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神様はそこにいる  作者: 村崎羯諦
第四章
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神力の副作用

「特に異常は見られませんね、ストレスが原因なのかもしれません。とにかく、しばらく様子を見て、今後も症状が続くようであればまた来院してください」


 昨日の学校帰り、家族には内緒で受診した胃腸科において医者はこう告げた。俺はその時の光景を思い出しながら、いつもの帰り道を歩いている。

 つい先日の吐血。その原因について調べるため、俺は底知れぬ不安を抱えながら病院を受診した。そしてそこで下された医者の判断は、ある意味俺が最も聞きたくなかった言葉でもあった。

 俺は深呼吸をしながら自分の考えを整理する。

 医者はストレスのではないかと言ったが、もちろん吐血するほどのストレスについて覚えはない。だからこそ他に原因があるはず。そして、その原因について俺は心当たりがあった。







―――由香ちゃんが、血を吐いて倒れたそうだ」







 俺は何か月も前に起きたあの日の出来事について思い返す。

 霧島由香はある日突然血を吐き、倒れた。そしてそれは俺の願い事を実行した神力によるもの。確かウリエルは過剰な魔力が流れ込まれたことによる症状だと言っていた。そして、今回の俺の吐血もそれと同じような現象なのではないかと俺は推測する。

 もちろん俺が誰かから人格を強制的に変える魔術をかけられ続けているということではない。考えられる可能性は一つ。それは神力の副作用だ。

 どうして神力に副作用があると考えるのか。その強大な力に対する代償だとあてずっぽうに言っているわけではない。ただ副作用の存在をにおわせるような事実について、今さらになってから思い至っただけなのだ。

 それは霧江さんについてだ。

 二十年前の霧江さんが現代にやってきて、行動を共にしていた時、俺は霧江さんに対してある違和感を抱いていた。






―――すごい、エネルギッシュだな。本当に今の霧江さんと同一人物とは思えん」「まったくだ。今のおしとやかな霧江さんと同じ人物とは考えられん」「あ、いやそういうわけじゃ……」







 家族ぐるみの付き合いに加え、俺は母親から直接霧江さんについての話をたくさん聞いていた。だからこそ、俺は霧江さんが昔っからずっとおてんばな性格であることを知っていた。これは家族の中でも俺と母親くらいしか知らないだろう。

 俺が違和感を抱いたのはそこではない。

 俺がウリエルに言いたかったことは、病弱で家に引きこもりがちな現代の霧江さんに比べ、二十年前の霧江さんは驚くほど元気いっぱいにあちこちを動き回っているということだった。

 いくら二十年前とは言え、それほどまで身体に急速な変化が起こるのだろうか。それに俺が母親から聞いた話でも、出会った当時から霧江さんはそれほどまでにエネルギッシュであるとは言っていなかった。だとすれば、現代から帰ってきてから俺の母親と出会うまでの短い間に、霧江さんは急速に病弱な身体になったということになる。

 それにおかしなことがもう一つある。

 今霧島家は、霧江さん夫妻と由香の三人で暮らしだ。由香にとっての祖父母はすでに亡くなっている。そして、二十年前の霧江さんは亡くなった祖父から聞いた赤くてきれいなものを見たいと言っていた。つまり、霧江さんにとっての祖父も霧江さんが高校生にあがるころにはすでに亡くなっているということになる。今まで気にもしてこなかったが、少しばかり短命だと言えないだろうか? 

 この二つの事実によって浮かび上がってくる仮説。

 それは神力が行使者の身体を蝕んでいるということだ。そして、神力の副作用が存在するとなれば、長引いた風邪や吐血に見られるような俺の身体の異変もまた神力の副作用によるものだと考えるに難くない。俺はすでに合計四回、神力にお願いを聞いてもらっている。この前の吐血は、四回目のお願いをしたその日に起きたものだった。認めたくはないが、ある意味筋が通っている。

 そしてこの神力の副作用が行きつく先は……。

 しかし、その瞬間俺の視界がぐにゃりとゆがんだ。それと同時に頭の中でガンガンと鈍い音が響き渡り始め、胃からは吐き気がこみあげてくる。

 まただ。俺はそこで足を止め、じっとその症状が治まるのを待つ。しばらくそうしているとそれらの症状は次第に引いていった。この症状は今が初めてではない。吐血をしたあの日から、このような症状が突然襲ってくるようになっていた。もちろん頻繁にというわけではないが。

 俺はこれが何を意味するのかを理解していた。神力の副作用が行きつく先、それが死であるということを。これ以上何もせずじっとしていれば症状の進行が進まない、あるいは回復するのだろうか。もちろん俺にはわからない。しかし、少なくともあと一回でも神力へのお願いをすれば、俺は確実に死んでしまうだろうということだけは容易に想像できる。今はただじっと耐え続けることしか俺にはできなかった。

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