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神様はそこにいる  作者: 村崎羯諦
第四章
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対峙

 階段を上り切り境内に入ると、本殿の前に黒いスーツを着た牧場が立っていた。牧場は俺に気付くと、笑いながらこちらへ歩み寄ってくる。俺もまた同調するように、牧場がいる方向へ向かって歩を進める。そして、十分にお互いの会話が聞こえる距離になったと同時に、俺たちは示し合わせたかのようにして立ち止まった。

 牧場は俺の身体全体を嘗め回すように観察し、それから気味の悪い笑みを浮かべた。


「待ってたよぉ、水前寺くん」


 俺は牧場を力いっぱい睨み付けた。しかし、牧場はそんなことお構いなしにまくしたててくる。


「いやぁ、ウリエルちゃんにはここに来ないでって言っておいたんだけどねぇ。ま、しょうがないか。彼女は随分と水前寺くんにお世話になってたみたいだし。彼女なりの感謝のしるしってところかな。正直、水前寺くんも来ないなら来ないでよかったんだけどね。僕の安っぽい挑発に乗るなんて、水前寺くんも相変わらずといったところかな」

「……そんなことはどうでもいい。お前はどうやって、神力の封印を解くつもりなんだ……? 神力の封印は霧島家の人間でしか解くことができないことは知ってるはずだろ」


 俺からの質問がよほどうれしかったのか、牧場は顔をほころばせた。


「落ち着きなよ、水前寺くん。お楽しみは最後まで取っておかなくちゃ。なにせ今日一番の見どころと言っていいからね。焦らずいこうよ。水前寺くんが呼んだ応援はまだ来ないはずだからね」


 ウリエルと別れた後、霧島神社の階段を上っている間に俺は平島にメッセージを残した。内容はごく簡単に、牧場風太郎が霧島神社にいるとだけ。平島たちは現在、牧場ではなく囮である赤川が乗っている献血車をマークしている。つまり、囮である赤川を捕まえるまで平島たちが俺のメッセージに気付ことはない。たとえ気が付いたところで、簡単に信じてもらえるはずもない。

 それでも、平島たちが赤川を捕まえるのは時間の問題だ。だからこそ、まだここに助けが来る可能性は十分に残されていると言っていい。俺は初め牧場との会話を長引かせることで平島たちが来るまでの時間稼ぎをしようと考えていた。しかし、どうやら牧場は俺の思惑をすでに見抜いていたらしい。


「ま、とりあえずさ。そこのベンチにでも腰かけて、歴史的瞬間を間近で見てなよ。水前寺くんもそのつもりで来たんだろ? まさか、正義のヒーローみたいに僕を止めに来たってわけじゃないよね?」


 俺は弱弱しい声で「そのまさかだ」とだけ答えた。ウリエルと別れた後少しだけ症状が軽くなった気がするが、まだ頭痛や耳鳴りは続いている。

 牧場は俺の言葉に対し満足げな表情を浮かべると、懐に手を突っ込んだ。そして、再びそこから出てきた手には黒く光る拳銃が握られていた。牧場はそのままゆっくりと銃口を俺に向ける。


「それでこそ僕の宿敵ってところかな。うーん、まさに物語のクライマックスで感じがするね。僕という主人公が、幾多の困難を乗り越え、最後に立ちはだかった宿敵を倒してハッピーエンド。うん、さっき来ても来なくてもいいって言ったけど、撤回するよ。やっぱり演出的に水前寺くんはどうしても必要だったんだね」


 丸腰ではないことくらいは予想できていた。しかし、実際に拳銃を突き付けられて見るとやはりたじろいでしまう。だが、怖気づいてはだめだ。俺は深い呼吸をした後、牧場をさらに強く睨み付けた。


「丸腰じゃないのは、こっちだって一緒だぞ」


 そう言うと、俺も懐からあるものを取り出し、それを牧場に見えるように前に突き出した。俺が取り出したもの、それは昨日霧江さんからもらったお守りだった。お守りを突き付けられた牧場はそれをじっと見つめた後、大きなため息をついた。


「僕は今からかわれているのかなぁ。そんなお守りでいったい何ができるっていうんだい? 今さら神頼みっていうつもりじゃないだろうね」


予想通りの牧場の反応に対し、俺は言葉を続けた。


「これは神主の霧江さんからもらったものだ。お前から守るために、霧島由香にも同じものが渡されてる。単なるお守りじゃない」

「それくらいは想像つくよ。問題はそのお守りが霧島神社とは無関係な水前寺くんを守ってくれるのかってことでしょ? おわかり?」


 牧場の言葉に俺は黙り込む。牧場の言うことがすべて本当だったからだ。

 このお守りには神力が込められている。具体的には教えてもらっていないが、十分すぎるほどの効果をもたらすことは確実だろう。しかし、問題は発動条件だ。昨日、霧江さんは言っていた。このお守りは霧島神社への侵害に対してしか発動しない、俺を直接的に守ってくれることはない、ということを。牧場は霧江さんに課せられた制限を知っている。それに、牧場は神力の研究者でもある。俺の言葉が嘘である可能性が高いということくらい簡単にわかってしまう。


「黙っているところを見ると、どうやら図星みたいだねぇ。嘘をつくことは好きだけど、嘘をつかれることは嫌いなんだよ? 潔く降参したほうがいいんじゃないのかな」


 牧場はあざけりの表情を浮かべながら一歩ずつ近づいてきた。もちろん銃口を俺に向けたまま。

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