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神様はそこにいる  作者: 村崎羯諦
第二章
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魔術式の探知

 平島は慌てて懐から、束にまとめられた何十本の竹串を取り出した。嵐田が興奮した様子で平島に確認を取る。


「確かだな、ほのか!?」

「はい、今さっき反応が……」

「町中に張った罠のうち、まだやられてないやつがあったんだな! それで、どこに書いた魔術式だ!?」


 平島が竹串の束をほどき、竹串を手に取って調べ始めた。どういうことだ、と俺はウリエルに尋ねる。


「魔術式が印象操作を探知したからといって、どこの魔術式が反応したかはわからない。だから、それぞれの魔術式を竹串と対応させておいたんだろう。例えば、Aという場所の魔術式が反応した時、Aとマーキングされた竹串に何かしるしが現れるようにな」


 仕組みがどうなっているのかはこの際どうでもよかった。しかし、どこの魔術式が探知したのかがわかれば、牧場がいる場所、そして同時に赤川がいる場所を絞ることができる。俺は平島の作業をかたずを飲んで見守った。しかし。


「ど、どれも反応してません……」


 平島が竹串を握り締めながらつぶやいた。


「どれも反応してないだと? そんなわけが……」

「本当ですよ! 魔術式自体を間違えたっていうわけでもないですし。罠として書いた魔術式が探知したなら、どれかが反応するはずなんです」

「待てよ。昨日座布団に仕込んだ魔術式がまだ残ったままなんじゃないだろうな」

「あの魔術式は私がちゃんと処分しましたよ!」


 嵐田に促され、平島は念のためにもう一度竹串を確認してみたがやはり結果は変わらない。罠として張ったどの魔術式も牧場の『印象操作』を探知していない。しかし、平島自身は魔術式からの信号を確かに受け取った。これはいったいどういうことなんだ。

 俺たちが混乱している中、ウリエルが静かに口を開いた。


「水前寺。そういえば会員証はどうした?」

「会員証?」

「平島ほのかファンクラブ会員証だ。裏の白面にほのかが『嘘発見』の魔術式を書いていたはずだ」


 ファンクラブ会員証。確かに平島がその裏面に『嘘発見』の魔術式を書いていた。

 俺はポケットや財布の中身を確認してみるが、その会員証はどこにもない。俺は最後にそれを見た時を懸命に思い出す。平島が魔術式を書いて、俺が受け取り、その後ウリエルが手に取ってみて……。


「椅子の上だ。霧江さんがその後すぐに俺たちに呼びかけたせいですっかり忘れていた。ウリエルが俺の椅子の上に会員証を移転させたままほったらかしにしてある!」

「と、ということは! 図書館ですか!?」


 平島が声を裏返しながら言った。

 もし会員証がそのままならばまだ図書館にあるはず。そして、平島に信号を送った魔術式がその会員証の裏に書かれたものならば、牧場があの図書館に潜んでいて、偶然にその魔術式の上に乗ってしまったということになる。会員証に気付かずに椅子に座ったのか。いや、あるいは俺が椅子を動かした時に会員証が床に落ちてしまっていて、それを館内を移動中に踏んづけてしまったのかもしれない。

 しかし、なぜ牧場は図書館なんかに潜伏しているんだ?


「図書館か。クソ、まったく考え付かなかった。確かに、一時的であれ隠れるにはうってつけの場所かもしれないな」

「よりによってなんで図書館なんだよ。公共施設で、人の出入りが激しいのに……」

「そこを裏目にとったんだろうな、やつは。『印象操作』の魔術がある以上、いくら大勢の人間から見られたとしてもばれることはない。それに、だ。やつは組織を抜け出すときに大量の本や資料を盗み出している。図書館ならそいつらをしまっておくのにも苦労しない」


 嵐田はくやしそうに顔をゆがめる。

 俺は現在の時間を確認した。すでに図書館の閉館時間を過ぎている。つまり、図書館の中には職員しかいないはずだ。

 俺はその時ある光景を思い出した。俺たちが帰るとき、電話をかける林田さんの隣に座り、俺たちをずっと見つめていたような気がした初老の男。林田さんはその人が一か月前に図書館に転任してきたばかりだと言っていなかったか。もしかして、あいつが『印象操作』の魔術を使った牧場風太郎だったのでは?

 俺がこのことを話すと、ウリエルは納得したようにうなづく。


「正直私はまったく気にしていなかったが……。確かにその本村という男性職員は怪しい。そして、もしそれが正しいのだとしたら赤川の突然とも思える行動に説明をつけることができるかもしれない」

「どういうことだ?」

「牧場は平島ほのかを含めた私たちを見ているんだぞ。牧場は今追われる立場だ。平島が組織から派遣されてきた追手だということくらい想像できるだろう。今回は私たちが図書館に行ったのは偶然だが、あちらとしては潜伏先がばれたのかもしれないと考えても不思議ではない。たとえ私たちが気づいていないとわかったとしても、やつのことだ、念には念を押して潜伏先を急いで変えようとするかもしれない」


 ウリエルの言葉に嵐田が言い添える。


「なるほどな。そして、牧場は赤川にその旨を伝えたっていうわけか。赤川はそれほど牧場に信用されているわけではなさそうだし、その連絡の時にもう見限るって告げられたのかもしれないな。ほのかが現に図書館に現れたことを引き合いに出して。何の目的があって牧場に協力しているのかは知らないが、赤川はそれだと困る。だから、その霧江とかいう子を使って牧場と交渉しようともくろんだのかもな。赤川はその子の価値に気が付いていたらしいし、ひょっとすると図書館からずっとお前らをつけていたのかもしれん」


 平島は嵐田たちに、俺たちと一緒に図書館に行くと連絡していた。赤川もその事実を知っているはずだ。


「とにかくだ。図書館に行ってみよう。ここでうじうじ考えてるのは時間の無駄だ」


 そのとおりだ。図書館に行けば、そこに牧場と赤川がいるかどうかがわかる。嵐田の言葉に促され、俺たちは先ほどの図書館へ駆けだした。

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