俺の異世界生活は間違っている!
【〈1話〉俺の異世界生活は間違ってる!】
「というわけで貴方を貴方が今までいた世界とは別の世界、いわゆる異世界で生き返らせてあげま〜す!」
まるでお決まりかのように目の前の自称『神様』は、俺にそう言った。因みに、何故俺がこんな事になってるのかと言うと……
【数時間前……】
「はぁ〜最近なんにも面白いこと無いなぁ〜」
俺、姫百合 瀬奈はどこにでいる高校生3年生で部活も引退し、進路も決まっているのでこの有り余った時間を退屈して過ごしていた。勘違いされる前に言っておくが、俺はれっきとした日本男児だ!苗字は母親方だから仕方がないが、名前がなぜこうなったかというと産まれて来るまでずっと女の子だと聞かされていた俺の両親はそのまま名前を決めてしまい男だと知った時は、今更新しい名前を考えるのも大変だと思うし自分たちが1番最初に考えた名前だからという事でこのままだった。もちろん中学までは幼稚園からの付き合いも多く名前に関してなにも苦労はなかったが、高校生にまでなると数少ない知り合いも別のクラスになり完全に自分のクラスのネタにされた。まぁだからって名前が嫌いな訳ではないがそのおかげで友達と呼べるような奴が全くいなかった。別に勉強も平均ぐらいはできたし、何故か厳しい事で有名な運動部に所属していたのでスポーツもそこそこできていたので悲しくはなかった。
まぁここまで俺のことを説明してきたが、何もかも普通な俺でも名前以外の個性が1つだけあった。それは〔運がとてつもなく悪い〕という事だ。そんなのは自分が思ってるだけという人もいるが、じゃあお前達は味わったことあるのか『外を歩いていれば鳥の糞が当たること高校時代だけで30回以上、新しいゲームの発売日にお店に並んで直前で売り切れたこと12回、ロシアンルーレットで必ず当たりを引く……』正直もっとすごいのもあるのだがこれ以上語ると卑屈になって来るのでやめにする。そんな俺が暇すぎたので散歩でもしようと外に日傘(日を避けるわでなく鳥の糞警戒用)を持って外に出ると目の前に、夏休みも真っ只中の平日のお昼近くにもかかわらず長袖長ズボンの黒ジャージでフードを被った多分男だったと思う(顔を見ていない)が玄関の目の前にいて呆然としていた。
「えっと……」
俺が次に味わったのは腹部から伝わる激痛と相手の服に付いている俺の血だった。そう、俺はたまたま空き巣に出くわしそのままナイフか何かで刺されて死にました(笑)
「可愛そうですね」
目がさめると何もない真っ暗ところに俺とまるでアニメやゲームのキャラクターの様な女性がそう呟いていた。俺は正直こんな人は現実にいるわけが無いと知っているので確実に俺は死んでいてあの人は天使か別の何かなのが直ぐに理解できた。
「随分と落ち着いておられますけど大丈夫ですか?」
確かに大抵の人なら慌てるか夢かと思うが今まで最悪の事ばかり味わってきた俺は悲しみとかより自分の運の悪さに笑いがこみ上げてきた。
「大丈夫です。ただ本当に死んだと思うと面白すぎるくらいで、どんだけ運悪いんだよ俺(笑)」
そんな俺を見た女性は心配そうな顔をしたがすぐに今の状況を教えてくれた。
「え〜と、死んでいる事は自覚しているようですのでそれ以外の事でご説明させていただくと、私は貴方の世界でいう神様です。貴方があまりにも可愛いそうでしたのでここにお呼びしました。」
可愛そうと言われるのは正直皮肉ってるようにしか思えないはずだったのだが何故か彼女に言われると安心したし、それ以上驚いたのが俺が想像していた神様と感じが違いすぎる。見た目は俺と同じ年くらいでスタイルも完璧だった。
「神様ですか?てっきり天使かと思ってました。神様って年老いた老人ってイメージが強かったので。」
「確かにその様な方も居ますね。でも神というのはそれぞれの人間に1人ずついますし、その神様の恩恵をへて人間は生活します。貴方の場合は私だっただけです。」
それは、そんなに長く生きていなかったけど初耳だった。
「それで、神様が死んだ俺に何の用事があるんですか?もしかして、可愛そすぎるから生き返らせてくれるんですか?」
俺はストレートに聞いてみた。
「生き返らせるというのは少し違うかもしれませんが、そんな感じです!」
そして、冒頭に戻り現在である。
『異世界生活』ゲーム、アニメ、マンガ好きなら誰もが憧れる出来事。もちろん俺も凄く嬉しかった、なにも苦労しなくて済むチート能力を入手して可愛い女の子達とのハーレム生活……ありがとうございます!
