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21、黒羽 アケト (中編)

※この話には注意事項があります


アケト「みなさんに連絡だよ」


※この話はR-18要素の疑いがあります。18歳に満たない方、残酷な描写が苦手な方は読むのをお控え下さい。


アケト「次の話の前書きでこの回をまとめるから安心して欲しい」



~21、黒羽 アケト (中編)~

 何十年か前の話────


 天使族が発見され大騒ぎとなったあの日から何年か経った。

 天使との抗争は終結し、今では人間よりも少し上に立つ存在として位置づけられている。


 彼らの提案によりどうしようもない、救いようもない悪人を隔離する島を造ることになった。平和のために危険な人物を閉じ込める。対象は日本なら死刑囚と言ったところだろう。

 天使の力と進んだ技術力によって早一年半でその島は造られた。

 島を囲う(おり)。鳥かごのように空からの脱出も防ぐ。また、地面に張り巡らされた檻が地面からの脱出を不可能にする。その檻はどんな衝撃にも耐え、炎や水などにも耐性があった。

 一度入れば脱出は不可能。


 その島の名は監獄(プリズン)(アイランド)


 人々は危険人物をそこに押し込み、社会と心と実際の平和を維持することに一時的に成功したのであった。

 人々から除かれた存在がその島に集められる。その島は人々に見放され無法地帯になっていた。

 唯一ルールは三つのみある。

 一、係員や非住民に手を出すな

 一、脱出しようとするな

 一、係員の言うことを聞くこと

 この三点を守れなければ、待っているのは"死"。情はない。ただひたすらとルールに照らし合わせ、少しでも逸脱すれば制裁を加えるのみ。

 それ以外には細かなルールは設けなかった。

 そのせいでその島には現代社会とは違った弱肉強食のルールが作られていったのだ。



*



 天使が運営する監獄島は社会に大きな影響を与えた。

 犯罪を犯せばその島に閉じ込められるかもしれない。天使には人間の理は通じない。脱出不可能であり、希望は潰えている。

 社会に起きる犯罪は減少傾向に向かった。

 日本に蔓延っていた暴力団や裏営業などは特段に減った。

 三代暴力団と名を馳せていた組織。その内、北海道に本拠地を構えていた水酔(すいすい)族は団員の相次ぐ脱退により崩壊していた。

 二代暴力団となった縁下隊と紅蓮会。しかし、それさえも下火になっていた。

 紅蓮会で一人、退屈に感じていた女がいた。

 女の名前は黒羽レイナ。

 中学生の頃人を殺めて少年院に入り、社会人となった今では裏社会に身を寄せて表社会から隠れていきている。

 敵をしめにいく日々。躊躇無い攻撃と、軽いフットワークで一躍紅蓮会の右腕となっていた。裏社会の人間で彼女の名前を知らない者はいない、とされるまで上り詰めた。

 他の女に力で負けることはない。

 泥棒、スリ、様々な悪事を行った。薬物所持で捕まり刑務所に閉じ込められた後、再び娑婆(しゃば)へと顔を出したがそこには昔の景色はなかった。裏社会の勢力は全て勢いを失っている。ただでさえ、窮屈な身分だったものがさらに窮屈になり、居場所が全くと言っていいほどない。

