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神様はそこにいる  作者: 村崎羯諦
第二章
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推理

 平島と黒服二人組との対面を果たした翌朝。

 俺がいつも通りの時間に登校していると、偶然にも目の前に平島ほのかを発見した。俺が小走りで平島に追いつき挨拶をすると、平島も挨拶を返し、そのまま俺たちは二人並んで歩くことになった。


「昨日はありがとうございました。牧場さんについての情報を教えてくれて。あっくんも今日水前寺くんにあったらそう伝えるようにって言ってました」


 平島は思い出したように俺にお礼を言った。

 昨日話した内容は特段重要なものではなかったし、それが牧場を探す重要な手がかりになることはないだろう。わざわざお礼を言われるほどのことでもないが、意外にも律儀な性格をしているらしい。


「そういえば、なんでお前は嵐田さんのことをあっくんって呼ぶんだ」

「それはですね……」


 平島は嵐田との関係について語りだした。なんでも嵐田は平島の従兄にあたるらしく、平島が小さいときから組織に入るまでずっとお世話になっているらしい。一応、組織内では嵐田が平島の上司なのだが、いまだに長年使い続けてきた呼び方を変えられず、そのことでよく嵐田や赤川から注意されているのだと、平島は苦笑いを浮かべながら話した。


 そのまま二人で話しているうちに俺たちは高校に到着した。

 そのまま下駄箱に向かおうとすると、突然横から野太い声で俺たちは呼び止められた。俺が声のする方を振り向くと、そこには体格のいい男子高校生が腕を組んで俺たちを見つめていた。

「同じクラスの権田くんじゃないですか。おはようございます」

 権田は平島の明るい挨拶にやや照れ笑いを浮かべながら返事をし、俺たちの方へ近づいてくる。権田は去年の俺のクラスメイトで、ラグビー部に所属している。今は平島と同じクラスらしい。平島になにか用事があるのかと思ったが、俺の予想は外れ、権田はそのまま俺の目の前に仁王立ちになって立ちはだかった。権田はがっちりとした体格をしているだけでなく、背も俺なんかよりずっと高いため、俺は否応なく権田の顔を見上げる形になった。


「お、おっす、権田。珍しいな、こんな時間にここで会うなんて。部活の朝練があるんじゃないのか?」

「朝練などいつでもできる。そんなことよりもだ、水前寺。俺はお前に男と男の話がある」

「……なんだよ、男と男の話って」

「そこにいる、ほのかちゃんについてだ」

「わ、私ですか?」


 平島はなんの心当たりもないようで、首をかしげる。


「なんでも、水前寺。お前、昨日ほのかちゃんから体育館横の踊り場に呼び出されたらしいな。別のクラスのお前が。しかも、その時にはお前はまだほのかちゃんとは別に知り合いじゃないにもかかわらず」


 権田は険しい顔で俺の顔を見下ろしてくる。その有無を言わさぬ威圧感に圧倒され、俺は何も言えなくなった。

 俺は昨日の早野の言葉を思い出す。なんでも、ここにいる権田は転校初日から平島に惚れこみ、ファンクラブを立ち上げたとかなんとか。


「で、転校初日のほのかちゃんと何の話をしたんだ?」

「た、単なる世間話だよ」

「それだけじゃないぞ、水前寺。平島ほのかファンクラブ会員の瀬木によると、その後二人で下校、さらにそのうえ自宅にまであがりこんだとか」

「……」


 冷汗が体中から湧き出てくるのがわかる。なんだよ平島ほのかファンクラブって。誰だよ、瀬木って。なんで俺の知り合いでもないやつが俺の後をついてくんだ。

 権田は俺にその濃い顔をぐっと近づけて言った。


「さあ、お前とほのかちゃんがいったいどういう関係なのか教えてもらおうか」

「え、えーと」


 荒い鼻息が俺にかかってくる。その興奮具合から、下手なことを言えばただでは済まされないということが理解できた。

 しかし、平島との関係と言われても。平島が実はある危険な男を追っている組織の人間で、俺から情報を引き出そうとしていたに過ぎないだなんて言えるわけがない。

 俺は『印象操作』の魔術の効果を思い知る。確かに権田は少し乗せられやすい性格ではあったけれども、ここまで平島の魔術が効いているなんて。しかし、今さらああだこうだ言ったところで状況は変わらない。俺は頭をフル回転させて、なんとかごまかそうとした。


「い、いや実はな……。そ、そうだ。平島とは確かに面識はなかったけどな、平島のお兄さんと俺は知り合いだったんだ。その人の妹さんとは知らなくってな、ハハ。昨日も、平島のお兄さんに会いに行ってたんだよ!」


 俺は嵐田と赤川の顔を浮かべながら答えた。即興にしてはなかなかの嘘じゃないか!?

