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短編ホラー~階段

作者: 猫田蛍雪
掲載日:2019/08/13

 私が、諸君に話をする前にことわっておきたいことがある。

 それは、この短編小説はホラー要素があるということである。

 それを理解していただけたならば早速、話をすることにしよう。

 この話は、ある日の夕方頃、大学祭の打ち合わせのために代表の一人として、私と大熊が居残っていたところからはじまる。

 大学祭というものは、普通であるならば、学生が主体となって行うべきものであるが、私の大学では、生徒のほとんどがフルで稼働しているのにもかかわらず、人手が不足しており、重要な基本方針などを決定する運営に人材がまわっていないのが現状であった。

 ところで、なぜ二人だけが、居残っているかというと、この忙しい時期において大学内の教授らが、ストライキでも起こしたかのように一斉に他方の講演会や学会へ行ってしまったのである。

 いつもしっかりとしており、みんなから頼られている学生のゆうきもいくつものアルバイトを掛け持ちしながら、時間を見つけたら積極的に参加してくれるが、ハードなスケジュールに彼自身が壊れてしまうのではないかと、私は心配していた。

 今日は、大学内で使われる施設を確認するだけなのだが、難航していた。

 それは、学生がなかなか提案書を出さない、時間割の変更が激しく利用できる施設が確定できないといった問題があるからだ。

 そもそも大学祭の準備期間が短いという点もあるが、大学の基本的な機能である研究や勉学に重きを置いており、授業時間も決まっているので、なかなかその他の事に時間を割くことは難しいことであった。

 このような制約がある中、文句一つも言わずに、誰もが積極的に動いていたことが、大学全体が大学祭を楽しみにしていることを物語っていた。

「さてと、次は来客に利用してもらう階段について確認していこう」

 大熊は、大学内の地図と大学祭用のリストを照らし合わせながら行った。



 この大学には、理学部、工学部、教育学部などといった多くの学部があり、大学の特徴としては、海外からの研究者が多く利用している研究所が多くあった。

 だから、利用できる階段や通路、施設などを吟味しないと機密情報が漏れてしまう恐れがあった。

「この階段はずいぶん使われていないようですが、リストでは使うことになっていますね」

 私は不思議そうに大熊に言った。

 この階段は、研究機材を多く保管している部屋に続くものであった。

 中央に階段ができたり、エレベータができてしまったりしたため、古くなった階段の利用者は少なかった。

「そうだな。目視しただけでは、この古くなった階段を利用して安全かどうか判断するのは難しいであろう。だから、業者にチェックしてもらう必要があるだろう」

 大熊は、古くなった階段を眺めて言った。

 それから、しばらくして私たちは確認作業を終了し、帰ることになった。



 次の日、業者が来て、例の古くなった階段をみてもらった。

 ついでに、その他の階段や施設など不備がないか確認してもらった。

 確認を終えた業者が、地図の中央部分を指しながら言った。

「この中央階段は、全体的な痛みがひどいですな。私の勝手な予想ですが、長年利用されているので、痛みがひどいのかもしれませんな」

 その言葉を聞いた大熊は、スケジュール表を確認しながら聞いた。

「2、3ヶ月で修理できますか」

 業者は、大熊の質問に難しいそうな顔をした。

「それは不可能ですね。フルで修理したとしても、最低で半年はかかります」

「そうですか。ありがとうございました」

 大熊と私は、業者に点検代金を支払った後にお礼の言葉を示した。



 業者が去った後、大熊は私を見て困ったな、という顔をして聞いた。

「この中央階段が利用できないとなると、古くなった階段を利用するしかないな」

 私は古くなった階段の方向を眺めた。

 仮に古い階段を利用するとなった時に、どんな通路で来客に利用してもらうのか・・・・・・ 。

 また、考える仕事が増えた。

「さて、どうしましょうかね。くまさん」

「そうだね。エレベータを利用させる訳にもいかないし、案としては古くなった階段をどのように利用させるかだね」

 なぜ、利用法をここまで、考えるかというと前にも述べたように、古くなった階段の先の通路は、研究機材が置かれている部屋に繋がっているのであって、来客に利用してもらうのは、リスクがあった。

 いかにして、その通路を早く抜けてもらうかが、課題であった。

「来客を盗賊として疑って見るつもりはないが、絶対安全かと問われた時に、どんな人が来るか想像できないから全くいえないのだよ」

「くまさんが、おっしゃることはよく分かります。誰しもが自由に出入りできる中、賊が全く来ないとはいえないでしょう」

「つまり、利用者が足を止めないで、利用してもらう案を考えなければならないということですな。短い期間で修正できる案を学生たちと話し合うことにしましょう」



 次の日、学生たちに事情を説明した。

 そして、学生と私たちが話し合った結果、お化け屋敷の場所を古い階段を利用して行うことにした。

 これならば、よっぽどの物好きでない限り、お化け屋敷の中の通路で立ち止まる者はいないだろう。

「この案で実行することにしたとして、お化け屋敷の出口にまで到達した来客はどうやって、上の階や下の階へ行くのですか」

 私は不思議であったので、大熊に尋ねた。

「上の階に行くときは、やむを得んが、私の研究室の前を通ってもらうことにする。下の階へ行くときは、来客には苦労してもらうことになるが、別館に続いている通路を利用してもらって別館へ行ってもらう」

