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神様はそこにいる  作者: 村崎羯諦
第二章
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霧江さんはどこにいる?

「赤川さんが裏切り者……」


 平島がぽつりとつぶやく。


「絶対というわけではもちろんない。しかし、その可能性が高いと思っていた方がいい。とりあえずは赤川のことは伏せておいて、この台無しにされた魔術式について二人に報告するだけでいいだろう。……二人が共犯だということもあり得なくはないがな」

「そ、そうですね。とにかく今すぐ連絡します」


 平島は携帯を取り出し電話をかけた。電話が通じたようで、平島は俺たちから少しだけ離れ会話を始めた。


「赤川が牧場と通じていたとはな。となると、赤川はどれだけ神力について牧場から聞かされていたんだろう。それに一応、組織から牧場追跡を任命されたんだろ。それなのになんで牧場に協力なんか」


 俺の質問を遮るように、ウリエルは周囲を見渡しながらつぶやいた。


「そういえば霧江さんはどこにいるんだ?」

「ああ、霧江さんなら平島が他の場所の魔術式を見に行っている最中に向かいのタイ焼き屋に行ったけど」

「タイ焼きを買いに行っただけ? 時間がかかりすぎてないか?」


 俺ははっとして、向かいにあるタイ焼き屋に目を向ける。特段有名店というわけでもないため、買うのに並ぶ必要などない。横断歩道も遠くない場所にあるのだから、これほど帰ってくるのが遅くなるはずがない。俺は試しに向かいの歩道を見渡してみるが、霧江さんの姿は見えない。

 しかし、霧江さんのことだ。タイ焼きを買うつもりが何か別のものに目移りして、そこらへんを物色しているだけじゃないのか。俺がそう告げると、ウリエルも「そうだな」と答えた。


「少し意識しすぎなのかもな」

「平島は嵐田たちがここに来るのを待つだろうし、霧江さんを探しに行ってみるか」


 俺がそう言うと同時に、平島が電話を終えたようで俺たちのもとに近づいてきた。しかし、平島は先ほどとは打って変わりどこか不安げな表情を浮かべていた。


「どうしたんだ、平島?」

「いえ、電話に出たあっくんに魔術式のことを伝えたんですけど……。ちょっと気になることが」

「なんだよ、気になることって」

「今、赤川さんがあっくんに何の連絡もしないでどこかに出かけているそうなんです。家の固定電話から携帯にかけても通じないし、しかも、車も勝手に持ち出していて……」


 平島はいつになく真剣な表情で答えた。

 別に赤川の行動が奇怪だとは思えないが、つい先ほど赤川が裏切り者なのではないかという話をしたばかりだ。いつもなら普通に思える行動でも妙に勘ぐってしまうのは仕方ない。


「でも、赤川さんらしくないというか……。それに何か嫌な予感がするんですよね」

「おいおい、赤川が裏切り者だって結論に至ったのはついさっきだぞ。赤川だってそのことを知るはずがないし。なんで、このタイミングで行動を起こさなくちゃいけないんだよ」

「まあ、そうですよね」


 平島はまだ納得いかないという様子だ。しかし、まずは霧江さんを探したほうがいいだろう。平島はやはりここで嵐田を待つと言うので、俺とウリエルだけで向かいの歩道へ渡った。

 一応タイ焼き屋の前まで行ってみたがやはり霧江さんは見つからない。大通りに面した店の中をいくつかのぞいてみたがやはり姿はない。もしかしたら路地を通って違う通りに出たのかもしれない。そこで俺たちがタイ焼き屋横の路地を通っていこうとしたとき、ウリエルが突然後ろから俺を呼び止めた。


「どうした? 霧江さんがいたのか?」

「これを見てくれ」


 ウリエルがすぐそばの地面を指さす。ちょうど大通りから少しだけ路地に入ったらへんだ。俺が近づきつつ見てみると、そこには小さめサイズのエアガンがポツンと置き捨てられていた。


「これってもしかして霧江さんの」

「間違いないな」


 ウリエルがエアガンを拾いながらつぶやいた。

 霧江さんがここを通った時に落としたものなのだろうか。しかし、確か霧江さんはコートのポケットに入れていたはずだし、落としたとすればすぐに気づくはず。霧江さんがいくらおてんばだと言っても、飽きたから捨てたってわけもないだろうし。