 同意を求めようと、俺は平島の方へ振り返る。


「そ、そうだよな、平島?」

「え? いや、私一人っ子でお兄さんなんていませんけど……」


 空気を読め! 平島に俺がそう言いかけたその時、権田が俺の胸元を強い力でつかんだ。


「そうか、水前寺。とにかく、少し離れたところで話す必要があるな」

「お、おう……」


 俺の返事を最後まで聞くこともせず、権田は胸元をつかんだまま俺を下駄箱とは別の方向へ引きづっていく。俺はラグビー部の力に抗えるはずもなく、情けない恰好のままついていくしかなかった。






 なんやかんやあったが無事に放課後を迎えることができた。俺は教室の外に権田が待ち構えていないことを確認したのち、急いで下駄箱に向かい、学校をあとにしようとする。

 幸い権田に絡まれることなく校門を出ることができたその時、横から声をかけられた。


「待て。動くな、水前寺愁斗」


 振り向いた先には、小さめのエアガンを俺に向けてポーズを決める霧江さんがいた。その後ろにはウリエルが立っている。


「……何してるんすか、霧江さん」

「もー。ノリが悪いなぁ、愁斗くんは」


 霧江さんはエアガンをおろし、そのままコートのポケットにしまった。どうやら二人は俺の下校をここらへんで待っていたらしい。そういえば、昨日も校門近くで待っていたとか言っていた。

 俺はそこで霧江さんの横にいるウリエルが心なしか疲れているように感じた。


「どうしたんだ、ウリエル。なんかげっそりしてないか」

「いや、昨日今日と霧江さんにいろんなところへ連れまわされてな……。正直、疲れている」


 ウリエルの言葉に霧江さんが反応する。


「ダメだぞ、ウリエルちゃん。そんなんでへこたれてちゃ。青春は一瞬の輝きっていうじゃない。もっと時間目いっぱい楽しまなきゃ」

「……まあ、こんな調子で霧江さんが私を振り回していたと考えてくれ」

「ウリエルちゃんもなんだかんだ言って楽しんでたんだから、いいじゃない。それに、今のうちから未来の雇用主に媚びを売っていたほうがいいかもよ」


 霧江さん笑いながら、ウリエルの腕をとった。ウリエルは肩をすくめながら、ため息をつく。

 いったい昨日今日は何をしていたのか、と俺は二人に聞いた。

 なんでも、せっかく未来に来たのだからと霧江さんがウリエルに詰め寄り、霧江さんの願い事そっちのけで色んな所へ遊びに行ったり、買い物をしたりしていたらしい。もちろん、今現在の霧江さんのお金を使って。ウリエルはやめた方がいいと訴えたのだが、霧江さんに屁理屈で丸め込まれたという。さっき霧江さんが持っていたエアガンも、さきほど商店街の玩具屋で衝動買いしたものだそうだ。ウリエルは昨日今日とそのようにはしゃぐ霧江さんの相手をしたことで、だいぶんお疲れの模様だ。


「すごい、エネルギッシュだな。本当に今の霧江さんと同一人物とは思えん」

「まったくだ。今のおしとやかな霧江さんと同じ人物とは考えられん」

「あ、いやそういうわけじゃ……」

「とにかくだ、もう明日には現代の霧江さんが帰ってくる。それまでに霧江さんの願い事を突き止めなくちゃならない」

「え? もしかして、ウリエルちゃん。私に早く帰って欲しいの? そんな……。私ショックかも……」


 霧江さんは大げさに驚き、そしてウリエルの腕をさらにつよく自分の方に寄せた。明らかにウリエルをからかっているのだが、意外にもウリエル本人は真に受けてしまったようだ。


「い、いや! 別に霧江さんに帰って欲しいとかじゃなくてだな。その、願い事叶えなければ現代に来た意味がなくなるんじゃないかって……」


 ウリエルが慌ててフォローする様子を霧江さんはくすくす笑いながら見つめている。俺も現代の霧江さんに同じようなことを何回もされているから、ウリエルの心中は痛いほど察することができる。

 助け船を出すつもりで俺は二人に話しをふることにした。


「まあ、願い事って言っても、霧江さんの証言だけじゃまったくなんのことかわからないけどな」

「いや、そのことだがな。実は少しだけあたりをつけているんだ」


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