 心の中での衝動は抑えられない。

 今までの心の悪を解放する場所はなく、禁止された場所での悪事は続いた。

 そして、悪事とそこで生まれるスリルに体が興奮を憶えさせる。増え続ける欲求のまま悪事を重ねて、いつしか再び人を殺めてしまっていた。

 若くして手に血をつけて、今は二十四歳。その間で癖は治らなかった。

 また逮捕されたレイナは刑務所に送られなかった。


 彼女は何と監獄島へと送られたのである。


 その島には歴史が全くないため今まで男共しかその島に閉じ込められていなかった。この日、初めての女の住民としてレイナがこの地に降り立ったのだ。

 島の中は無法地帯。

 弱肉強食で掟三条を守りさえすれば他は何をしても許される。

 暴力、強奪、殺害。掟にさえ触れなければ何でもあり。

 絶対に脱出できない島の中、彼女は島を練り歩く。途方に暮れる。この島の実情は聞いたが、聞いた所で何をしたいかは思い浮かばない。

 彼女を狙う野獣のような目。

 すぐにこの島の非情さを理解する。

 何でもあり。つまり、身を守るルールなどない。

 男共は何も無い。女一人としていない。脱出不可能の島の中で餓えていた。

 善処するが、男には勝てなかった。

 布が土の中へと還っていく。体中に痣ができる。悲鳴も嗚咽もする余地はない。自由な時間は与えられなかった。

 毎日別の誰かが腕を掴む。

 殺人者の暮らす島には泣き寝入りする場所などなかった。

 いつしか味方となる男が出てきた。女というだけで特別扱い。お陰で地獄からは一時的に解放された。

 ルールはない。流産に関する決まりなどない。

 死にものぐるいで殺してきた生まれかけの命。レイナは特別扱いしてくれた男性と恋に落ち、子どもを授かった。男に守られ無事産まれた男の子。

 彼に《アケト》という名前をつけた。

 そこから島の中で隠れながら子どもを育てる。

 幼子の鳴き声が野獣の男を誘い出すが、旦那が返り討ちにする。


 何日か経った。

 ある日、旦那は戦いに負けた。そして、レイナは再び地獄の中へと放り投げられた。その中で強欲な男がいた。彼は体を植物で木々に縛り付ける。

 動けない日々。

 男は力強く敵を返り討ちにし続け、強奪した食材でレイナの命を繋がせた。

 子どもが産まれた。

 そこで産まれたのは男の子。

 すぐには名前をつけなかったが、ゆとりができた後に、《カルサ》という名前を授けた。

 拘束は解除される。

 男は赤ちゃんを大事に守ろうとして生きる。


 いつの日か、檻を挟んで仲間と話す機会があった。

 今の状況ではいつか二人の子どもの命が消える。そこでこの命を守って欲しいという願いを言った。

 その仲間は係員にそのことを伝えたのだが、係員は脱獄する計画のための嘘と言い捨てレイナは見捨てられたのであった。


 生きるためには殺すしかない。

 アケトとカルサ。二人は殺し合いが常の島で産まれ育つ。

 物心つく前から戦いに明け暮れていた。

 日常的に行われる戦闘の実技が二人を強くする。

 レイナは二人に外へ出ても通用するようにと最低限の知恵を与えた。

 彼らは(たくま)しく成長していった。


 九年の年月が経つ。

 レイナが亡くなった。死因は何らかの病気。島には病院がないので診察はできない。そのため病名は分からなかった。

 それだけではない。近々、この島の人々が病気で衰弱(すいじゃく)していき、最悪死んでいく。不自然にも死んでいく島人。ようやく係員は不思議と思って檻の中に様子を見に来た。

 そこで彼らは二人の子どもを引き取る。

 そして、レイナの仲間の言葉を思い出し、その人に連絡した。


 島の人々の死因は後々明かされた。

 HIV──エイズ──が死の主な原因だった。

 日和見感染し病気になる。その病気を治すための病院もない。そもそも、治せるものではない。

 今の時代、延命はできた。

 しかし、そのための病院がその島にはなかった。


 島から出た二人もその病気にかかっていた。

 親の持っていた病気が産まれた子に引き継がれたのだ。

 レイナの仲間である紅蓮会の片桐(かたぎり)は二人を引き取った。事実を知ると否やすぐさま病院に連れていき延命措置を取った。

 だが治った訳ではない。延命しただけだった。


 この時、アケトは九歳。カルサは六歳である。



*



 人間の目ではない。これは野生の目だ。常に周りの気配を捉えている。人を殺めそうな(おぞ)ましいオーラ。

 片桐は二人を隠れ家に置いた。

 福岡の外れにある緑に囲まれた侘と寂が充実した家である。

 畳の上に正座する。

 二人に真似させて座らせた。

 引き取った片桐は責任持って育てることを決意した。家に隠れる本を進める。

 勉強してこなかった二人は初めて見る本に目をキラキラさせていた。

 二人は本を好意で掴む。

 文字の羅列を見て想像の幅が広がる。

(この世界は広いんだ)

 本を見て学問の可能性を知り、興味を持ち始めた。

(この文章、会話で使ったらカッコよさそうだなぁ)

