?》
目を覚ますと二匹の妖精がそこにいた。
ミドリは二匹の妖精を操る能力を得て生きていたのである。
世界規模で破壊された。
家の復興は簡易的なものとなっていた。それ以上は混乱が収まってから。
ただそんなことどうでもいいと思っている。生命が残っている。その奇跡が他事を上回った。
新たな地で家族との生活。
一部の人間が能力を持つ世界。その世界が当たり前に変わっていった。
そこに流れる不穏な噂。
男が国に喧嘩をしかけたと言う。
何日か経つと、その男は国の軍事力に奇しくも敗れてしまった。だが、たった一人で国に張り合ったため、国の無力さを広めさせた。
国は全米ライフル協会と手を組んで能力に対抗するための新たな武器を流通させた。
そのせいで国民はさらに危険な混沌に巻き込まれた。
ある人々は国の対応に怒る。
ある人々は無力な国を乗っ取ろうと企む。
ある人々は自由に平和を打ち砕いていく。
混沌が混沌を生み、平和は崩れ去ってしまった。
突如悪人が現れ、大切なものを奪っていく。
土が押し寄せ家族が埋まり死ぬ。ミドリは土の波を避けられた。シル君とニーちゃんのお陰だった。
悪人の悪行は終わらない。周りの人々を皆殺しにするまで終わらない。最後に目をつけたのがミドリだった。もう私以外誰も残っていない。
土が四方八方から押し寄せる。
逃げ場はない。
死んだ。お父さん、お母さん今からそっちに行くよ────
目を瞑った。
「今助けるからね。もう安心して」
若い男の声。優しい言葉が響く。
白い羽が周りを舞っている。土の波が吹き飛ばされる。
優しい翼でミドリは包まれていた。
抱かれている。目を開けるとそこには。
これがミカエルとの初めての出会いだった。
彼は容易く目の前の悪を潰す。
身寄りを失った。大切なものを失った。けれども泣きたいのに泣けない。ほんの少し大人への道を歩いてしまった。ミカエルはそんなミドリを孤児院に引き取った。
孤児院とは天使族が経営する巨大な児童収容施設である。
能力が付与された後日、天使と人間が数日で作ったシステム、巨大な建物である。
世界各地の七つの国に孤児院が建てられた。
能力によって人々が死んでいく。
能力の使用は多くの人を巻き込んで命を奪う。子どもたちも巻き込んでいく。そのため子ども達の生存も少なかった。
ここにいるのは奇跡的に助かった子ども達だ。
急に身寄りのなくなった子ども達。年齢は関係ない。自立できなければ、それは子どもだ。それを理念に造られた建物。それが孤児院だった。
ミドリはその中に入る。
打ち解けるのに時間はかかったものの、打ち解けたら後は楽しい毎日が待っていた。
それを見てミカエルはにっこりと笑っていた。
「さ、かけっこだ!」
大きなエントランスを走り回る無邪気な男の子達。活気ある空気の中でミドリは孤児院の友達と喋っていた。
白を貴重とした内部。
ママとシスターが分担して騒がしい子どもの相手をする。
扉が開き、聖職者ミカエルが帰ってきた。横には天使の女の子がいた。
孤児院は決められた役職に主な役割が当て振られていた。
一人のママが子ども達の面倒を見て、一人のシスターがママの補助的な活動をする。そして、一人の聖職者が管理を行う。
ママは主に指定された学校を卒業し、試験に優秀な成績を残した者がなれる。シスターは同じく指定された学校を卒業し、こちらは試験に合格した者がなれる。聖職者は天使族だけがなれる。
人間と似通っていながらもかけ離れた存在である天使は子ども達から人気の存在だった。
人間を凌駕する強さ、空を飛び、技を撃つミカエルは男の子から人気だった。
性格も良く容姿も整っていて、きちんと子ども達のことを一人一人考えてくれるミカエルは女の子からも人気だった。
そんな彼。帰ってくるだけで騒ぎが大きくなる。
だが、その日はその比ではなかった。もう一人の天使が心の底から興奮させる。
横にいたのは可愛い女の子の天使だった。
少し上ぐらいの年齢に見える。
彼女が笑顔を浮かべる。天使の笑顔は人間よりも遥かに超えて可愛かった。
「みんな、集まってもらっていいかい?」
ミカエルが子ども達やママ達を呼ぶ。
数分で二人の天使を囲むような陣ができあがっていた。
「今日から一年間、聖職者の見習いとしてここに従事する"アスタロト・ローズ"だよ」
「よろしくねっ。みんな!」
気軽で接しやすいオーラが放たれる。
子ども達との間に彼女との隔たりはほとんどなかったような感じである。
一、二ヶ月もいると強い友達意識が芽生えている。
アスタロトが帰る。
その日、ミドリとアスタロトが雑談を交わした。
「おかえり、アスタちゃん」