「水前寺。昨日アジトでの会話を覚えているか?」

「なんだよ急に」

「霧江さんが言いかけただろ。いざとなったら私が神力の封印を解くと……」


 俺はウリエルの言わんとしていることに気付き背筋が凍った。


「お前、まさか赤川が霧江さんを誘拐したとか言い出すんじゃないだろうな」


 確かにあの時部屋にいた霧江さんの言葉を赤川も聞いていたはずだ。赤川が牧場からどこまで神力のことについて知らされていたかはわからない。しかし、協力者である以上、赤川が神力にどの程度の価値があるのかを他の二人よりも知っているということは想像に難くない。

 実際、牧場は神力の封印の解き方を心から知りたがっている。そのことを知っている赤川が霧江さんを連れていこうとすることも考えるかもしれない。


「赤川は今車を使って移動している。少女一人を誘拐することなど、薬でも嗅がせて眠らせればたやすい。霧江さんは赤川が裏切り者だと知らないから警戒されることもないしな」

「ここの路地で霧江さんが誘拐されたっていうことか? そして車に詰め込めれる際に、そのエアガンが落っこちたと」

「そうだ」


 ウリエルは少し自信なさげに答えた。自分でも誘拐説が突拍子もない考えだと感じているのだろう。実際、なんでこうも赤川が慌てて誘拐を決行したのかも理解に苦しむ。しかし、霧江さんが見つからない以上、その可能性だって否定できない。


「……とにかくだ。もうしばらくあたりを探してみよう。案外そこらへんを歩き回って迷子になっているだけなのかもしれないしな」


 俺はそうであってほしいと思いながら言った。ウリエルも俺の提案に賛同し、俺たちは二手に分かれて周囲を調べまわった。しかし、付近を徹底的に調べてみてもやはり霧江さんの姿はなかった。一時間以上探したにもかかわらずだ。平島から、霧江さんが戻ってきたという連絡もない。俺とウリエルは一旦合流し、とりあえず平島のもとに戻ることにした。

 そのまますぐに先ほどの魔術式があった場所に帰ったが、そこには霧江さんの姿はなく、代わりに嵐田の姿があった。霧江さんが戻ってこなかったかと一応平島に聞いてみたが、やはり戻ってきていないらしい。

 嵐田と一緒にいた平島もどこか不安げな表情を浮かべていた。まだ赤川との連絡がつかないらしい。携帯に電話をかけてもつながらないし、行先にも心当たりが全くないという。

 悪い予感がどんどん俺の中で膨れ上がっていくのがわかった。

 そんな俺の異様な雰囲気を察したのか、平島が恐る恐る事情を尋ねてきた。俺は根拠のない仮説を話すべきか迷ったが、やはり万が一ということもある。結局、二人に霧江さんが赤川に誘拐されたかもしれないということを話した。


「おい、なんでその霧江という子を赤川が攫わなくちゃいけないんだ?」

「それは……」

「牧場が探している神力と深く関わっている人物だからだ」


 ウリエルがきっぱりと言い切った。嵐田は「なるほどねぇ」とつぶやきつつ、俺たちを疑り深い目で見つめてくる。


「俺たちにまだ隠し事をしてたってわけか。牧場が追っているとかいう神力について……」

「あっくん! そんなこと言ってる場合じゃないですよ! 私の友達が誘拐されたかもしれないんですよ!」

しかし、嵐田は落ち着いた口調で平島をたしなめた。

「落ち着け、ほのか。どちらにせよ、俺たちのやることは一つだ。赤川を一刻も早く探し出さなくちゃなんない。誘拐が仮に本当だとすれば、やつは牧場と接触するはずだからな」

「しかし、手がかりが一つもない」


 ウリエルの言葉に嵐田もうなづいた。


「ああ、それが一番深刻な問題だ。いったいどうすれば……」


 俺たちの間に重たい沈黙が流れる。しかし、このままじっとしているわけにもいかない。とにかく怪しい場所をしらみつぶしにでも探すしかないと提案しようとしたその時だった。突然、平島が大きな声を発した。


「どうしたんだ、平島?」

「今、一瞬だけ反応があったんです!」

「反応?」

「『嘘発見』の魔術式です! きっと、罠として書いた一つが『印象操作』の魔術を感知したんですよ!」

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