「しかも今回は私も一緒に同行するのであんな死に方もさせません!」
キマシタワー!なんと、こんな可愛い神様が一緒に付いてきてくれるなんて最高でしかない。と心の中ではテンションMAXなのだが俺は落ち着いて質問してみた。
「ありがとうございます。ところで俺が行く世界はどんなところなんですか?」
まぁどんな世界でも楽しいとは思うのだが一応聞いてみたかった。
「えっとですね、名前は『エリノス』人間や獣人、エルフなどが暮らす世界で、少し国同士の争いもありますが比較的平和な世界です。」
典型的なファンタジーの世界でさらにテンションは上がる俺であった。
「えっと魔法とかもありますか?」
「もちろんありますよ、ついでに魔物いますけど。」
「Perfect!」
歓喜極まって口に出して叫んでしまった。着いたらます何をしようかなぁ〜そんな事を考えていると
「喜んでいただけて良かったです。それでは早速移動しますね。」
これから異世界での超楽しい生活を想像しながら俺の意識は薄れていった……
「……ください」
「起きてください!」
そんな声が聞こえてきて俺は少しずつ意識を取り戻していった。
「目が覚めましたか?」
目を開けるとそこにはさっきの神様がいて周りは完全に森の中だった。
「ここが異世界ですか?」
「はい、間違いなくエリノスです。」
と言い彼女はいかにも神様の技術らしい宙に浮くパネルの様なものを開いて確認し始めた。そういえば神様にも名前はあるのかと思い訪ねてみた。
「なんだかずっと神様と呼ぶのもアレですので名前とかはないのですか?」
すると彼女はパネルを操作しながらこちらを向いて、
「確かにそうですね。もちろんちゃんと名前がありますよメシール・リランティア・スルトといいます。呼びにくいのでメリスとお呼びください。今、瀬奈さんの状態を確認いたしますので少しお待ちください」
と、ここまで凄く順調の様に見えるがここからが俺の間違った異世界生活の始まりだった。突如さっきまで笑顔に話していたメリスの顔が急に焦った顔に変わった。
「ん?どうしたのですか。何か問題でも発生しましたか?」
一応心配なので尋ねてみるとメリスはパネルをこっちに向けてきて言葉を詰まらせながら話してくれた。
「えっとです今、瀬奈さんの状態いわゆるステータスを確認したのですが……」
「えっ?……」
俺は絶句した。そこに書かれていたのは殆どのステータスがオール1で『幸運』という欄に至っては−99の数字が見えた。もちろん特殊な能力とかも何も無しだった。
「……どうゆう事ですか。」
俺は言葉を振り絞って聞いてみた。
「え〜と……能力の調整失敗してしまった様でこれは、もう転生した後ではいくら神でもいじれないんですよ。」
それは少し、いや内心かなり残念だった。しかし、俺に特殊な能力がなくても神様がついていてくれるなら問題は無いと思った。
「そんなに落ち込まなくてもいいですよ。僕が弱くても神様……メリスさんが強いんですから」
すっかり落ち込んでいるメリスに俺はそう言った。正直落ち込みたいのはこっちだけど生き返らせくれてそれは失礼だと思ったからだ。
「うぅ〜(泣)ありがとうございます。」
本当に神様かよと少し思ったがそんな神様のステータスも少し気になったので開こうとすると、
「アァァァ!それは見ちゃダメです!」
メリスが全力で阻止しようとしたが時すでに遅く、俺はボタンを押してしまった。
「なんだよこれ……」
異世界転生をして早くも絶望を味わった。メリスのステータスは『器用さ』は確かに99と問題ないが多分この『器用さ』は戦闘や魔力ではなく料理や裁縫などの生活面での能力の高さなのでそこまで嬉しくなかった。しかし、それ以外は俺と一緒で殆ど1で問題は『幸運』も俺と一緒で−99であった。しかし、特殊能力欄に何か入っていた。これが残された希望にも思えたが直ぐに打ち砕かれた。内容は『不幸体質』説明を読むと自分とその周りを不幸にするものだった。
「うそ……だろ……異世界にまできてまた不幸な生活が始まるのか、俺は!」
流石に俺は口に出してメリスに言った。
「すみません!実は私、神の中でもかなり能力の低い方でそれに運も悪く他の神から笑われてばかりで……こんな風ならいっそ一つの世界で強大な神の力を使って暮らそうと思い瀬奈さんと一緒に来たのですが、まさかこんな事になるとは。」
そこで、俺はある言葉が引っかかった。
「ちょっとまて、お前いま『運が悪かった』って言ったか?」
神様に対してお前呼ばわりしているがこの時点で俺はメリスを尊敬する相手とは思えなかった。
「はい、言いましたけど?」
メリス少し照れくさそうに言い返した。なぜそこで照れる?そんな事より俺は以前にメリスが自分に言ったことを思い出した。
『神というのはそれぞれの人間に1人ずついますし、その神様の恩恵をへて人間は生活します。』
そして、メリスの特殊能力は周りも不幸にする能力……まさか!
「もしかして、俺がここまで運がないのって…」
メリスは一旦落ち着いた表情をして話し始めて、
「いやいや、人間自体にもランダムにそうゆう能力はありますよ。その……神の恩恵が90%くらい入りますけどね(ニコニコ)」
メリスは天使の様な笑顔でそう言った。そして俺はアニメやマンガの主人公が異世界転生しても主人公補正がかかっているのだと確信してしばらく木々の隙間から漏れて見える空を眺めていた……
続く…
【〈1話〉俺の異世界生活は間違ってる!】