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神様はそこにいる  作者: 村崎羯諦
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『時空跳躍』の魔術式

 よし。確認もこれくらいでいいだろう。もともとかなりきわどい作戦なのだ。すべてを最初からぎちぎちに決めておくより、その場その場で臨機応変に対応した方がいい。それよりも今は、自分のモチベーションをあげることに専念した方がいいはず。


 成功をイメージするんだ。兄貴を助けるイメージを。


 私は今まで何度も繰り返してきた空想に浸る。兄貴を助けることに成功した後のことについての空想だ。

 兄貴を助け、それからすぐに私の正体を打ち明けよう。兄貴はどんな顔をするだろうか? 驚いた後、喜ぶのだろうか、それとも私の無茶を叱ってくれるのだろうか? 秘密を打ち解けた後はどうしよう? すぐに帰る必要はないんだから、少しだけ兄貴と一緒に過ごすのもいいかもしれない。


 そうだ。小学校の帰り道にあった、少しお高い洋菓子店。兄貴と一緒にあそこに行こう。顔を突き合わせてケーキをつつき、いろんなことについて話すんだ。まあ、今の私は兄貴と同じくらいの年齢なのだから周りは恋人と見違えるのかもしれない。

 支払いはもちろん兄貴にしてもらう。小学生のころにあの洋菓子店に行きたいとねだった時、兄貴は五、六年後に連れていくって言ってくれた。あの時の約束を守ってもらわないと。


 そして、それから……。


 私は首から下げていたネックポーチを手に取り、中に入っているものを取り出す。

 表に大きく霧島神社と書かれたお守り。いつだったか、私が入院していたとき、お見舞いに来てくれた兄貴がくれたもの。私はぎゅっとお守りを握り締める。


 ありがとうって伝えるんだ。


 ずっと兄貴に頼りっぱなしで、私は何の恩返しもできなかった。あの病院で、私はきっといつか兄貴たちに恩返しすると伝えたはずなのに。その事実を思い起こすたびに、私は言いようのない後悔の念に襲われた。兄貴の命を救うことで、それをチャラにしようと考えているわけではない。せめて、あの時、あの病室で言いそびれたありがとうという言葉を伝えたいだけなのだ。


 この気持ちこそが、今まで私を突き動かしてきた原動力なのかもしれない。ただ、ありがとうと伝えるために私は過去へ向かう。すごくシンプルで、傍から見れば狂気じみて見えるのだろう。しかし、それでも私は構わない。

 私はお守りをネックポーチに戻し、目の前の魔術式に目を向ける。


 覚悟はできた。


 私はしゃがみ込み、魔術式の末尾に、ピリオドを意味する記号を描く。これにより魔術式は完成した。もう後戻りはできない。

 私はスーツケースのを握り締め、深く息を吐く。

 そしてそのまま目をつぶり、私は歩を進め、魔術式の上に立った。

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