 小さな方は、その文章に興味を持ち始めた。

 学問の扉が開かれた。

 また、稽古にも熱を入れた。

 木刀を持たせて互いに打たせる。子どもとは思えない上手さだ。

 彼らは常に戦っていた環境にいたせいで、戦わないと腕が(うず)く体となっていた。


 学問と稽古の日々が二人を待っていた。

 その毎日が楽しい日々となっていた。


 六年の年月。

 紅蓮会の未来は破滅へと続く。関わりの薄いアケトとカルサはそのことに気づいていなかった。

 紅蓮会と縁下隊の抗争。

 敵の若頭野村(のむら)のカリスマが紅蓮会を追い詰めていた。

 抗争は下火となっていたものの続いていた。

 そして、今日紅蓮会の若頭が討たれた。

 野村の策略で紅蓮会は本懐する。組織の人員がバラバラに散っていく。

 紅蓮会の幹部は縁下隊に追われるようになった。

 幹部的な役割にいた片桐も追われた。


 片桐は遠い異国の地に逃げる。二人もそれに続く。

 吹雪が吹くと体が凍る。雪の降る静かな場所だった。

 町の真ん中にある巨大な()き火が体を温める。その火の周りに集まった人々が楽しそうに舞っていた。


 この時、アケトは十五歳。カルサは十二歳。



*



 月明かりを雪が反射する。

 最近物騒な噂が流れていく。

 世界各地で様々な災害が起きているようだ。もしかしたら、この地にも来るかもしれない。

 町の真ん中には巨大な焚き火がわかち、町は優しく笑う。

 だけど、災害は唐突に襲い。町の笑顔を奪っていく。

 強風が吹き荒れる。

 カルサが吹き飛ばされ、雪の敷き積もる山へと飛ばされていった。

 何かに(すが)りついていなければ飛ばされる。手を離したら終わりなのに、アケトは弟が飛ばされた時に思わず手を離していた。

 彼も飛ばされる。

 飛ばされた方向は焚き火のある方向だった。

 焚き火の炎で焼死する。

 それと同時に強い強風で地面に頭を殴打し打撲死する。

 彼は二つの要因で死に至ったのである。


 そう思っているのもつかの間。

 死んだはずの人々が生きていた。もしかしたら蘇ったのかもしれない。不思議な能力を持って蘇った。

 アケトは生きていた。炎と風を同時に扱える能力を得た。

 カルサは生きていた。氷の結晶を作る能力を得て。

 片桐は災害の影響を受けずに済んだ。

 命があることに感謝をする。命の大切さを学んだ。


 だが……

 縁下隊は若頭野村が追われ新体制となった。その体制によって縁下隊のスイッチは壊れた。

 縁下隊に敵する者、紅蓮会の関係者が次々と殺される。

 しかし、恵まれた能力によって誰も止められない。

 その縁下隊の新幹部がこの地に降り立ったのだ。勿論、紅蓮会に関係者片桐を殺害するため。

 彼の放つ植物で作られた槍。いつの間にか片桐は死にかけている。

 アケトは使い古した木刀を投げ捨て真剣を手に取る。

 人に向けるのは初めてだった。

 振らなければ死ぬ。そう思って向かっていったが、簡単に弾かれ、蹴り飛ばされ、無力にもその場で倒れた。

 彼は片桐の殺害に成功するとそのまま帰っていった。


 その場にきたカルサが驚く。

 たまたま居合わせなかった彼は何も出来なかった自分を悔やんでいた。蚊帳の外で大切なものを失う怖さを知ったようである。

 二人の胸に秘めた思い。

 強くなりたい────

 アケトは真剣を握る。誰かを守るために強くなる。誰かを守るためなら殺しても構わない。

 カルサは刀を握る。戦いに生きて戦いに終わる。その人生を全うするため。片桐から教えてくれた恩を刀に織り交ぜる。

 二人は修行のため剣を交え、手合わせを行う。

 カルサの振る刀が真っ二つに割れた。

 次の手合わせ。

「今度こそ、勝つ」

 腰の鞘が二本ある。その内一本は前回の練習で使い物にならなくなった刀を入れていた鞘である。

 またもや、カルサの真剣は折れる。

 アケトは全力だった。常に本番だと思って手合わせを行っていた。全力で振るうアケトの腕っ節にカルサは手も足も出なかった。

