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20、黒羽 アケト (前編)

マリン「『前回のあらすじ』ですわよ」



カヤ「何なの、こいつ」負のオーラ


マリン「あら、そこにいるのは召使い」


カヤ「私は召使いじゃない」


ルサ「やっほー」


マリン「あら、執事さん」


カヤ「執事さんっ!?」



ルサ「うん、何故かそう呼ばれてるの。さあ始まるよ。今日の話は~20、黒羽アケト(前編)~だよっ」

 ブロックの積み重ねでできた建物。赤や青や黄色、カラフルな色があちらこちらお出迎えをする。

 LWS────

 レゴ・ワールド・スクエア。一世紀前に愛知県に建てられたテーマパーク。初期は主に子ども向け対象のものが多かったようだが、現在では遊園地のアトラクションが充実、アウトレットが開設、人気のキャラクターグッズは人気に、近くの水族館を合併。今では日本を代表するテーマパークの一つである。

 ブロック型のタイルを踏みしめる。

 空は快調。運気は満帆。

 アケトは異災警察のみんな (コラールを除く) とこの遊園地へと来ていた。


 アケトが異災警察に顔を出したあの日。アケトは単刀直入に「思い出作り」をしたいと言ってきた。

 そこで、議論が行われた結果遊園地に行くことになったのだ。

 日時はミドリとダイが怪我から復活した後。任務もない日。一応、待機組は必要だったのでコラールが残ることになった。一人しか残らないが、実質コラールなら一人でこなせる。

 コラールが待機していることに安心感が持てる。

 特に、オパルや黒羽が残らなかったことが一番安心する理由だったりして。


 ヒデとルサ、オパルがはしゃぐ。それを見てアケトは爽やかに笑っていた。

 ミドリはクールを装うが心の中では相当はしゃいでいた。嬉しみが隠しきれず所々、中の自分が出入りしてしまう。

 ダイとマリン、アケトがその様子を見て楽しむ。

 広大な敷地の中、周りにも巨大なアトラクションが居座る。それを見上げて頬を弛めた。

「ジェットコースター乗ろうぜ!」

「いいね! それ」

 ヒデとルサはジェットコースター向けて指を指す。

 ミドリも心の中で指を指していた。

 ただ、他のメンバーは消極的だ。

「ジェットコースターか。第五期生は絶対に楽しめないだろうね」

「だな。六期生。乗ってこい。俺らは下で見ているから」

 ダイがヒデに六人分のチケットを渡した。

 五人は賛成したが、カヤだけは乗る気ではなかった。

「の、乗るのですか? 私は遠慮しておきます。先輩達は乗らないようですし……」

「カヤちゃんも乗りなよ。六期生の絆を深めるいい機会だよ」

「ああ。一体感が出て良さそうだ。俺らが乗らないのは単純に高い所からの落下を日常的にやり過ぎていて乗るのが勿体(もったい)ないからな」

 ダイもオパルも黒羽も空を飛べる。事件が起きた時、遠い所なら大抵空を飛んで出向したりする。また、黒羽兄も能力で空を飛べる。

 シーナが近づいてきた。

「ほら、一緒に乗ろうよ」

 柔らかくゆったりとした白の服が風によって優しく靡く。手を後ろで組んで笑顔を浮かべた。少し赤めになった頬が可愛さを醸し出していた。

 そして「ほら」と言いながら手を握り、六期生の戯れる中へと進んでいく。力はなく、すぐに振り切れるが、雰囲気がカヤの足を動かしていた。

 ブロック型の階段を登り、ついにコースターの上に座っていた。

 偶然コースターの先頭となったのはヒデとルサだった。二人は子どものようにはしゃいでいた。見てるとこちらまでもが楽しくなっていく。

 隣同士となったミドリとシーナは話している。

「ボク、ジェットコースター初めてで。楽しそうだけど不安なんだ」

「そうなの? 大丈夫。落ちる時はこわいけど、こわいんだけど楽しいから」

「え、こわいの?」

 若気の至りでシーナの手を優しく触れる。

「大丈夫だよ。安心して」

 その様子を見ていたカヤは何とも言えない気持ちになっていた。

 え、できてんの?

