11、突撃! 虎眼株式会社
ダイ「虎眼編に入る前におさらいだ」
〇ストーリー
・異災警察は平和を守る警察の組織である。『悪魔の肉片』と呼ばれる存在は危険なため製造、及び所持を禁止している。警察としてそれを取り締まる。
・『悪魔の肉片』を製造している組織がある。そこを捕まえる使命があるが、その組織が分からないため一つずつ怪しい所を確認していくことに。そこで虎眼会社の調査をすることになった。
〇登場人物
・異災警察
ミドリ・フローラ … 異災警察の一員
木更津 大 … 異災警察の一員
アーダナ・コラール … 異災警察の長
椎名 パイラ … 異災警察の一員
・虎眼株式会社
新田 ガーズ … 虎眼株式会社社長
三枝 龘 … 虎眼株式会社用心棒
パタ … 虎眼株式会社重役
・その他
焔 トーン … 探偵
焔 アカナ … 元異災警察司令部。故。
水砥 煬良 … 虎眼株式会社従業員
水砥 瑞人 … 孤児院の少年
カプセルに入っているのは真っ黒な原型を持たない存在。それがカプセルから出た瞬間『悪魔の肉片』と変化する存在。
「ご苦労さま。例のブツは変わらず送り届けておくよ」
新田ガーズは高級の椅子にどっぷり座る。椅子を回らせ半回転させる。背中越しに進む彼女は部屋のドアを開いて出ていった。
その途端にヒラヒラと舞いゆく白い羽。その羽が部屋の片隅に落ちていた。
*
「I am トーン様の登場だぜ」
部屋の中が白けていった。
無言の圧力をかけているが彼には効果がないようだ。
「名探偵の登場を喜べよ~。お前らが不甲斐ないから頼ってきたんだろ? 僕に!」
言うことが躊躇われる。反論する気になれない。
静けさの残る中でダイが介入した。
「お前を呼んだのは今回の調査はグレーゾーンで真実を隠蔽するかも知れないからだ。刑事として取り扱えないかも知れないから民事を取り扱える奴が必要だっただけだ」
ムッとしたのか、口を尖らせて突っかかってきた。
「じゃあ、名探偵の僕じゃなくて、バルムント・ペルペルでも良かったのか?」
「誰だよ。そいつ」
「僕の知り合いの一人さっ! 僕よりも劣る探偵だよ」
少し自慢した顔になる。これ以上言い返さない方がいい、という判断の空気が一致した。顔色を伺い頷く。
軽く煽てるだけでそれに乗ってくれた。
今回の件に協力してくれるようだ。
虎眼株式会社────
そこは本部の周りを巨大な壁で包み込み、その中に織り成す社員達を並ばせている大きな会社である。まるで城下町のようだ。
本部のすぐ近くには従業員が住んでいるようだ。彼らはなぜか皆引きこもりであり表に出てこない。そこで闇の噂が立っている。真偽は分からない。
壁に囲まれた会社は閉ざされた空間。何が起きているかは外からでは分からない。
ゲストとしても分かるのは会社の一部だけで大半は謎に包まれている。その部分で悪魔への実験が行われているかもしれない。
「今回は二手に別れて調査及び捜査をする」
ダイ、ミドリ、焔 トーンは会社の内側に潜入。一週間程滞在してその真偽を確かめる。一方で、コラールが虎眼にアポイントを取って直接会いにいく。
コラールに目を向かせつつ、潜入調査及び捜査から目を逸らせる。そうすることで素の状態で調べることができる。
ホワイトボードを埋める文字や写真を見ながら、覚悟の意志を固めていったのであった。
*
緊迫した雰囲気。その中で取り繕った設定、思考と心底思う考えを織り交ぜて話していく。椅子にかかり、姿勢正しく座る。膝の上に置いて重ねた手のひら。ビシッとしたリクルートスーツが真面目な印象を与える。
必要なのは誠実さ。そこに働きたいという意志。そして、休むことよりも働いて日金を稼ぐことを大事にする心。それらを伝えること。
面接は終わり、後日合格した封筒が届く。
無事ミドリ達三人は虎眼株式会社の従業員になることが決まった。
提供される宿。そこで暮らすことを進められる。
会社の方には申し訳ないが、調査が終われば退職する。お詫びは国が出す。
そんなことをやる程、虎眼への調査に立ちはだかるものが大きかったのだ。
入社当日。
先輩となる社員がついてくるように促した。
「あなた達はまだ従業員じゃなくて研修生だから。三日間は社員の言うことを聞きながら提供された研修生用の宿で暮らすように」
所々空いている壁。そこから行き来ができるようだ。ドアのようなものはない。ミドリ達は壁の穴を通り越した。
大きな塀壁に囲まれた中には、家と工場が織り成す社会が広がっていた。研修が終われば、目下の家を与えられるのだろう。
一人一人に部屋が与えられた。
決められたガイドライン。朝起きて昼仕事をして夕方からは自由時間。仕事は研修生として仕事のノウハウを見たり教えて貰ったりした。それだけで日は落ちていく。
