1条2丁目-7
「あの……帰り方はお分かりに……なりますか……?」
「全然」
「そこに……桜十字路の電停が……そこから市電に乗れば……帰れるはず……です」
「そっちに立ってるのは?」
「あれは……バス停……です……手前が……八幡坂下……方面……奥が……川合津……」
「……」
「……」
「ごめんなさい……私……喋るの……苦手……」
「……」
「……」
5分経過。沈黙のループに入ってしまった。
ほんっとうに喋るの苦手だな、幸ヶ谷瑞穂!
どうやってこの沈黙を破ろうかと悩んでいたら、
「お待たせいたしました1丁目線南行101条線東行直通外郭線外回りです」
車庫から出てきた市電に、先を越された。
おおのんはこの電車で新本郷へ帰っていった。
「幸ヶ谷さんって、意外とコミュ力高いですよね」
後ろにあった人影に気付かずに……ってキリカ!見てたのか!?
「最初から見てましたよ」
最初からってどこから?
「バスを降りたところからです。というか、一緒に乗っていたじゃないですか」
そうだった……完全に我を忘れてた。おおのんに会えるのではしゃいじゃって。
「そうなのですか?」
ああ。新本郷の奴って会ったことなかったから、どんな奴なのかなって。
「友達が増えるからではなくて?」
……。
キリカ、痛いところを付いてくるな。