 ミドリとシーナのカップリング。

 先頭のヒデとルサは犬猿の仲だけど、喧嘩する程仲が良い、と言われる通りに見える。ジェットコースターを前に二人とも意気投合して楽しそうだ。

 少しため息が出そうになりながら横を見る。

 マリンが余裕の表情を浮かべる。そして、カヤを(たしな)める。

「恐いの? ふふ、お子ちゃまにはまだ早かったようね」

「は? 恐くないし」

 と言ってみたものの、内心恐い。

 ダイの無茶ぶりのパトカーに乗ってからジェットコースターに恐怖心を覚えていた。マリンに対して怒りを剥き出し、ダイを恨む。

 心を怒と怨で沈ませている間にジェットコースターは動き出した。

 恐怖心に耐えられず大声を叫んでいた。


 死にかけの表情でそこから出る。

 前を歩く五人は楽しそうだ。

 合流するダイ達。

 調子と元気が増幅したヒデとルサが主導権を握った。

「次はお化け屋敷行きません?」

「いいじゃん。楽しそーじゃん」

 そこにオパルが重なって狂騒のハーモニーが響く。

 目的地に向かって歩き始めた。


 お化け屋敷に着くと、一人いないことに気がついた。

 マリンがいない。

 みんなと顔を見合わせる。

 辿り着いた答えは一つ────


 迷子だね!


 ため息が何重にも重なっていた。

 黒羽が、

「黒羽が空から捜してみよう。皆は漆黒(しっこく)に染まる暗黒世界の冒険を愉悦(ゆえつ)するといい」(※みんなはお化け屋敷を楽しんできたらいいよ)

 と言い、空に跳んで行った。

 一人抜けると空気がガラッと変わる。

 今度は黒羽の兄が言う。

「僕は少しやりたいことがあるから少し離れるよ。合流の連絡はまた後で送るよ」

 そう言って、行ってしまった。

 そこに便乗しようとカヤが言う。

「私も、お化け屋敷は遠慮して待っていようかな」

「いいの? 後でこのことをマリンが知ったら馬鹿にされそうだけど」

 オパルの一言にハッとする。

 思わず、

「いや、(お化け屋敷に)行きます」と答えていた。

 そして、どこかで対抗心を燃やしていた。

 ダイが提案する。

「大勢で行っても面白くないし、二人ペアずつで行かないか?」

 その意見に賛成が集まった。

 ここでカヤが割り込み仕切っていく。

「なら、まずはミドリとシーナのペアね」

 二人が面合わせる。

 シーナが限りない笑顔で「また、よろしくね」と言った。それを聞いたミドリは急に頬を赤らめ言葉を詰まらせていた。

 さっきから気になっていたが、ミドリはシーナのことを気になっているみたいだ。しかし、時々素直な気持ちを隠そうとして隠しきれていないのが見える。なら、この場を恋愛の場にすればいい。上手く行けばこの場で告白シーンが生まれカップル成立するかもしれない。