三人は暗号化された指文字で状況を伝える。
盗聴などがあるかもしれない。その通りでトーンは盗聴器の存在に気づいていた。ただ、カメラの方はなさそうだ。
そこでふるい落とすのだろう。会社に不利となる人物をふるい落とす。例えば、捜査しにきている警察など。
心の中で確信する。この会社──怪しい。
新入社員を演じきった。ようやく四日目となる。
新たな住まいが提供された。
そこは寮であった。ミドリは女性寮、ダイとトーンは男子寮へと入居した。
中は素朴な感じだ。旧型のテレビはある。ベッドは四足で、布団や枕が支給された。後は机に、冷蔵庫に、タンスがあるぐらいだ。
携帯が支給されたが、ネットに繋ぐことはできず会社の向こう側、壁の外側への通信は遮断されていた。連絡が取れるのはこの壁の中だけのようだ。
トイレと風呂は一つずつを共同して使う。
プライバシーは確保されていて盗聴器や監視カメラなどはなかった。
一日の流れは決まっていた。
朝七時には起床して、寮では決められた当番が朝ごはんを作る。食事を初め身支度を済まして、九時から十時ぐらいに出勤する。十二時から十三時までは休憩があり、十八時に寮へ帰宅する。昼の休憩を除いて二時間程度休憩することができた。その後は自由時間だったが、二十三時になると電気を止められてしまうのでその時間までには寝床へつくしかなかった。
休みは週三日。どこで休むかは決められる。
風邪をひいたら休みになる。思っていたよりもホワイト会社であった。
夕方、寮の仲間同士で食事を取った。
机を囲んで駄べり始める。
新入りが話のスパイスとなって雑談が盛り上がった。対角線にいる女性が話す。
「外の世界ってどんな感じ?」
どう答えればいいか分からない問。
「ま、まあ、何も変わってないと思いますけど」
「あっ、数十年前と変わってない? 数十年ぶりに壁の向こう側に行ってみたいなぁ」
どういうことだろうか?
数十年前? 久しぶり? 話の流れ的には壁の向こう側へは行けていない? 故意で出ていかない訳ではない?
会話に重い幕がたれかかっていった。
*
「そうですか。これで私は失礼します」
そう言って部屋を去っていった。
出ていく異災警察のコラールという男。彼の背中を眺めながら足を組んで考えていた。
ついにバレたのか?
しかし、バレるような代物ではないはずだった。壁に囲まれた閉鎖的空間。そこから怪しまれる情報が出回ることは全くない。徹底して閉鎖しているのだ。出回っては困る。
ガーズは部屋に飾られた虎の像を眺めていた。
バレたら不味い。速く隠さなくては……。
虎眼は従業員を拉致している。外に出ることは認めないし、外への情報発信も認めない。代わりに、彼らには良質な労働環境を与えている。理不尽な行為はしない。ハラスメントなどは認めない。徹底した管理でその場を動かしている。
金は必要程度しか渡してない。外には出れず、贅沢はこの中でしか認めていない。封鎖された中での贅沢にも限度がある。それなら限度以上の贅沢は要らないだろうから、虎眼の資金に回せばいい。
拉致に、不当な支払い。
警察にバレてはいけない案件だった。
中から外には出れない。さらに、電波はかき消される。傍から見ても単純に労働者自身が出ていないように見せかけている。また、外からでは中の様子は一切分からない。だからこそ、安心していたが彼との面会によって油断大敵だと思い知らされた。
警察の捜査は退けるが得策だ。これに尽きる。
これ以上怪しまれてはいけない。まずは表面を取り繕った姿を見せて帰って貰おう。
神妙な面持ちでいた。鳴り響く電話の音が張り詰めた糸を弛ませていく。
相手はアワルだった。
彼は異災警察が会いたいと言ってきたこと、そして、面会したこと全てお見通しであった。
さらに、異災警察の作戦が全て筒抜けだった。
コラールが来たのは油断させるため。実際は異災警察二人と探偵一人が潜入して調査している。
最近入社した新入りは三人。巧妙に取り繕っていたのだろう。彼らが警察側の人間だと気づきもしなかった。いや、コラールという存在が罠への意識を遠ざけていたのだろう。
もうその三人は秘密を知っているだろう。彼らをクビにして返すことは危険だ。
アワル曰く、一週間後再び異災警察が来るようだ。そこで不審な所があれば一気に内部を捜査しにくる。虎眼の闇もバレるようだ。無下に三人を抹消しても不審と思われるだけだ。
その三人は一週間後にいないと不審に思われる。しかし、彼らと外の異災警察が出会ったら虎眼の闇は即バレてしまう。
前門の虎後門の狼だ。
前にも後ろにも進めない。ましてや動かなければ虎も狼も近寄って殺しにくる。結局待ってても無駄死にになるだけ。
机に肘をついて考える。
あることを思い出す。