 この大学に勤めて、2、3年程になるが、この大学は不思議な構造をしていると思った。

 なぜ、そこまでして本館を利用しなければならないのか。

 本館を利用せずに、素直に別館を利用すればいいのに。

 私はそのように考えたが、大学祭まで時間がない今はそのようなことを言っている場合ではないと思った。

「早速、お化け屋敷を学生に作らせることにして、私たちは来客用のパンフをワープロで作成しよう」

 それから、私たちはその他の準備に追われてしまい、古い階段のことなど忘れてしまっていた。



 大学祭の前日の話となる。

 私と大熊は、学生とリハーサルのために、イベントや模擬店などを自分たちで体験して不備がないかどうか確認していった。

 確認は順調に進んでいって、お化け屋敷の出来具合を確認する時となった。




 ヴァンパイヤのような仮装をした学生が、受付をしていた。

「これは大熊先生方ようこそ。今ならば、担当の教授の笑い話が聞けますよ」

 受付の担当は、にっこりと笑みを浮かべた。

「ばか者。お化け屋敷で、来客が怖がる前にどうして君の担当教官の笑い話を聞かなければならんのだ」

 大熊は、受付の学生に言った。

 その学生の家はお金持ちの家であり、大学では坊ちゃんというあだ名で呼ばれていた。

「入場料は、100万円になります。お支払いが出来ない場合は、ローンもございますよ」

 受付の学生は、冗談を言ったが、大熊は、5点減点、と言った後にノシノシと熊が歩くようにお化け屋敷の中に入っていった。

 私も大熊に続いてお化け屋敷の中へと入っていった。

 大熊は、手招きをすると大声で怒鳴った。

「遅いぞ。君、私を置いていくとは、どんな根性をしているのだ! 」

 大熊は乱暴な言葉で言った。

 しかし、大熊の足を見ると震えており、怖いのであるということが分かった。

「すいませんね」

 私は、小さな声で申し訳なく言った。

 さて、通路を歩こう。

 テトテト・・・・・・ 。

 しばらく歩いた後に、私は大熊に質問する。

「くまさんに質問ですが、お化けがいないお化け屋敷があるのですか」

 大熊は、何が言いたいのか分かるようであったが、真面目な回答をした。

「つまり、お化けが不在のお化け屋敷は面白くないと言うのだな」

「ええ、具体的に言うならば、受付に金を取られただけということになりますね」

「あの学生を担当教官に注意してもらわねばならないな」

「ええ・・・・・・ 」

 そして、しばらくどうでもよい会話を繰り返していてが、とうとう大熊の方から本題に入った。

「なあ・・・・・・。このお化け屋敷は、お化けが出なくて奇妙だな・・・・・・ 」

「そうですね・・・・・・ 」

「私と君とは、科学の研究者であって、オカルトを信じる訳にはいかんのだが、どうやら非科学的な場面を今、体験しているようだ・・・・・・ 」

 大熊はそう言った。

 落ち着いたしっかりとした声で、自分を勇気づけるように言っていたが、怖がっているのは明らかであった。

 私は少し間を開けた後に、大熊に聞いた。

 「それで、このまま進みますか・・・・・・ 」

 その問いに、大熊は奇妙な回答をした。

 「このまま進めば、いずれは出口に着くとは思う。しかし、そのゴールが、普通のものであるか、それとも黄泉の国にたどり着くものであるかどうかは怪しいものだよ。逆に、戻っても入り口は遠くなりすぎていて、全く見えない。すなわち、自ら進んで屍になるか、屍になるまで、歩くかの二択ということになるのだよ」

 すなわち、大熊が言いたいことは、助かる道がないということである。

 私たちはどうしたら、元の世界へ戻れるのか。

 分からないが、カギとなるのは、「古い階段」ではないかと感じた。



 私たちは、歩くという動作を休憩という動作に変更して、座り込んで考えることにした。

 いや、むしろ今までの人生の反省会を二人でしていた。

 大熊は、エアの酒に酔っ払ったような声で、私に言った。

「ああ、学生時代の頃、思いを寄せていたあの方に告白していれば、もっと明るい未来であったかもしれない」

 大熊の失恋話をしているが、私はかまわずに言った。

「私なんか、浪人して二流大学ですよ」

 その言ったことに、大熊が反応した。

「君は二流大学だろう。私なんか三流大学で、今じゃあ大学の教授さ」

「それは、すごいですね」

「すごいだろう。馬鹿にしていた友人、先生、親、みんなが腰を抜かしたよ。私は笑った。だから、自分を過小評価するな」

 私たちが、そのような反省会を無限と思えるような時間していた。

 そして、私たちはいつの間にか、出口に出ていた。

 この出口は、黄泉の国ではなく、大熊の研究室の前であった。

 私たちは、我先にと大熊の研究室に逃げ込んで、電気をつけた。

 そして、時計を見ると、1時間ほど経過しており、大学祭の確認作業へと戻った。

 学生たちが、私たちを探しているのを見つけて声をかけた。

「先生方、どこへ行っていたのですか。お化け屋敷を制作したグループの人たちが、いつ確認するのかと心配していましたよ」

 学生たちの言葉から、私たちはあの時、お化け屋敷に入ったのではなく、大熊が言っていた黄泉の国へと続く入り口に入ったのかもしれないと思ったのであった。


 終わり

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― 新着の感想 ―
[良い点] 丁寧に書かかれてるなと思いました。私は丁寧に書くのが苦手で、感覚的なことを、書くことがほとんどなので、細かく書けなくて。
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