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神様はそこにいる  作者: 村崎羯諦
第三章
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あずさの異変

 俺は歩きながら平島の携帯に電話をかけた。しかし、平島は電話に出ない。仕方がないので、LINEで魔術式のことを簡単に伝えることにした。もちろんすぐに既読になることはなかったが、とりあえずメッセージに気が付けば平島の方から折り返しの電話がかかってくるはずだ。

 すると、平島との連絡が取れないことで、俺は急にやることがなくなった。ウリエルの手伝いをすることもできない以上、とりあえず家に帰り、夜になるのを待つしかない。




 俺が自宅に帰り、玄関で靴を脱いでいると二階からあずさが降りてきた。倉庫に寄った後、そのまま家に帰ってきたらしい。

 ついさっきまで妹を尾行していた事実が俺の胸をチクリと刺したが、俺はなるべく平静を装うことにした。しかし、あずさは返事をすることもせず、ただ俺の方をじっと見つめてくる。俺は妹の様子に心の中で動揺してしまう。


「なんだ、あずさ。どうしたんだ、そんな顔して」

「兄貴、もしかしてあずさと葵ちゃんの後をつけてた、なんてことないよな」


 直球の質問に俺はびくっと肩を震わせる。


「な、なんでそんなこと思うんだ?」

「葵ちゃんが帰り道に兄貴っぽい人を見たっていうんだ。あずさたちが今日通った道は兄貴の通学路とかぶらないし、しかも今日は時間割的に下校の時間帯が違う。だから、兄貴がいるわけがないって思ったんだよ。でも葵ちゃんは絶対に兄貴だって言い張るんだ」


 俺は黙ってあずさの言葉を聞くことしかできなかった。まさか、葵ちゃんに見られていたとは。細心の注意を払っていたつもりだったのに、やっぱり素人の技術では完璧な尾行など無理だったのかもしれない。


「それで思い出したんだ。昨日の晩、兄貴はあずさたちしか知らない秘密基地の名前を知ってて、しかもその場所について探りを入れようとしてたってこと」


 あずさが眼光が鋭くなったような気がする。おそらく、内心では相当怒っているのかもしれない。確かに、実の兄に自分と友達が勝手に尾行されたら誰だって怒るはずだ。

 俺はここまで疑いを向けられた状態で、白を切ることは得策ではないと悟った。俺はあずさに頭を下げ、可能な限り誠意を込めて謝罪した。


「すまん、あずさ! どうしても花崎倉庫って場所について知る必要があったんだ。本当に悪かった、許してくれ」


 しかし、あずさは俺が尾行の事実を認めたことで、ついに心のタガが外れてしまったのか甲高い声で俺に罵声を浴びせ始めた。


「このバカ兄貴! あずさにだってプライバシーってもんがあるんだ! いくら兄貴でもやっていいことと悪いことがあるんだぞ!」


 俺はあずさの言うことが完全に正しいと理解しつつも、少しだけむきになり反論してしまう。


「あのなぁ。こっちだってめちゃくちゃ大事な要件だったんだぞ。最初からお前が花崎倉庫の場所を教えてくれてれば、俺だって尾行なんて真似はしなかったんだ」

「それとこれとは別だろ!」


 あずさは興奮しているのか顔を紅潮させて言葉をまくしたてる。


「もう兄貴なんて知らない! 絶縁だ、バカ!」


 あずさはそう言い放つと、駆け足で廊下を走り出し、そのまま階段を上って二階にあがろうとした。しかし、途中で大きく咳き込み、階段の真ん中でうづくまった。

 俺は慌てて靴を靴箱に直し、あずさに歩み寄る。背中にそっと手を置き、あずさに話かけた。


「ほら、最近風邪気味なんだから。あんまり急に動くと体に悪いぞ」


 俺の言葉にあずさは答えず、うつむいたまま顔をあげようとしない。

 よほど俺のことを怒っているのだろう、と俺は考えた。しかし、次第にあずさの様子がいつもと違うことに気が付く。息が絶え絶えであり、片手で自分の胸辺りを押さえている。あずさの顔を横からのぞき込むと、明らかに苦しそうな表情を浮かんでいるのがわかった。


「あずさ? おい、大丈夫か!」


 俺の声を聞きつけたのか、親父が慌てた様子でリビングから現れた。俺は取り乱しながら親父に向かって叫ぶ。


「親父! あずさの様子がおかしい! 救急車を呼んでくれ!!」

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