最近『悪魔の肉片』を手に入れた。
『悪魔の肉片』から能力の塊を抜き出すことで、少量で大きなエネルギーを手に入れられる。例えるなら「原子力発電」である。少量のウランで相当のエネルギーを供給できるが、忽ち事故が起これば大損害となる。この『悪魔の肉片』も似たようなものであった。
原発ならまだ県の一部に被害が及ぶだけだろう。しかし、『悪魔の肉片』は日本全体、最悪世界にも被害を及ぼす可能性があるとされる。そこで政府は『悪魔の肉片』を製造することも持つことも禁止しているのだが……
虎眼はそこにも手を染めていた。
この案件も警察にバレてはいけない要素だ。
抱える秘密が多く、明かせることはできない。
八方塞がりだ。
塞がっていく思考。思考が収縮していく。
収縮しきれなくなった思考は破裂した。
気づけばガーズは悪い笑みを浮かべていた。
「彼らには死んで貰うことにしよう。自然現象で『悪魔の肉片』が現れ、殺害したという名目上で」
ミドリ、ダイ、トーンの写真を机に置き、作戦を練り始めていった。
*
日が昇る。
仕事が始まった。ひたすら事務作業を熟すといつの間にか昼休憩となっていた。
ミドリは仲間に会うために彼らのいるとされる外へと向かった。
機械となる鉄の板を運ぶ仕事。そこの休憩所に二人の仲間がいた。
ダイと水砥煬良で話している。瑞人の父親だ。
ダイと煬良は同じ寮だったようだ。ダイによると自らの身分をバラシ、瑞人との出会いを説明して、受け取ったメッセージを渡したようだ。貰った瞬間、涙を流して喜んでいたそうな。
しかし、なぜ彼は瑞人に会いに行かなかったのだろう。そもそも、父親がいるのに孤児院に引き取られることが不思議だ。ミドリはいつの間にかそんな疑問をぶつけていた。
返ってきたのは暗いトーン。
「あなた達はまだ新入りだよね。教えておくけど、ここからはもう出られないから。入ったら二度と戻れない。そんな場所さ、ここは。こんな場所に瑞人を呼びたくはなかったんだ」
それを聞いたダイは疑問点を聞く。
「二度と出られないってどういうことだ?」
「実際に行けば分かるよ」
煬良の進めで場所を移る。壁に空いた穴。ドアはなく一見行き来も自由にできそうだ。
ダイはそこに向かって歩いていく。
しかし、そこに辿りつくまえに体が弾き飛ばされそうになっていく。壁に近づく程強くなる。すぐにダイは飛ばされ、壁の中に広がる地面に尻もちをついていた。
「ほらね。脱出することはできない。私達を阻む磁力が働いているから……」
「すまない。詳しく教えてくれ」
「まあ確証はないけど、ここには強力な磁砂鉄が豊富にあるんだ。その磁砂鉄が微量だけど食べ物とか飲み物とかに入っているようで、摂取すれば体の中に磁砂鉄が溜まる。磁砂鉄は磁石のN極を示しているんだけど、体の中に含まれることで体全体がN極を示すようになるんだ。壁には強力なN極の磁波が働いていて、N極の壁にN極の体が近づけばどうなると思う?」
「互いに反発し合って飛ばされるだろうな。壁が相手なら確実に人は飛ばされる」
「そう。私達が逃げられないのは体の中に磁砂鉄があるからなんだ」
磁砂鉄は強力な磁石の効果を持ち、N極を示す砂鉄である。
それを食事を通して体に蓄えていくことで、体全体に磁砂鉄が溜まる。
そして、壁の外に向かう時に壁にあるN極の磁波と体の中の磁波が衝突し合い、反発して吹き飛ぶ。実際、壁が吹き飛ぶことは早々ないので人間だけが吹き飛ぶ。
つまり、磁砂鉄を含んだ人間は壁の向こう側に行くことはできない。
ミドリが閃いた。
「それで三日!」
「何か気づいたのか?」
「人は三日間水を飲まないと死ぬと言われてます」
三分息をしない。三日水を飲まない。三週間食事を取らない。これが人の限界を示す三つのポイントだ。
「なので磁砂鉄の入った水は必ず三日間あれば生きるために飲む。最初の研修は確実に磁砂鉄を体の中に入れるためだったんですよ」
「なるほどな」
煬良は頷いた。
「そういやそうかも知れないな。もし無摂食で磁砂鉄を排出したとしてもその時は力が出なくなる。腹は減っては戦はできぬ、というように脱出してもその先にいる門番に簡単に捕まって戻されてしまう。もはや、逃げ出す道などないんだ」
壁の中に作られた社会。
そこの住民は外の世界にはいけない。閉じ込められた住人達だった。
壁に囲まれたこの場所。
鳥かごの中を錯覚させていた。
キャラクター紹介
〘サタン〙①
身長:211cm
性別:オス
年齢:────
髪色:────
所属:(悪魔)
趣味:────
特技:────
特徴:浮いている真っ黒な存在。長く伸びた爪が特徴的。人間ではなく、真っ黒な九尾狐みたいな様相。
信念:────
いし:────
次回:16:00