「次はヒデとルサのペア」

 このペアも逃せない。

 いつもは犬猿の仲。だが、喧嘩する程仲が良いというし、性格的にも似たりよったりの部分もある。こちらも期待できる。

「最後は残った私と先輩二人のグループにしましょう」

 オパルとダイがいれば心強い。先輩が二人も。これなら無事お化け屋敷を通過することができるはず。

 最初にミドリとシーナペアが進み。間隔を開けてカヤ、ダイ、オパルグループ。続いてヒデとルサのペアが行く。

 最初の二人が入口の暖簾(のれん)(くぐ)り、真っ暗闇の中へと進んでいった。



*



 水族館の中へと入っていく。

 水族館への入場料はLWSへの入場料と合併されているため、払う必要はない。ただ、イルカショーを含め一部の特別エリアの見学にはチケットが必要だった。

 人数分のチケットを持ってショーの席を確保するため受付にきた。予約した後戻ろうとしたが、水族館の中に知ってる人影を見つけて中へと入っていった。

 真っ暗闇を照らす青色。海の色が照らし出す。

 水族館の中を小走りで進む。

「ここにいたのか」

「あら、アケトさん。あなたも迷子で?」

「いや、僕はイルカショーの席確保のために別行動をしていただけだよ。今から合流しに行くから一緒についてきて」

 二人は青い館内を歩いていく。

 遠くでは女が二人を指さして「美男美女のカップルだ」と言い、羨ましいがりながら彼氏と楽しく会話している。

 ガラス越しにシャチが(およ)ぐ。それを見て、何かを思い耽っているようだった。瞳には哀しい過去が模写されているようだ。

 右手を強く握りしめている。

 右の瞳から少量の純粋な液体が頬を伝って落ちる。

「大丈夫かい。今はこのハンカチを使って」

 差し出されたハンカチで涙を拭う。

 哀しみを封印し、冷静さを取り戻す。

「ありがとうございました。思い出したくもない過去を思い出してしまって」

 その表情と声色と体内から発せられるオーラ。何か悟るものがあった。

「闇が深そうだね────」

 哀しい時間が終わりを告げた。

 一見変わらないように見えるがマリンの右手は皮膚の色と微妙に違う。ハンカチで拭う姿を見て気づいたのだ。

 静かに歩いていく二人。青の道は終わりに近づき、外の日差しが見えてきた。そこで、思い切って聞きたいことを問いかける。

「アクアさん。右手と皮膚が違う気がするけどそれは生まれつきかい」

「いえ、一応左手もですけど……」

 左手につけていた布を取る。そして、袖をたぐる。左腕は明らかに皮膚の色と違った。白色系とは真逆の黒色系の腕だった。

「両腕が義手ですの……」

 黒い雲が遠くの空に漂っていた。その雲は着実にここへ流れているようだった。



*



 作られた無音と作られた暗闇。視覚と聴覚が奪われる。

 さらに、吹き出される無臭の霧が嗅覚を遮り、感覚を邪魔する。味覚はまず役に立たない。

 静かに歩くミドリとシーナ。

 お化け屋敷の中二人で進む。頭の片隅にこびり付く強い記憶。心の底から泣いて、互いに抱き合うシーナと私(第7話参照)、振り返った記憶の中で異常に可愛く感じていた。その傍ら、私が死ぬと思った時に現れ頼もしい姿を見せるシーナ(第17話参照)、振り返った記憶の中で異常にカッコよく感じていた。

 まだ"好き"と自覚する段階には至っていない。

 だけど、意識しないようにしても何故か意識してしまう。

 唯一シーナが同性の雰囲気を醸し出すことで気軽に触れられる時があるのが救いだ。時々意識してしまうと触れられなくなる。

 ミドリはまだ何も気づいてはいない。

 恋愛に疎いせいか、気づかずに流されていく。

 手を繋ごうと考えたが意識が邪魔をする。何故か顔が熱くなって耐えきれなくなる。

 暗闇の中でお化けが恐怖を与えようとするが、考え事が邪魔して恐怖にも感じない。

 傍ら、恐怖を感じて身を縮めるシーナ。本能からか、擦り寄ってミドリの袖に腕を絡ませる。

 緊張感が解れた。さっきまでの意識は何だったのだろうと思う程に。同性の友達という感覚へと変わっていた。考え事は一瞬にして消えた。


 それにしても、しかし……

 悲鳴が後ろで何度も聞こえる。それもその悲鳴は見知らぬ声が多い。悲鳴の一つはカヤだと分かったが、それ以外は異災警察ではない別人の悲鳴が上がる。

 ふと不思議と思った。

 次の瞬間、オパルが目の前に立っていた。

 驚いて立ち止まる。少し心臓に悪い。

 遅れてダイがかけてきた。

「あれ~。先に行ってた二人に追いついちゃった」

 二人が合流して四人で徒歩を進める。すぐに外への暖簾を潜った。達成感が胸に広がった。

 しかし、疑問が残る。

 何故二人は先にきたのか。そして、残されたカヤは……

 遅れてカヤが覚束無い足取りでゴールに辿り着いた。

「なんで置いてくんですか……」

 彼女はここに来るまでに力尽きていたようだ。

 


