表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様はそこにいる  作者: 村崎羯諦
第四章
84/95

牧場の願い事

 霧島家の人間であることの証明に霧島家の血さえあればいいという発想は、もともと牧場の言葉から着想を得たものだ。当の本人がウリエルよりも早くそのことに気が付いていても不思議ではない。

 それに由香とは違い、二十年前の霧江さんに保護魔術が付けられているとは考えられない。実際、二十年前の霧江さんは赤川に誘拐された。もしそのような魔術があったとすれば、そんなこと起きるはずがない。だからこそ牧場は、図書館において彼女から採血することを決断できた。

 それと今の今まで忘れていたが、三か月前に牧場が図書館にいると突き止めるとこができたのは、牧場が図書館のパソコン設置ブースに放置されていた『嘘発見』の魔術式を偶然踏んだからだった。その時はなぜ牧場がその部屋にやってきたのかは不明だったが、あれはおそらく、牧場が採決のため二十年前の霧江さんに忍び寄った時に踏んでしまったのだろう。

 また牧場がすでに霧島家の血を手にしていたと考えると、ここ最近の行動も納得がいく。血さえあれば、いつだって神力の封印を解くことができる。だからこそ、銀行強盗といった無茶も可能だった。その他もろもろの調べ事や計画の立案はその時すでに終わっていたのだろう。つまり、銀行強盗の時点で牧場の計画は最終段階に入っていたと考えられるのだ。

牧場は俺を見下ろしながら、満面の笑みを浮かべる。


「さーてと、種明かしも終わったことだし、さっさと封印を解いちゃいますか。水前寺くん、何か言い残すことはある? 例えば、祝福の言葉とか?」


 俺は牧場から目をそらし、うつぶせの状態から仰向けの状態に寝転がった。視界のゆがみはもう無くなっていたが、代わりに頭痛と耳鳴りが襲ってきていた。さらに、何かが蝕んでいるかのような、鈍く重い痛みが身体の内部に広がっている。

 それでも俺は声を振り絞り、牧場に語り掛けた。


「……ずっと前、ちょうど俺とお前が出会ったころ……。嵐田と赤川が神力によってお前のもとから突然いなくなった時のことを覚えてるか?」

「ああ、もちろん覚えているよ。何せすべての始まりと言ってもいいくらいの出来事だったからね。……だけど、なんで今更そんなことを話すんだい?」


 俺の最後の言葉に牧場は眉をひそめて答える。


「あの時の願い事っていうのはな……。漫画みたいに、突然女の子が空から降ってきて……そして、その子と一緒に悪の組織から逃げ出すような展開が訪れますように……って願い事だったんだ。笑っちゃうだろ……」


 俺はそこで大きく咳き込む。喉の奥が焼けるようにひりひりとした。

 牧場は俺の言葉を聞き、半ばあきれ顔でため息をつく。


「はあ……。まさか水前寺くんがそれほどまでにメルヘンチックだったとはね。意外っちゃあ、意外かな。最後の最後に残っていた謎が一つ解けたよ。まあでも、そんな願い事を持っていたとしても、それを神様なんかに委ねてちゃだめだよ。やっぱり、僕みたいに力でつかみ取らなきゃね。おお、我ながら主人公風なセリフだねぇ」


 牧場はそのまま俺に背を向け、本殿へと歩き出した。そして、ウリエルと俺がやったように賽銭箱を一人で移動させると、遠くからでも理解できるほどの満面の笑みを浮かべた。

 それと同時に俺は再び咳き込んだ。手で口のあたりを拭ってみると、手にはべっとりと血がついていた。また吐血したらしい。俺は赤く黒い血をぼんやりと見つめながら、もうすべてが終わったことを悟った。きりきりとした頭痛が次第に強さを増していくのを感じる。

 間髪入れず、賽銭箱に硬貨が投げ込まれる音が聞こえてきた。そして、牧場はわざとらしく手をたたき、そのまま俺にも聞こえる音量で神力への願い事を口にした。


「えー、神力様お願いです。とりあえず、霧島由香、霧島霧江……あ、そうそう、あとついでにウリエルとかいうお嬢ちゃんの三人を事故か何かで殺しちゃってください」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