 真剣による手合わせは何回もした訳ではない。刀を補充するためには時間もかかる。

 カルサは六回負けて六本の刀のない鞘を身につける。

 続く刀を補充したため、腰には鞘が七本もついていた。ただ、一本しか刀は刺さっていない。


 雪が止んでいる。

 静かな昼だった。

 片桐を殺害した仇を日本で確認された。

 紅蓮会の生き残りが紅蓮会復活のため、二人を戦力に入れようと誘ってきた。

 もちろん、二人はそれに賛同した。

 片桐の残した資金と軽い仕事があれば長いこと生きることはできる。が、自らの心はそれを許していない。

 二人は日本へと帰っていく。



 そして、そこで縁下隊と一戦を交える。

 そこに新設された異災警察が戦いにやってきた。

 剛腕から放たれる太刀筋が強敵であるはずの縁下隊幹部を追い詰める。また、アケトとカルサの参戦が敵の逃げ場を封じていく。

 が、縁下隊の下っ端が身代わりとなり、異災警察の攻撃はその身代わりに当たってしまった。

 下っ端は即死する。それを見て立ち尽くす彼。その間に、幹部は逃げていった。

「やっちまったぁ! まぁた、天国から遠ざかっていくじゃんか」

 ショックで地面に手を着く彼。

 彼の仲間がやってきた。


 日本では帯刀禁止。異災警察によってアケトとカルサは連行されてしまった。

 署で事情を聞かれる。

 アケトは縁下隊に大切な人を奪われたこと。復讐したくて持っていたことを述べた。

 目の前の警官は苦言を呈する。

「ったく、超危険人物だから殺害はやむを得ないとされるがな。ただし、そんなんが許されるのは異災警察だけだぞ!」

「そうなのか!?」

 隣で弟が驚いていた。

 それを聞いた警官はもっと驚いていた。

「え、えぇー!? まさか知らんのか」

 短いやり取りの後、彼は一つ提案をしてきた。

「もし良かったら異災警察の一員とならんか? まあ、ルールは厳しく守って貰うがな」

 アケトは断った。

「僕は却下する。刀は預けておくよ。僕は紅蓮会の復活に尽力したいしね」

 次に横を見て「カルサは?」と聞く。

 答えは単純だった。

「ふっ。面白い。仲間になって良いぞ」


 こうしてカルサは異災警察の一員となり、アケトは紅蓮会再建のため尽力を尽くすため別行動を行なった。


 この時、アケトは二十一歳。カルサは十九歳。



*



 縁下隊幹部と異災警察の最初の抗争を知った時は鳥肌が経った。幹部二人は亡くなった。ただ、異災警察も一人が亡くなり、一人が自殺した。

 続く抗争には、アケトも加勢した。

 異災警察側に加わり、片桐の仇も討てた。

 この抗争で残る幹部が亡くなったため縁下隊は滅亡した。

 お陰で悔いはない。

 いや、悔いはないというのは言い過ぎだったかもしれない。



 アケトもカルサもエイズにかかっている。

 今は単に延命措置を受けているだけ。

 アケトの延命期間は過ぎていた。細胞はもうじき破壊され、すぐに日和見感染して病気になって死ぬ。目に見えていた。

 死ぬ間際の最後の晩餐(ばんさん)

 弟の幸せを見れて、自分まで幸せになる。遊園地で見せた素顔。見た目ではクールで笑っていないように見えるが、アケトには楽しそうな表情に見えた。

 悔いを残さないためにできること……

 戦闘の耐えない環境で産まれ育った自分の最後も戦闘で終わりたいと思っていた。

 そのために必要なのは……


 最後の命。

 アケトは自慢の刀を手に取った。

人物紹介

「黒羽 アケト」②


能力:火炎/風力

属性:炎/風

武器:刀──紅薇刀(こうらとう)──

戦闘:風で軌道を作りそこに炎を流して遠距離攻撃。そして、近距離には風で勢いました炎をまとう刀で攻撃。

災害:焼死/風で飛ばされたことによる打撲

秘話:元はラベリング:ボスのポジションになる可能性があった。この話を書いてる最中に正直R-18の作品ぐらいになっていたので焦った。


次回は深夜3:00です

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