 少しだけ時間を遡らせる。

 カヤ、ダイ、オパルがお化け屋敷を進む。

 お化けの奇襲。

 ダイもオパルも驚くことも恐怖心も感じることはなかった。長いこと死と直面した戦闘をし続けたことによって、恐怖心を感じる感覚が麻痺しているのだ。

 カヤは心強い二人のお陰で気持ちを安定させて進めていた。

 ここで、オパルは暇を持て余し悪巧みを思い浮かべた。

「ちょっと遊んでくる」

「おい、何する気だ? 悪い予感しかしないんだが」

 オパルは先に行き、ダイは追いかける。

 蔓がお化け役の従業員の皮膚に触れる。ゆっくりと進ませ、服の中に入れることで直接異質な感触を与える。お化けから悲鳴が上がっていく。

 それに続いて人間のものではない異質な腕が目の前にいる。暗闇で人間の姿は見えない。ただ、目の前には真っ黒の手のようなものが見える。

 畳み掛けるように悲鳴が響く。

 オパルの悪行は止まらず先に進む。それを止めるために進むダイがそれを悪い方に影響させる。お化けの悲鳴が鳴り響いていた。

 一方、カヤは一人取り残されてしまった。

 一人心寂しく歩いていく。

 お化けはすぐ先程受けた恐怖に負けじとお化けとしての努力を増やす。力の入った演技がカヤを数段に恐がらせた。

 また、先行った二人のせいで響く悲鳴がカヤをさらにビビらせていた。

 お化けの悲鳴に、カヤの悲鳴が加わった。

 心もとない。それでも進む。その間に精神はすり減っていた。



「……ということがあったのよ」

「なるほど。大変だったね」

 最後はヒデとルサがくるはずだ。

 その二人の足が見えた。もうやって来る。

 暖簾をのしあげて出てきた二人は互いに殴りあっていた。

「いや、何事────?」

 二人は互いに頬を抓りながら言う。

「「こいつがっ!」」

 そこから先の言葉は二人の言葉が同時に重なっていて聞き取れなかった。

 よくお化け屋敷で喧嘩できるね、と関心してしまう。

 お化け屋敷で喧嘩する人を初めて見た気がする。

 いつの間にか苦笑いを浮かべていた。



*



 お化け屋敷も終わる。

 そこに、アケトがマリンを連れてやってきた。続いて黒羽が「見つからなかった」と言って戻ってきた。

 こうしてまた一つに戻った。

 アケトがイルカの描かれたチケットを見せた。

「次はイルカショーを見に行こう。いい席をとってきたからさ」

 彼の計らいで次はイルカショーを見に行くことになった。


 水族館でショーの席に座る。

 イルカが飼育員によってパフォーマンスを見せていく。三匹のイルカコンビネーションが興奮を憶えさせる。

 水飛沫が飛ぶ。

 滑らかな身体が水を弾き、水の輪を作っていた。


 イルカショーの次はアトラクション。

 ヒデやルサにつられて、子どもに戻って無邪気に遊ぶ。

 楽しい時間は過ぎていき、いつの間にか太陽は落ちていた。

 帰り際、異災警察メンバーで集合写真を取ることにした。

 アケトがカメラを構える。

 座るのは六期生。左側からマリン、ミドリ、シーナ、ヒデ、ルサ、カヤ。その後ろで立つのは左側から黒羽、ダイ、オパル。

 綺麗な背景を舞台にシャッターが切られる。


 (きら)びやかな記念写真が保存された。



 明日は仕事がある。

 みな帰るため足を動かしていた。

 もう改札前へと歩いてきた。

「ありがとな。こんな機会を企画してくれて」

「いや、いいんだ。「()()()思い出」を作りたかったからさ」

 最後の思い出────

 そこが気がかりで質問しようとした途端、あることに気づく。

 一人いない。

 マリンがいない。

 まさかの迷子。


 一方マリンは。

 道に迷いながら走っていた。

 自販機で飲み物を買っていたら置いていかれて、追いかけて行ったら迷子になったのだ。

 近くに地図がある。その立板に近づいた頃、アナウンスが流れる。

《迷子のお知らせです。マリン・アクア様、マリン・アクア様。今すぐサポートセンターまで起こし下さい。繰り返します……》

 恥ずかしく感じる。

 早く戻らなければ。

 地図を見てサポートセンターまでの道を確かめる。

 マリンは走って目的地まで進もうとする。


 だが、

 サポートセンターに行こうとして、さらに迷子となっていた。

人物紹介

「黒羽 アケト」①


身長:高い

性別:男

年齢:31歳

髪色:オレンジ系

所属:紅蓮会

趣味:古文書を読むこと

特技:剣術

特徴:爽やか系イケメン。強い。

信念:誰かを守る殺害。

いし:アゲット (行動力)


次は21:00です

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