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神様はそこにいる  作者: 村崎羯諦
第三章
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静かなる闘い

 ウリエルから魔術式の場所を聞き、俺と平島は自分用の地図に書き込む。その後三人で各自が回る範囲を決め、霧島神社の境内から外へ出た。


「水前寺。さっきお前が頼んでいたやつだ。要望通りにしておいたぞ。手順は私が言った通りにすれば問題ないはずだ」


 平島が自分の自転車のカギを外しているうちに、ウリエルは俺に丸められた紙を渡した。俺はその紙を受け取り、自分の自転車のかごに入れた。


「サンキュー。仕事が早いな」

「まあ、私がすることはほんの少しだったからな。しかし、本当にこれで大丈夫なのか」

「大丈夫だ。逃亡犯に近づくことさえできれば、それで計画は成功する。やつはまだ規則通り動いてるんだよな?」


 俺の問いかけにウリエルはうなづいた。逃亡犯稲岡大輔は今もなお魔術式を町に書いて回っている。その順番と場所は規則的であり、やつの行動は簡単に読み取ることができる。

 俺は先にやつとぶつからないように魔術式を消していき、それが終わったのちにやつが通るであろう道を逆から進む。そうすればやつの行動が変則的にならない限り、俺と鉢合わせすることになるはずだ。


「気をつけろよ」


 俺はその言葉にうなづいた。






 魔術式を消す作業は拍子抜けするほど容易に進んだ。

 俺が地図で示された場所へ行くと、そこには大抵ごみ袋やら段ボールやらが不自然に積まれており、それをどかせば魔術式が簡単に見つかった。魔術式をしかけた犯人は、計画がばれるとはこれっぽっちも考えていなかったことがうかがえる。ウリエルは三時間もかからないと言っていたが、結果的に二時間ちょっとで自分の分を片付け終わった。平島かウリエルを手伝おうかとも思ったが、恐らくあちらも俺と同じようにとんとん拍子で進んでいるのだろう。わざわざ手伝う必要はないし、もし必要ならば電話がかかってくるはず。それに俺にはまだ別にやるべきことが残っている。

 俺は地図を開き、ウリエルに教えてもらった稲岡大輔の行動パターンを思い出す。魔術式は地図上に横の直線が平衡に三つ描かれる形で分布していた。そして、上二つの直線が大体同じ長さである一方、一番下の直線の長さは上二つより短い。左端はそろっているのだが、右端が上二つの直線より短いところで途切れているのだ。

 ウリエルが言うには、稲岡はこの一番下の直線が上二つと同じ長さになるように今現在魔術式を書いて回っているというのだ。つまり、中途半端に途切れた右端から、順に右方向へ移動し魔術式を書いているということ。それに加え、一番下の直線は、町を東西に貫く一本の街道とほぼ重なり合っていた。魔術式は道から少し外れた路地などに存在している。つまり、やつはこの街道上を進んでいると考えていいはずだ。

 俺が魔術式を消している間に、やつも魔術式を一つか二つ増やしていると考えた方がいいだろう。それを見越したうえで、俺はやつと鉢合わせをする形で逆方向から道を進んでいけばよい。ウリエルは、やつが魔術式を増やすスピードから徒歩で移動していると言っていた。

 俺は疲労が蓄積した足にむち打ち、先回りするため、街道から一つ横の通りへ出てから自転車を飛ばした。

 もう完全に稲岡を追い越したであろう距離を進んだあたりで、俺は自転車をこぐのをやめた。そして近くにあった公園に自転車を停める。自転車に乗ったままでは見過ごしてしまう。こちらも徒歩で移動しなければならない。

 俺はウリエルから渡された紙をかごから取り出し、稲岡の進行ルートである街道へ出た。この道を進んでいけばやつと鉢合わせになるはず。しかし、万が一のことを考えて、ウリエルと連絡を取ることにした。俺は由香の携帯に電話をかける。ウリエルは携帯を持っていないため、少しの間だけ由香の携帯を借りているのだ。

 コール音の後、ウリエルが電話に出た。


「水前寺か。そっちはもう魔術式を消し終わったか?」

「ああ、もう消し終わって、今から逃亡犯を見つけようとしているところだ。それで確認したいんだけどな、やつは今移動しているのか? それとも魔術式を書いているのか?」


 携帯越しに地図を広げる音が聞こえてくる。


「ついさっき見た時から一つだけ魔術式が増えている。つまり、やつはちょうど今しがた魔術式を書き終わったのだろう。おそらく、今はその街道をちょうど移動しているということになる」


 俺は新しく魔術式ができた地点を尋ねた。ここから少し離れた位置だ。少し急ぎ足で進めば、やつが魔術式を書くため路地に入ってしまう前に出会えるはずだ。

 俺はウリエルに礼を言い、電話を切る。これが最後の山場だ。気を引き締めていこう。俺はそう自分に言い聞かせ、街道を歩き始めた。

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