孤独快楽
(いよいよ明日か...)そう俺は毒づいた。
噂に聞いただけの話だが、執行される前夜の夕食はいつもより、いくぶんかは上等になると聞いたことがあった。なるほど、言われてみれば今日の夕食はいつも不味い高粱(といっても今日の大多数の人間は想像もすることもできないだろうが、あえて言うならば見かけ騙しってことだ)でも入ってるんじゃないのかと疑う飯とグタグタ煮てある形すらなくなった野菜とはうって変わって、何かの揚げ物だった。どちらかといえば俺は肉派ではなく魚派だが、明日の今頃にはおそらくといってもいいほどこの世には居ないだろうから、舌に残るよう一口、一口ありがたくいただいた。
現に今でも口の中に余韻が残っている。このまま、明日の旅立ちに向けて、たっぷりと睡眠を取ろうかと思っていたが、頭の中にある考えが浮かんできた。先ほどにもいった通り、おそらく俺は明日死ぬのだ、そう考えている内に寝るよりか、頭の整理でもしておこうという考えのほうが買った。ちょうど、部屋には机が一つあり、その上には一本の鉛筆と数枚の紙が置かれていた。
大方、遺書を書くためとか、家族や恋しい人に対して最後の言葉を綴るのだろうか。だが、生憎俺には家族もいないし、恋しい人なんかは出会ったことすらない。
そんなわけだから、俺は何を書こうかと悩んだ。一分程たった頃だろうか。突然、俺は紙に書き出した。