「ただいま、ミドっち」
天使の仕事は孤児院の経営だけではない。
悪魔についての管理・監視も任されている。孤児院は七つあるが、そこにある国に必ず悪魔が一つ封印されている。
悪魔本体の封印と私営化された分割している封印全ての責任を負い、もし悪魔の肉片が現れたらその存在を斃す役目を持っている。
アスタロトは今、悪魔の肉片を倒してきたのだ。
「疲れたよぉ~」
「今日は強敵だったの?」
「うーん。強くはないけど、警察が足を引っ張っててさぁ」
悪魔の肉片の退治は警察と天使の二つが持つ。そこで警察と天使の共同することだって有り得るのだ。
会話はアスタロトの肉片退治で盛り上がっていく。
話は肉片退治から飛んで、肉片退治へ行く時の景色へと移った。空から飛んでいったので、空からの美しい景色が撮られている。
その間に、彼女はスマホで空から写した景色を見せようとする。
たまたま、違う写真が画面を支配する。
同じ天使族であるルシファーの隠し撮りだった。年齢はアスタロトよりも三、四歳ぐらい上に見える。
急いで目的の写真に変えようとした所をミドリが止めた。
「前から思ってたんだけど、アスタちゃんはその人が好きなの?」
何回か見たことがあるその人の隠し撮り。
最早、確信に変わっているその真相をこの場で聞いた。
アスタロトは口をもごもごさせた後、恥ずかしかって話した。
「う……ん。そうなんだ」
そこからアスタロトの恋語りが始まっていった。
アスタロトとは孤児院の中でも特に仲良くなっていた。
ミドリは最年長組としてアスタロトと年齢が近いこともあった。
そして、アスタロトがここに来てから早一年。
彼女はこの孤児院から卒業して他の国へと行くそうだ。孤児院の中でのお別れ。
風が心地よい中で孤児院の仲間達と最後の記念撮影をする。
ミカエルやアスタロト、ママ、シスター、ミドリ、孤児院の子ども達。その写真の中には沢山の笑顔が詰まっていた。
──
───
────
唐突に送られてきた手紙。理由は分からない。
その中に付随していた写真が煌めいている。
手紙には今頃ながら昔を振り替えさせる内容。写真と合わさって懐古的な記憶を強く呼び覚ましていく。
ミドリは懐かしい記憶に嵌っていった。
*
カナダが滅ぼされた。
犯人はルシファーとされる。
ルシファーは天使族だった。
勉学、戦闘、その他諸々、天使の中で追随を許さない天才だった。天使の中で一位の存在。彼は天使の中からも、人間からも羨望の眼差しが向けられていた。
だが災害の封印が彼の心を淀ませたと考えられている。強大な力を宿し、すぐに封印する。その一つにルシファーが選ばれたのだ。
中国で起きた事故によって封印が解かれたルシファーは破壊に徹した。
中国を滅ぼし。
監獄島を滅ぼし。
カナダを滅ぼした。
ルシファーによって封印された存在は悪魔と呼ばれるようになった。
彼は今もどこかにいる。
ミカエルは目の前にいる悪魔と対峙していた。
目の前で黒い羽が落ちる。
「やはり来たね。これ以上の被害拡大は許せなくてね。ここで殺すことにしたよ」
周りは瓦礫の山が広がる。
その国での生存率は限りなくゼロに近い。
綿密に建てられた計画によって証拠を掴む映像などはなく、目撃者もいない。最初に現れた大蛇が全てを破壊していた。
「最近、彼と話したよ。君はここに来るかも知れないと言ってきた。彼は優しいから自らを犠牲にして君の悪事を全て庇っている」
手の拳を強く握る。
平穏に振る舞うが心では敵意を剥き出しにしている。
「ルシファーと違って、ウチは優しくないからさ……」
その悪魔は若い女の子だった。年齢的には高校生ぐらいだろうか。大人らしさもあるがどこか幼く見える。
ミカエルはその女向かって最後の言葉を言い放った。
「ここで殺す。覚悟しなよ。「アスタロト」────」
*
ミドリにミカエルの死が伝えられたのは彼の死から数日後のことだった。
アメリカが滅んだ。ただ、奇跡的に悪魔の封印は残っている。誰もいないが機械は動き続けている。
多くの人々はアメリカの崩壊に驚き不安心を抱く。
ミドリはミカエルの死に強い衝撃を受けてその場で崩れ落ちていた。
人物紹介
《黒羽 カルサ》②
能力:氷の結晶
属性:氷
武器:蒼馬刀、紅薇刀
戦闘:氷の結晶を蹴って空中を移動し、刀で敵を斬る。氷の結晶を作って攻撃する。必殺技は後から言う派。
災害:凍死
秘話:最初は厨二病設定はなかった。人殺しのために動く仲間だった。元の物語ではミドリの最後の勝負 (擬似的ラスボス枠) がアワルに利用された黒羽だった。
次回は3/4
深夜の部0:00からです




